はじめにごく私的な話をさせていただくと、平凡社ライブラリー版で読んだイザベラ・バードの「日本奥地紀行」こそ、わたしの紀行文学好きを決定づけた書物でありまする(´ω`*)
読んでから12年が経過し、記憶がうすれてきたので、半年ほど前から、再読をかんがえていた。
村上春樹の紀行文学を読み、司馬さんの「街道をゆく」を読む。
そういった作業のはじまりに、イザベラ・バードの「日本奥地紀行」があるのであります~る。
しかし、調べてみると、平凡社ライブラリー版は全訳ではないらしい。
・・・というわけで、講談社学術文庫の「イザベラ・バードの日本紀行」上・下巻(時岡敬子訳)を買って、読みはじめた。
ところが、Amazonのレビューである方が指摘しておられる。
「翻訳がひどい。誤訳、文法的間違いが多く、品性に欠ける。
歴史、科学の知識が乏しいのでは?」と。
かくいうわたしも、同様の感想を抱いた。語学力があるからといって、いわゆる翻訳家一人の手に負える範囲を、本書は大幅に超越している。翻訳するにあたって歴史、地理、民俗学、博物学、政治・行政学その他の知識を総動員する必要があるのだ。
講談社学術文庫の「イザベラ・バードの日本紀行」は問題が多いため、最良と思われる訳書に「完訳 日本奥地紀行」全4巻 金坂清則訳 (平凡社東洋文庫3000~3300円 税別)があるが、いささか高価(^^;
買って読まなかったらムダな出費じゃのう。
<参考資料>
■YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=4_5IzwJWfUo
■イザベラ・バードと日本の旅はなぜ誤解されてきたのか
http://kai-hokkaido.com/feature_vol46_bird1/
京大の地理学者、金坂清則(かなさか・きよのり)さんは専門の研究者というべき存在。
1年ばかり前に、「イザベラ・バードと日本の旅 」(平凡社新書)を手に入れて読みはじめたが、これがどうもおもしろくなく、途中で挫折した経緯があるが(;^ω^)
■ツイン・タイム・トラベル:Twin Time Travel(和製英語)
「過去の旅行記に描かれた旅を、私たちの旅に取り込み、2つの旅の時空を主体的に重ね合わせる旅」。
金坂さんが発案し、商標登録したのだそうである。
■「完訳(新訳) 日本奥地紀行」全4巻 金坂清則訳 (平凡社東洋文庫3000~3300円 税別)
わたしは2010年の1月に、つぎのようなレビューをUPしている(二草庵摘録)。
《勇気と知性、感受性の絶妙なバランスがもたらした、紀行文学の金字塔であり、比類のない、味わい深いすばらしいドキュメントといえる。》
■https://blog.goo.ne.jp/nikonhp/e/b02ffee7423b1356f99d3a57695cdcdb
47歳のイギリス女性が単独で、18歳の通訳の伊藤を一人つれて、明治11年(1878)東北・北海道を主に馬で旅するのは、常識的にかんがえ、驚嘆に値する。
イザベラ自身が、女性の身で大した不都合(おもに治安のよさ)なく、悪路やノミ、蚊の大群に悩まされはしたものの、3か月にわたる旅行ができたことに驚いている。東京(江戸)から日光までは自分と伊藤と荷物のため3台の人力車(クルマ)を雇うが、そこからさきは馬にたよることになる。大雨が降り、ぬかるんだり崩落あるいは陥没したりと、途轍もない悪路と疲労困憊のため、馬が動けなくなる。そしてどこへいっても、好奇心露わな大人たち、子どもたち(野次馬)に囲まれる。彼女はしばしば歩いて、道なき道を踏破するのだが、困難にめげることなく、心に固く決めた目的を一歩一歩達成してゆく。
そのうえ、彼女の関心の広さは特筆すべきもので、植物、動物、気象、地理、地域住民、子どもたちその他、目についたものほとんどすべてに注意を向けている。
紛らわしいのであらためて書いておくと、手に入り易い訳書はつぎの3種となる(と思われる)。
1.「日本奥地紀行」平凡社ライブラリー(全1巻)
2.「イザベラ・バードの日本紀行」講談社学術文庫(上・下2巻)
3.「完訳(新訳)日本奥地紀行」平凡社東洋文庫(全4巻)
上巻のみ読んだが、時岡敬子訳・講談社学術文庫をおしまいまで読むのは、訳文のまずさもあるからいささか骨が折れまする(ノω`*)
平凡社ライブラリー版を蔵書からさがすか、買いなおすか迷っている。
平凡社ライブラリーシリーズではこんな本も手許にあ~る。
(イザベラ・バードの「『日本奥地紀行』を読む」宮本常一)
イザベラ・バードについては、ほかにも、
「イザベラ・バードのハワイ紀行 」(平凡社ライブラリー)
「朝鮮紀行〜英国婦人の見た李朝末期」 (講談社学術文庫)
「イザベラ・バード/カナダ・アメリカ紀行」 Kindle Edition
・・・等の著作を、日本語で読むことができるし、Webにも、さまざま情報がわんさかUPされている。
バードが旅行家として超一流の人物であったのは疑いなし・・・なのだ!
彼女の観察眼が、紀行文学の書き手としてどんなに徹底したものであるか具体的に語ってみたいとは思うが、今回は内容には踏み込まないでおく。書きはじめたら長く、なが~くなってしまうことだろう。
現在は柳田国男とならぶ民俗学の大御所、宮本常一さんの「『日本奥地紀行』を読む」に期待している。
フィクションではなく、ドキュメンタリー。
フィクションなら、書き手の妄想で好き勝手なことが書けるが、ドキュメンタリー、ノンフィクションとなると、そうはいかない。
手に汗握るリアリティー、アクチュアリティー。
読者にとってはそこが読みどころであり、“もう一つの現実”の在りどころである。時空の旅とひとくちにいうが、その扉の向こうの豊麗な世界は、歴史の現実に深く根を下ろしている。
紀行文学はさがしはじめると、椎名誠さんはじめ、びっくりするほど大勢の書き手がいて、「街道をゆく」のあと、どんな進路をたどったらいいかかんがえこんでしまう。
とりあえずいまは、愉しみ無限大∞・・・といっておこう!?
(のちの伊藤鶴吉)
(バードの東北・北海道の旅の経路)
(挿絵の一部)
評価:☆☆☆☆☆
※引用のフォトは、主としてWebの画像検索よりお借りしました。ありがとうございました。
読んでから12年が経過し、記憶がうすれてきたので、半年ほど前から、再読をかんがえていた。
村上春樹の紀行文学を読み、司馬さんの「街道をゆく」を読む。
そういった作業のはじまりに、イザベラ・バードの「日本奥地紀行」があるのであります~る。
しかし、調べてみると、平凡社ライブラリー版は全訳ではないらしい。
・・・というわけで、講談社学術文庫の「イザベラ・バードの日本紀行」上・下巻(時岡敬子訳)を買って、読みはじめた。
ところが、Amazonのレビューである方が指摘しておられる。
「翻訳がひどい。誤訳、文法的間違いが多く、品性に欠ける。
歴史、科学の知識が乏しいのでは?」と。
かくいうわたしも、同様の感想を抱いた。語学力があるからといって、いわゆる翻訳家一人の手に負える範囲を、本書は大幅に超越している。翻訳するにあたって歴史、地理、民俗学、博物学、政治・行政学その他の知識を総動員する必要があるのだ。
講談社学術文庫の「イザベラ・バードの日本紀行」は問題が多いため、最良と思われる訳書に「完訳 日本奥地紀行」全4巻 金坂清則訳 (平凡社東洋文庫3000~3300円 税別)があるが、いささか高価(^^;
買って読まなかったらムダな出費じゃのう。
<参考資料>
■YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=4_5IzwJWfUo
■イザベラ・バードと日本の旅はなぜ誤解されてきたのか
http://kai-hokkaido.com/feature_vol46_bird1/
京大の地理学者、金坂清則(かなさか・きよのり)さんは専門の研究者というべき存在。
1年ばかり前に、「イザベラ・バードと日本の旅 」(平凡社新書)を手に入れて読みはじめたが、これがどうもおもしろくなく、途中で挫折した経緯があるが(;^ω^)
■ツイン・タイム・トラベル:Twin Time Travel(和製英語)
「過去の旅行記に描かれた旅を、私たちの旅に取り込み、2つの旅の時空を主体的に重ね合わせる旅」。
金坂さんが発案し、商標登録したのだそうである。
■「完訳(新訳) 日本奥地紀行」全4巻 金坂清則訳 (平凡社東洋文庫3000~3300円 税別)
わたしは2010年の1月に、つぎのようなレビューをUPしている(二草庵摘録)。
《勇気と知性、感受性の絶妙なバランスがもたらした、紀行文学の金字塔であり、比類のない、味わい深いすばらしいドキュメントといえる。》
■https://blog.goo.ne.jp/nikonhp/e/b02ffee7423b1356f99d3a57695cdcdb
47歳のイギリス女性が単独で、18歳の通訳の伊藤を一人つれて、明治11年(1878)東北・北海道を主に馬で旅するのは、常識的にかんがえ、驚嘆に値する。
イザベラ自身が、女性の身で大した不都合(おもに治安のよさ)なく、悪路やノミ、蚊の大群に悩まされはしたものの、3か月にわたる旅行ができたことに驚いている。東京(江戸)から日光までは自分と伊藤と荷物のため3台の人力車(クルマ)を雇うが、そこからさきは馬にたよることになる。大雨が降り、ぬかるんだり崩落あるいは陥没したりと、途轍もない悪路と疲労困憊のため、馬が動けなくなる。そしてどこへいっても、好奇心露わな大人たち、子どもたち(野次馬)に囲まれる。彼女はしばしば歩いて、道なき道を踏破するのだが、困難にめげることなく、心に固く決めた目的を一歩一歩達成してゆく。
そのうえ、彼女の関心の広さは特筆すべきもので、植物、動物、気象、地理、地域住民、子どもたちその他、目についたものほとんどすべてに注意を向けている。
紛らわしいのであらためて書いておくと、手に入り易い訳書はつぎの3種となる(と思われる)。
1.「日本奥地紀行」平凡社ライブラリー(全1巻)
2.「イザベラ・バードの日本紀行」講談社学術文庫(上・下2巻)
3.「完訳(新訳)日本奥地紀行」平凡社東洋文庫(全4巻)
上巻のみ読んだが、時岡敬子訳・講談社学術文庫をおしまいまで読むのは、訳文のまずさもあるからいささか骨が折れまする(ノω`*)
平凡社ライブラリー版を蔵書からさがすか、買いなおすか迷っている。
平凡社ライブラリーシリーズではこんな本も手許にあ~る。
(イザベラ・バードの「『日本奥地紀行』を読む」宮本常一)
イザベラ・バードについては、ほかにも、
「イザベラ・バードのハワイ紀行 」(平凡社ライブラリー)
「朝鮮紀行〜英国婦人の見た李朝末期」 (講談社学術文庫)
「イザベラ・バード/カナダ・アメリカ紀行」 Kindle Edition
・・・等の著作を、日本語で読むことができるし、Webにも、さまざま情報がわんさかUPされている。
バードが旅行家として超一流の人物であったのは疑いなし・・・なのだ!
彼女の観察眼が、紀行文学の書き手としてどんなに徹底したものであるか具体的に語ってみたいとは思うが、今回は内容には踏み込まないでおく。書きはじめたら長く、なが~くなってしまうことだろう。
現在は柳田国男とならぶ民俗学の大御所、宮本常一さんの「『日本奥地紀行』を読む」に期待している。
フィクションではなく、ドキュメンタリー。
フィクションなら、書き手の妄想で好き勝手なことが書けるが、ドキュメンタリー、ノンフィクションとなると、そうはいかない。
手に汗握るリアリティー、アクチュアリティー。
読者にとってはそこが読みどころであり、“もう一つの現実”の在りどころである。時空の旅とひとくちにいうが、その扉の向こうの豊麗な世界は、歴史の現実に深く根を下ろしている。
紀行文学はさがしはじめると、椎名誠さんはじめ、びっくりするほど大勢の書き手がいて、「街道をゆく」のあと、どんな進路をたどったらいいかかんがえこんでしまう。
とりあえずいまは、愉しみ無限大∞・・・といっておこう!?
(のちの伊藤鶴吉)
(バードの東北・北海道の旅の経路)
(挿絵の一部)
評価:☆☆☆☆☆
※引用のフォトは、主としてWebの画像検索よりお借りしました。ありがとうございました。