二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

チャリン! (ポエムNO.3-38)

2020年04月13日 | 俳句・短歌・詩集
  (2014年10月15日撮影)


世の中狂っているとか首相が悪いとか
税金が高すぎるとか
不平不満をならべながら六百五十円の味噌ラーメンを食べおわった知りあいが
小銭をテーブルの端において店を出ていく。

洗いざらしのワイシャツみたいな気分で
ぼくはその後ろ姿を見送りながら
たいしてうまくないチャーハンとスープをすくっては
口にはこんでいる 黙々と。

ひとり暮しで働いてもいないのに朝から疲れている
一日中疲れているのはぼくが年をとったせいだけではない。
現代人は皆さんお疲れなのさ。
栄養ドリンクだとか 無味無臭のシリアルだとかにたよるひび割れた生活。

ガソリンのいらない近未来型自動車が台所のまな板のうえから転落し
100人の小人が死んでしまったという。
TVや新聞は そんなニュースで連日大騒ぎ。
朝から疲れているのには理由があるのだ。

そういう世の中の坂道を
きみもぼくもころがっていく。
小銭のように あるいは赤くはない一個のリンゴのように。
ごろん ごろんところがって

ごろん ごろんところがっていくがそれを見ている人もいないし
気にする人だっていない。
つぎからつぎへと リンゴは落ちる
落ちる。

そのたびにチャリン と音が響く。
小銭が落下したような チャリンという音。
さあ 耳をすませてそれを聴こう
生活の足許にある その音を。

チャリン!

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