二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

天才設計者 米谷美久を思い出す

2011年01月26日 | Blog & Photo
かつて、カメラの夢を見たことがある。
たとえではなく、文字通り眠っているときに見る夢。

はじめて見たのは、いまから20年くらいまえのことだろうか?
オリンパスやペンタックスのMX、LXなんかがその夢に出てきた。
一時期あんなに欲しかったローライフレックス(二眼レフ)や、M型ライカ、コンタックスのカメラ、レンズではなく、
オリンパスとペンタックスだったというのが不思議といえば、不思議。

そして、2000年ごろに、もう一回、オリンパスは連続して夢にあらわれた。
わたしは前橋にある中古カメラショップへ出かけて、OM-1とレンズを2本買い、数週間後、OM-2も買った。
レンズは50mmF1.8、28mmF3.5、35mmF2.8の安くて小さな3本。
デジタル革命がはじまってはいたが、まだ写真機としては未成熟で、オモチャみたいなもの。一人前の写真愛好家が欲しくなるようなシロモノではなかった。



これは、80年代90年代を通じてプロ御用達NO.1だったニコンF3とのツーショット。
背景はわが家のリビング。
F3(HPファインダー)と比較すると、一回りどころか、二回りはコンパクトで、軽量なボディ。レンズも、性能を犠牲にすることなく、徹底して「小型軽量」にこだわっている。



オリンパスのOM-1、OM-2は、カメラの操作部がとても変わっている。
シャッターダイアルが、マウント基部にあるのだ。なんという大胆かつ斬新な発想だろうと、若いころは感心した。これもまた、「小型軽量」のための「カメラボディ」革命といえる。



OM-1、OM-2は天才設計者・光学技術者、米谷美久(まいたによしひさ)さんという存在なしには生まれなかった。
米谷さんは、そのまえに、ハーフサイズでレンズ交換可能なPENシリーズ誕生を指揮している。また、OMシリーズのあと、カメラカプセルXAというヒット作を世に送り出し、多くのファンを得ている。

朝日ソノラマという出版社からかつて「オリンパスのすべて OM-1 OM-2」という本が出ていた。わたしはこれを読んで米谷信者になったのである(-_-)
この本の第2章で、「設計者から見たOM-1、OM-2」と題して、米谷さんが、このシリーズの誕生秘話や、苦労話、設計コンセプトなどについて、率直に語っていて、わたしはこの1章で、米谷信者になった。オリンパス党なら、ぜひもっていたい、必携の書(^_^)v
(下にあるのは、その後復刻されたM-1、OM-2の取扱説明書。雑誌「CAPA」の姉妹誌として発行されていた「カメラGET!」の付録)。



昨晩それを読み返して、米谷さんの「思想(考え方)」を思い出した。
いちばん感銘をうけたのは、こういうことであった。
OM-2は、ダイレクト測光の革新性ばかりが当時話題になったけれど、ほかにもう一つ、すごい機能を持っている。それは電磁レリーズであるにもかかわらず、電源OFF時でも、シャッターボタンを押せば、1/30以上でレリーズできる! 押したその瞬間だけ、電気回路がONになり、チャンスに即応できるのである。
ではなぜ?
なぜ、1/30なのか?
それはカメラバッグの中などで、押されてシャッターが切れたとき、長時間露出になって、電池を消耗するかも知れないということへの配慮。

35mmカメラという複写機は、どこへでも持ち歩き、予期せぬチャンスに一瞬で対応できなければならないという思想(考え方)を、卓越したデザインセンスによってつくりあげたのが、被写体は、宇宙からバクテリアまでといわれたOM-1とOMシステムなのである。
OM-1にふれていると、これが米谷さんの思想の結晶であることが、指先につたわってくるようだ。

二大メーカー、キヤノン・ニコンを相手に苦戦が続いていたオリンパスは、PEN E-P1の発売でこの米谷さんの考え方に回帰し、成功をおさめたのである。

マイミクあっきいさんに刺激され、このあいだから欲望が再燃しかけている。
「OM-1のブッラクペイントはいくらくらいするのだろう?」
OM-1は製造中止になった銀電池仕様なので、いまでは関東カメラサービスのホルダがないと、メーターが動かない。しかし、動いても、受光素子は経年劣化のため、感度が落ちていて、まず頼りにはならないから、バルナックライカやM型のように、電池なしの完全マニュアル機として使えばいいのである。エアダンパーの効きがよくて、シャッター音もすばらしいし、タイムラグもないに等しい。



オリンパスはその後、メカニカルシャッター機、OM-3も世に送り出している。
しかし・・・わたしは、OM-3やOM-4の夢は、いっぺんも見たことがない。

おまけとして、80年代、90年代のカメラカタログをアップしておこう(^^;)
かなりのカタログが、まだ書庫に眠っていて、ワイナリーよろしく「熟成」を待っている(笑)。





■米谷情報
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B1%B3%E8%B0%B7%E7%BE%8E%E4%B9%85
http://chotoku.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-fb78.html
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/20090730_306011.html
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