二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

半世捨て人(ポエムNO.3-68)

2020年05月29日 | 俳句・短歌・詩集
   (栃木県足利市。2014年11月撮影)



「世捨て人ってだれのこと?」って友人が訊ねる。
「ぼくのことさ」
そう答えたら げげっといって口許をおさえた。
うん まあ笑うがいいだろう。

この管理社会からドロップアウトするなんて不可能なこと。
時代は中世じゃないし
ぼくは兼好法師とはほど遠い。
どこへいこうと税金が追いかけてくる。

ほかにも種々雑多なものが
追いかけてくる。
世捨て人だなんてとんでもない 赦さんぞ
赦さんぞ!

一日の終りがたばこの煙のようにたちこめている。
その端っこで
若いしなやかな乳房のようにはずんでいるもの。
その正体が知りたくて

その正体が知りたくて
昨日 半日考えていた。
赤ん坊や男たちの欲望をそそるもの。
結局は生きる張り合いをなくしちまって

ぼくは世捨て人願望を持てあましている。
幻影の乳房が綿埃みたいにあごのあたりを漂う。
やがて本物の泡となってはじける
ぷつん ぷつんと。

あんなふうにはじけて消えることができたら
「矢でも鉄砲でも持ってきやがれ」と叫ぶことができたら。
その瞬間のことを夢みている泡。
つまり半世捨て人。

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