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チリ―豪の光海底ケーブル、日本案採用 脱・中国依存へ
- 2020/7/29 1:31 (2020/7/29 5:25更新)
- 日本経済新聞 電子版
南米とアジア・オセアニアを結ぶ初の光海底ケーブルについて、計画を進めるチリ政府が日本の提案したルートを採用した。NECなど日本企業が受注する可能性が高まった。中国もチリと上海を結ぶルートを提案していた。米国が中国へのけん制を強めるなか、情報インフラ整備で脱・中国依存が進む可能性がある。
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インターネットなど国際通信の95%は海底ケーブルを経由する。あらゆるモノがネットにつながるIoTや次世代通信規格5Gの普及で通信量の急拡大が見込まれる。海底ケーブルは大容量通信を支える基幹線で、拡充が課題になっている。
海底ケーブルを巡っては中継器やケーブルの陸揚げ拠点で通信データが監視される恐れを指摘する声もある。米司法省は6月、米国と香港を結ぶ海底ケーブルについて、米グーグルやフェイスブック、中国通信サービス大手が手掛ける計画に反対を表明した。
米司法省はデータを中国当局に収集されスパイ活動に使われる恐れがあると警戒している。華為技術(ファーウェイ)製品を排除する米トランプ政権はチリ政府の海底ケーブル計画でも中国企業の受注を避けるよう働きかけていた。
日本が提案したのはチリからニュージーランドを経由しオーストラリアのシドニーに達するルートで長さは約1万3千キロメートル。チリ政府はコストや実用性から「最も薦められるルート」とした。
日本と豪州を結ぶ別の海底ケーブルが7月に完成しており新ルートは日本とも接続しやすい。日本は豪州政府がファーウェイ製品を排除し中国に強硬姿勢をとっていることも考慮した。豪州とニュージーランドは環太平洋経済連携協定(TPP)でチリとも関係が深い。
中国は上海とチリを結ぶルートを提案していた。チリのピニェラ大統領が2019年4月に訪中した際には、ファーウェイがチリでのデータセンターの投資を約束するなど官民で受注に力を入れていた。
チリにとって中国は最大の輸出相手国で、海底ケーブルでも当初、ファーウェイは有力候補だった。一方、外交や貿易で米国の意向も無視できない。ポンペオ米国務長官はピニェラ氏の訪中直前にチリを訪問し「ファーウェイは中国政府にコントロールされており、国民をリスクにさらす」とくぎを刺していた。
チリのフット運輸・通信相は「太平洋で南米側のデジタルハブになる」とし、チリ政府は今秋にも技術調査の最終報告を公表する見通し。年末以降に実施主体となる特別目的事業体(SPV)を設立する。入札の実施は来年以降で、事業規模は初期投資で約600億円の見込み。
通信ケーブルや関連製品の受注は、提案が採用された日本が有利になる。日本政府は日本勢の受注が決まった場合、国際協力銀行(JBIC)や総務省管轄の海外通信・放送・郵便事業支援機構(JICT)によるSPVへの投融資などを検討する。
海底ケーブルは米サブコム、仏アルカテル・サブマリン・ネットワークス、NECが3強。NECはアフリカと南米を結ぶルートなどアジア以外の事業も広げている。
ファーウェイはもともと短距離が中心で、近年は南米とアフリカを結ぶ長距離を手がけるなど存在感を高めていた。19年6月には海底ケーブル事業を売却すると発表したが、売却しても別の中国通信大手が事業を継続するとみられる。(広瀬洋平、サンパウロ=外山尚之)