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あんなに遠い存在だったはずの祖父と距離が縮まっていく。
そういう年齢になった・・・ということだろう。
モーツァルトのヴァイオリン協奏曲ホ短調を聴いていたかたわらの人が
不意に涙をあふれさせる。
ことばにはならない。
ぼくはうなずく。
しきりに うなずく。ほかにはなにもできなかったから。
すっかり弱ってバルコニーに横たわっていたコフキコガネが
ぼくの手のひらから勢いよく大空へと飛び立っていく。
そんな力が まだ残っていたとは。
コフキコガネが姿を消したあたりには
最近建てられたばかりの家々が密集している。
ぼくはその中の一軒すら知らないけれど。
そこを家郷と呼んでいる。
骨が他の骨とふれあって
コツン コツンと鳴っている。
いいかげん気が滅入る どんよりとした夕まぐれ。
こうしているあいだに稲の穂がふくらむ。
神の食べ物・・・だったのだろう 祖父にとっては。
歩いていると そこにいるはずのない人の後姿にぶつかる。
だから 気が滅入るのか?
カメラを手にして家郷をさすらう。
昨日も 今日も。
さすらってなにを発見しようというのか
ぼくにはわからないけど そうせずにはいられない。
死んだ少年がビワの実のような眼でぼくを見ている。
笑い声が聞こえるけれどあれはだれが笑っているのだろう。
だれが・・・。
「もう家に帰ろう」とぼくは死者たちの霊に向かって話しかける。
半透明な翅をもったトンボのように
死者たちの霊が空に満ちて
陽が翳って 記憶の谷間がますます暗くなって。
「さあ もう家に帰ろう」
ぼくはカメラにいろいろなものをつめこみ
記憶の谷間へと帰りを急ぐ。
そういう年齢になった・・・ということだろう。
モーツァルトのヴァイオリン協奏曲ホ短調を聴いていたかたわらの人が
不意に涙をあふれさせる。
ことばにはならない。
ぼくはうなずく。
しきりに うなずく。ほかにはなにもできなかったから。
すっかり弱ってバルコニーに横たわっていたコフキコガネが
ぼくの手のひらから勢いよく大空へと飛び立っていく。
そんな力が まだ残っていたとは。
コフキコガネが姿を消したあたりには
最近建てられたばかりの家々が密集している。
ぼくはその中の一軒すら知らないけれど。
そこを家郷と呼んでいる。
骨が他の骨とふれあって
コツン コツンと鳴っている。
いいかげん気が滅入る どんよりとした夕まぐれ。
こうしているあいだに稲の穂がふくらむ。
神の食べ物・・・だったのだろう 祖父にとっては。
歩いていると そこにいるはずのない人の後姿にぶつかる。
だから 気が滅入るのか?
カメラを手にして家郷をさすらう。
昨日も 今日も。
さすらってなにを発見しようというのか
ぼくにはわからないけど そうせずにはいられない。
死んだ少年がビワの実のような眼でぼくを見ている。
笑い声が聞こえるけれどあれはだれが笑っているのだろう。
だれが・・・。
「もう家に帰ろう」とぼくは死者たちの霊に向かって話しかける。
半透明な翅をもったトンボのように
死者たちの霊が空に満ちて
陽が翳って 記憶の谷間がますます暗くなって。
「さあ もう家に帰ろう」
ぼくはカメラにいろいろなものをつめこみ
記憶の谷間へと帰りを急ぐ。