二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

街を撮る(ポエムNO.2-53)

2015年04月05日 | 俳句・短歌・詩集
耳の穴に小さな茶色い犬が棲みついていてね
くおん くうおーん くおん
と吠えたり
くーくー くくーと悲しげに鳴いたりする。
犬の声が 帆掛け船のように
ぼくとぼくがとらえた被写体のあいだをいったりきたりしている。

とある街のとある午後。
初夏への階段を
トン
トントン
と のぼっていく。
日めくりカレンダーを繰るようにして。

ムラサキハナナやホトケノザがそこいら一面をおおっているね。
写真ってふしぎだな。
撮ったその直後に
時間の化石となって ぼくの手に残るから。
ぼくとぼくが撮影した写真のあいだで吠えたり鳴いたりする犬。
さびしさの岬のほうからやってきた犬。

人っ子ひとりいない街角を
だれか歩き回る気配がする キリコの影絵の世界のように
ぼくはその街へと歩み入る 昭和の面影が色濃い
北関東のありふれた街だが・・・。
「朔ちゃんの銅像」の横に立って深呼吸し
広瀬川のヤナギの芽吹きに身をさらす。

あのときはあんなににぎわっていたのに
皆どこへ消えてしまったのか。
愛しかりし町並み
愛しかりし人びと。
遠き日の甍のうえに サクラのはなびらが降りそそぐ。
レンズは記憶の向こう側へと向けられている。

ユーカリさん星野さん
エミリーやぼたんさん。
この世にいない懐かしい顔の行列が神輿のように練り歩く。
まぶたの裏のアーケード街。
まつ毛の簾がゆれて ゆれて
ぼくの写真に大いなるかげりをそえる。

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