二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

キーパースンは半藤一利さん♪ ~昭和史を学ぶために

2015年10月18日 | 座談会・対談集・マンガその他
トップにあげたのは、今日紀伊國屋書店で購入した、半藤一利さんの「日本国憲法の二○○日」(文春文庫)。

半藤さんの著作で最初に読んだのは、
「漱石先生ぞな、もし」であった。
http://blog.goo.ne.jp/nikonhp/e/6b261b861f8ba2d576ad6c533550b88c

2007年12月21日のこと。このときの評価は☆☆☆であり、あまり高い得点はつけていない。
そのあとちくま文庫で、
「荷風さんの昭和」
「荷風さんの戦後」
http://blog.goo.ne.jp/nikonhp/e/b8f52ab372ec1ea0315bb809c4c4cc6e

をつづけて読んだ。いずれは評判のいい「昭和史」を手に取ってみようと思いつつ・・・。こちらはとてもおもしろかった。

わたしはこのとき、荷風が断腸亭日乗にしるしたつぎのことばを、はじめて知ったのではないかとおもう。

「米人の作りし日本新憲法今日より実施の由。笑ふべし」(昭和22年5月3日)

まことに反骨の人・永井荷風にふさわしい、シニカルな一言であるが「なるほど、真相を衝いているな」と考えないわけにはいかなかった。
荷風は当時、日本有数のインテリ。24歳から約4年間アメリカ暮らしを経験している。そういう人のことばだから、横町の因業じじいの言では、むろんない。


読んで強い印象をうけた本は、大抵レビューを書いて、あとでそれを読み返すようにしている。
このところ昭和史に関する本を物色し、あれこれと読み漁ってはいるが、1~2か月では、自身の定見をうることころまではいかない・・・とてもとても。
とにかく掃いて捨てるほど、いや星の数ほど、たくさんの書物があって、異論反論が錯綜している。まったく地図を持たずに、巨大都市空間を放浪しているようなもの。
そこで元「週刊文春」「文藝春秋」の名編集長として鳴らした半藤さんを、キーパースンに選んだのである。
学究の徒ではなく、右寄りだの左寄りだのといった政治的な立場に固執せず、ややこしい
哲学者みたいな観念論に陥らず、とても具体的かつリベラルな視点から、昭和史の要諦について教えてくれる。半藤さんがいなかったら、わたしはいま、この時期に昭和史を学ぼう・・・という気にはならなかったろう。



文春新書からは、昭和史とその周辺をめぐる対談、鼎談、座談会が数多く刊行され、わたしの貴重な情報源となっている♪
新資料が発見され、今世紀に入って、昭和史に新たな照明があてられている。かつては近現代史と日中戦争、太平洋戦争といえば、児島襄さんが有名だった。しかし現在ではその大部分は絶版となっているようである。おそらく、ノンフィクションライターとしての姿勢や元となった資料が、古びてしまったのだろうゞ(´Д`

昨日読みおえた「零戦と戦艦大和」(文春新書)は、非常にスリリングな話題満載の一冊であった。
なぜかというと、プラモデル少年だったころから、零戦と戦艦大和には、日本人として特別な思い入れがあったから。
第一部 
帝国海軍vs米国海軍(日本はなぜアメリカに勝てないのか?)
出席者:江畑謙介 鎌田伸一 戸高一成 秦郁彦 半藤一利 福田和也
1)日米対決の宿命(マハンの「海軍戦略とルーズベルト家の策略」)
2)リーダー、戦略、人事(ニッポン型現場主義vs米国型独裁トップ)
3)イノベーションと技術力(職人芸、名人芸vs大量生産、サイエンス)
4)インテリジェンス戦争(ミッドウェー海戦と海軍乙事件)
5)上司と部下(戦時の美意識と民主主義)
6)失敗の本質(非常時に求められる「リアリズム」)

第二部
零戦と戦艦大和(世界最高兵器の栄光と悲惨)
出席者:清水政彦 戸高一成 半藤一利 兵頭二十八 福田和也 前間孝則
1) 無敵戦闘機と巨大戦艦の誕生(“すりあわせ”で世界の頂点に)
2) 山本五十六は大和建造に猛反対した?(大艦巨砲か、航空主力か)
3) 零戦の致命的弱点は?(「性能」と「戦力」のあいだ)
4) 大和をどう使うべきだったのか?(戦略の不在と現場力の凄さ)
5) ニッポン技術力の限界(官主導の弊害、後発工業国の哀しさ)
6) ものづくり立国への遺産(新幹線、ホンダF1、「世界一」の記憶)


この章立ての内容と、出席者の顔ぶれをみていれば、どんな本か、大方見当はつくだろう。
しかし、こうもコテンパンに過去の日本とそこで生き死にした人たちをやっつけていいんだろうかといささか情けなくなる。

たくさん買って準備してあるので、「出番待ち」の本がずいぶんたまってしまった。
完全に撮影モードのスイッチがONになると、本が読めなくなる。それまでに何冊よめるか・・・ある意味、時間とのレースなのかもしれない(ρ_・)

いま興味の中心は昭和天皇と天皇制あたりにある。
そしてつぎは日中戦争と太平洋戦争の概観をつかむこと、さらに「日本国憲法」は、いつだれによって、どういうプロセスをへて作られたのか? という事実の検証。
一つの本が、つぎの一冊、二冊をつれてくる。そしてそれらの本が、また。こうしていもづる式に、欲しい本、読みたい本がふえていく。

わたしにとっては、この秋はもっぱら「読書の秋」になりそうな気配が濃厚となってきた。

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