二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

老いさらばえたロバがいななく(ポエムNO.3-11)

2019年07月24日 | 俳句・短歌・詩集
トレドからクテシフォンへ
クテシフォンからサマルカンドを通って洛陽へ
曲りまがりしながら 一頭の老いたロバが東へ旅をした。
ぼくがつれていたのがそのロバだったのか

ロバがつれていたのがぼくだったのか
いまとなってはもうわからない。
永遠にわからないだろう。
ロバの毛皮でできた夢の書物。

・・・そういう書物を書こうと思っていた
奇想天外 荒唐無稽な。
人はいうだろう
あの男も発狂したかと。

ぼくがつれていたのがその書物だったのか
書物がつれていたのがぼくだったのか
いまとなってはもうわからない。
永遠にわからないだろう といってもいいが。

退屈なあまり 二世紀から五世紀へ 五世紀から十一世紀へと
大空を鷲か鳶のように滑空する。
人はなぜ いまここにしか存在できないのだろう?
いまここって そもそもいつどこだ?

ロバがいななく。
老いさらばえた一頭の痩せたロバがいななく。
なんとも冴えない 喜劇的な啼き声を発して。
ひーほひーほ ひーほーと。

ロバよ ロバよ
さあ翼をやろう。
時空を自由気ままに飛びまわれる翡翠の翼を。
それに乗って トレドでも洛陽でも

好きなところへ滑空すればよい。
書物にとり憑かれた人たちは皆そうしている。
望むなら十六世紀オランダから
七世紀のヴェネチアを目指して飛んでいけ。

小蓑をかぶった猿はつい昨日まで
大垣 いや山科のあたりをうろついていたぞ。
その猿とすれ違ったとき ぼくのロバはひーほといなないた。
仲間へのあいさつひーほひーほ とね。

ひーほひーほ ひーほー。

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