二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

夜への階段(ポエム)

2011年06月22日 | 俳句・短歌・詩集

降りていく。
慎重に 足をふみはずさぬように。
ぼくをとりまく人たちのいわばこころの底へと。
手すりはない。
視界はブレたり ボケたりする。

降りていく。
触れると火傷するような手をした麗人のかたわらへ。
一心不乱に無意味な仕事をする裁判所書記官の書類の上へ。
かつて同僚だった男のまばたきの内側へ。
大いなる悲しみをかかえてよたよた歩く掃除夫の背後へ。

降りていく ぼくは降りていく。
あるいはのぼっていく・・・といってもいいのだけれど。


人工のライトに浮かび上がるゴルフ施設やバッティング場。
三叉路の向こうの看板に 小雀みたいな天使が舞い降りて
ときどきぼくを手招きする。
ああ そっちへいってもいいのだけれど。
帰り道がなくなってしまう としても。

時代のうねりが町角を容赦なく踏みつぶしていったのだ。
エメラルドやラピスラズリの残骸がむすうに散らばっているよ ほら。
見ろ。
見ろ。
見ようとしなければ 見えないものを。


憎しみと嫌悪を 夜の闇がつつんでいく。
一歩 また一歩と。
階段をゆっくりと降りていくように
この一日が暮れなずみ
つぎの一日はまだ遠く あるかないかもわからない。

このまま歩いていけば
あの星空の広場の端っこへ出られるんだろうか?
恋びとたちはいつか再会できるんだろうか あの湿っぽいベッドの上で。
タイザンボクの大きな花を見上げたあと
仕事場へ帰って ぼくはちっぽけな詩を書きながらため息をもらす。
ぼくのため息はことばでできている。

いつからここにいるんだろう。
いつまでここにいるんだろう。
現世という名の 映画館?
むすうの登場じんぶつ。男と女とじいさんとばあさんと。
犬や猫。
ベニシジミやシロコブゾウムシ アカスジキンカメムシ。

人びとのざわめきも やがては消える。
そのあたりは地球のはずれの袋小路で 人影はまったくないのだけれど
生き物の気配にみちている。
そこまで この階段を降りていく。






mixiアルバム「夜への階段」part2」はこちらです。
http://photo.mixi.jp/view_album.pl?album_id=500000017402413&owner_id=4279073

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