
耳の穴に小さな茶色い犬が棲みついていてね
くおん くうおーん くおん
と吠えたり
くーくー くくーと悲しげに鳴いたりする。
犬の声が 帆掛け船のように
ぼくとぼくがとらえた被写体のあいだをいったりきたりしている。
とある街のとある午後。
初夏への階段を
トン
トントン
と のぼっていく。
日めくりカレンダーを繰るようにして。
ムラサキハナナやホトケノザがそこいら一面をおおっているね。
写真ってふしぎだな。
撮ったその直後に
時間の化石となって ぼくの手に残るから。
ぼくとぼくが撮影した写真のあいだで吠えたり鳴いたりする犬。
さびしさの岬のほうからやってきた犬。
人っ子ひとりいない街角を
だれか歩き回る気配がする キリコの影絵の世界のように
ぼくはその街へと歩み入る 昭和の面影が色濃い
北関東のありふれた街だが・・・。
「朔ちゃんの銅像」の横に立って深呼吸し
広瀬川のヤナギの芽吹きに身をさらす。
あのときはあんなににぎわっていたのに
皆どこへ消えてしまったのか。
愛しかりし町並み
愛しかりし人びと。
遠き日の甍のうえに サクラのはなびらが降りそそぐ。
レンズは記憶の向こう側へと向けられている。
ユーカリさん星野さん
エミリーやぼたんさん。
この世にいない懐かしい顔の行列が神輿のように練り歩く。
まぶたの裏のアーケード街。
まつ毛の簾がゆれて ゆれて
ぼくの写真に大いなるかげりをそえる。
くおん くうおーん くおん
と吠えたり
くーくー くくーと悲しげに鳴いたりする。
犬の声が 帆掛け船のように
ぼくとぼくがとらえた被写体のあいだをいったりきたりしている。
とある街のとある午後。
初夏への階段を
トン
トントン
と のぼっていく。
日めくりカレンダーを繰るようにして。
ムラサキハナナやホトケノザがそこいら一面をおおっているね。
写真ってふしぎだな。
撮ったその直後に
時間の化石となって ぼくの手に残るから。
ぼくとぼくが撮影した写真のあいだで吠えたり鳴いたりする犬。
さびしさの岬のほうからやってきた犬。
人っ子ひとりいない街角を
だれか歩き回る気配がする キリコの影絵の世界のように
ぼくはその街へと歩み入る 昭和の面影が色濃い
北関東のありふれた街だが・・・。
「朔ちゃんの銅像」の横に立って深呼吸し
広瀬川のヤナギの芽吹きに身をさらす。
あのときはあんなににぎわっていたのに
皆どこへ消えてしまったのか。
愛しかりし町並み
愛しかりし人びと。
遠き日の甍のうえに サクラのはなびらが降りそそぐ。
レンズは記憶の向こう側へと向けられている。
ユーカリさん星野さん
エミリーやぼたんさん。
この世にいない懐かしい顔の行列が神輿のように練り歩く。
まぶたの裏のアーケード街。
まつ毛の簾がゆれて ゆれて
ぼくの写真に大いなるかげりをそえる。