歴史と経済と医療の未来予測・歴史経済波動学

フラクタルと歴史経済波動学で予測
 未来の世界と経済と医療の行方
貴方はいくつの真実を見つけられるか!

未来は変化する

2025年01月01日 07時58分10秒 | 第三次大戦
Bulletin vol371 1.1.2025「世界資本主義再構築」と日本の好位置 
 
   ➡️ 再構築は幻想、西欧資本主義は滅び、東洋が台頭する
  •  
謹賀新年
良き新春をお迎えのこと、お慶び申し上げます。
期待に胸が膨らむ新年、皆様のご健闘をお祈り申し上げます。
   令和7年     元旦
             株式会社 武者リサーチ

(1) 何故、強い米国が必要かつ必然なのか 
 
     ➡️ 盛者必衰の理あり、崩壊は2046年前後

歴史的転換を推進する二つの力
10年後を考えると、世界のシステム・経済主体が、今のままで存続し続けることはないだろう。今の世界を突き動かす二つの力が、すべてを押し流していくと考えられる。
その第一は専制国家を排除した世界秩序の構築、
 
    ➡️ 西欧資本主義自体が専制国家を目指して内乱化し崩壊する
 
第二はAI革命の不可逆的進展による国際分業と各国の経済・産業構造の変容、である
 
    ➡️ AIは来る第三次世界大戦で大活躍する

専制国家排除の国際秩序、いずれ見えてくる
第一の力について。どこかの時点で、専制国家を排除した世界秩序構築が加速化するだろう。中国、ロシア、北朝鮮、イランなどの専制国家は袋小路を進んでいる。アサドシリアの滅亡に続き、ロシア・中国の経済的衰弱は避けられない。他方で米国では資本主義の蘇生が進展し、米国のプレゼンスは経済的にも政治・軍事的にも高まらざるを得ない。資本主義的世界秩序は米国主導で再構築が進められるだろう。トランプ氏の利己的にも見える「強いアメリカ再構築」に他国が従順にならざるを得ないのは、それ以外の選択肢がないからである。トランプ外交を米国の孤立主義、ナショナリズム回帰と見ることは間違っている。強いアメリカの復活は、世界秩序再構築の必須の条件である。
 
 ➡️ 2046年英米型資本主義は大崩壊し、世界は戦国時代へと
   突入する、仏型は2059年に大崩壊し、
   生き残るのは満身創痍の独イタリア型資本主義

空前のAI革命、米経済優位を一段と強める
第二の基本的力について。空前のAI革命は国際分業(各国の相互依存関係)の再構築、及び各国経済・産業構造の大転換を必然的に引き起こすだろう。技術革命のスピードは驚異的である。我々はムーアの法則(半導体では18ヶ月で2倍と言う集積度(=生産性)の向上が40年にわたって続いている事)が、現代経済の枠組みを根底から変えてしまっていることを痛感している。しかし今進行中のAIの基本構造であるニューロネットワークは、ムーアの法則以上のペースでの指数関数的生産性の向上(=損失の低下)を引き起こしている、と言われている。これをスケーリング則と言い、AIが応用されるすべての分野において、それと類似の劇的な変化を引き起こすことが想定される。ほぼ1000億個に上るニューロン(脳細胞)が1ニューロンあたり1万個のシナプスでつながることにより、人類の知能は飛躍的に高まった。AIデバイスは演算素子がヒトの脳に類似したネットワークで連携されることにより形成され、並列処理と高速化を可能にした。半導体と異なり、AI実装はあらゆる人間の頭脳労働の場面で実装可能なので、生産性上昇は広範囲な分野で実現していきそうである。それは自動的に供給力を高め潜在成長率を引き上げていく。
 
➡️ トランプ革命により、内乱戦場化したUSAから
   多くの技術者が海外に流れ出す

NVDIAの株価急騰バブルではない、何故か
このAIハイテク技術の多くは米国独占であり、他国は米国からの一極供給に依存することになる。この不可欠な基本技術と供給力を米国に依存し続けている以上(=米国は独占的に最先端ハイテクを供給している以上)、国際分業体制を後退させるわけにはいかない。トランプ氏の反グローバリズムと言う選挙レトリックを真に受けてはならないだろう。
 
➡️ バブルとその崩壊で資本主義は機能してきた、
   4、5年以内で大崩壊してバブルとわかるが、
    今でもバブルはバブル、バブル形成は資本主義の命

AI技術が希少財であり代替供給者がいないとすれば、AI技術品・サービスの相対価格が高まる。一見バブルに見えるNVIDIAとM7の株価上昇は、知的生産物の価格上昇を反映しており、根拠なき楽観とは言えない。AI革命は米を圧倒的に有利にするだろう。また先進国での労働は頭脳労働中心なのでAIの応用分野が多岐にわたり、広範な生産性向上が期待できる。他方労働力が潤沢な新興国は、筋肉労働中心でAIの活用分野は狭い。そもそも新興国の多くは余剰労働力を抱えているので、生産性向上が雇用を奪うことで社会不安を引き起こす可能性もある。つまりAI実装のモチベーションは低く、生産性の伸びは先進国に比し低いままに止まる可能性が高い。今勢いのあるように見えるBRICSに集う新興諸国は全体として経済プレゼンスを下げていくだろう。
 
➡️ 機械が主体なら、どこの国でも扱える、
  人類の知能は各国全て同じ、西洋が衰退し東洋が台頭するは
   歴史の必然、人種差別の思想がプンプンしている。

AI革命は国際分業上の各国の地位を変化させる
AI革命は、世界各地域における国際分業上の在り方を大きく変化させていくだろう。
1)米国は、AI・NETなどのデジタル分野及び金融において独占的強みを発揮し続ける。日欧はじめ各国は米国にデジタル関連費用を支払い続けることになる。
 
➡️ AIで世界はフラット化する、ソフトは簡単に世界に流れ出す、
  超円高による日本の産業空洞化がそれを促進する

2)東アジア(台湾・韓国・中国・日本)は半導体を中心とするハイエンド製造業を独占的に供給している。東アジアのエコシステムは最強であるゆえに代替は困難、東アジアへの供給依存は続くだろう。しかし東アジア域内での供給体制は、徐々に日本にシフトするだろう。米による中国排除が一段と進展すること、韓国の政治不安定化と競争力低下、TSMC製品など最先端ハイテク品の台湾集中のリスクの高まりにより、安全地域日本へのシフトが強まるだろう。
 
➡️ 次は日本の時代は正解

3)ASEAN諸国、インド等多くの新興国においては衣料品やローエンド機械等の製造の優位性は変わらない。ただ労働力潤沢の新興国諸国相互間の競争があるうえ、中国には潜在的に巨大な生産力の余剰がある。価格支配力維持は困難で、交易条件は改善できない。また今は順調に見える中国からの資本の提供は、中国のバブル崩壊=資本の破壊、により衰弱していくだろう。
4)欧州は高級消費財及び高額サービスにおいては強い。ものをいうブランド力は先進国特に欧州の独壇場である。しかしグリーンエネルギー・EV産業の挫折、対中・対ロ戦略の失敗などにより、競争力のある国際商品は乏しい。国際分業上の立場は低下気味だろう。
 
➡️ 西欧の衰退は必然、内乱内戦と資本主義崩壊と
   戦国時代到来にて後進国化する

AI革命が米国の産業構造をどう変えるか、製造業復活は限定的
それではAI技術は米国産業構造をどのように変容させるだろうか。トランプ政権下の米国では減税による景気刺激策の下で、旺盛な需要・雇用創造が展開されるとみられる。引き続き雇用拡大の中心はサービス産業となるだろう。米国のハイテク優位は一段と強まる、また米国の信認の強さ、デジタル分野(デジタルサービスとデジタル企業の海外利益)の大幅黒字、高金利と海外からの対米投資増加によりドル高基調が継続するだろう。そうした条件の下では米国の貿易赤字は改善しない。米国の製造業復活は限られたハイエンド・軍事関連分野に限定されるだろう。メキシコとカナダとの分業は調整されるが大きくは変わらないだろう。NAFTAからUSMCAへと衣替えしたが米国の対墨、対加貿易赤字が全く減らなかった。米国の狙いは中国の迂回輸出を遮断すること、不法移民の取り締まりなどであり、それらの譲歩を得たうえで交渉は決着するではないか。
 
➡️ USA/西欧の優位は、内戦内乱と裏切りで崩壊する、
   赤色と白色の二台陣営激突は必然

図表1 米国セクター別雇用数推移

2025年米国が世界経済の牽引車
米国の内需好調、中国からの輸入減少、ドル高等により、日本・韓国・台湾やASEAN、欧州からの対米輸出は増加、中国に代わり米国牽引の世界経済回復の年となるかもしれない。

戦略と立ち位置が定まっているのは米国、日本
国際政治を概観すると日本の立ち位置は恵まれている。混迷を深める欧州、中国・韓国、ミスジャッジしかねないBRICS諸国・ラテンアメリカ・アフリカ諸国に対して日本の立ち位置は明確かつ好ましいものである。つまり、中国やロシア、北朝鮮、イランなど専制国家に対する厳しいタンス、DEI(多様性、均等性、包括性)やPC(ポリティカル・コレクトネス)など、経済合理性を否定する心情の影響の小ささ、安倍・岸田政権から踏襲されているより透明で自由な金融を推進する「新しい資本主義」路線、等日本の政策のフレームワークは、グローバル投資家にとって納得性のあるものである。
 
➡️ 日本の優位は、ドルの崩壊で超円高となる、2046年USA崩壊前後は前回の1ドル=76円の倍近い円高となり、第二次産業空洞化が始まる、移転先を選びましょう。

(2) トランプが米国資本主義を蘇生させる
 
➡️ 年寄りの冷や水

格差分断の下で資本主義強化を支持する米国世論
格差・分断と言う現実は他の国では容易に反資本主義・反市場経済、社会主義礼賛に繋がるが、米国ではむしろ市場と資本主義を強化する路線に収斂したことは、注目に値する。AI革命は劇的な生産性の向上により企業部門(特にマグニフィセント7などの巨大ハイテク企業)に著しい超過利潤=過剰貯蓄を与える一方、労働者への分配が滞り格差を拡大させるという問題を引き起こした。

この企業部門に蓄積されている超過利潤をいかに経済システムに還流させ、成長(=新規需要と雇用創造)につなげるかが、米国経済が直面する最重要の課題である。図表1に見るように、企業の内部資金(純利益+減価償却費)は、1960年代から1990年代まで、GDPの10〜12%で推移していた。それが、最近では14〜16%で推移するようになっている。他方企業の設備投資は長期にわたってGDP比10%程度推移しており、企業部門の資金余剰が顕著になっている。この企業余剰をどう再分配し新規需要と雇用につなげるのか。
➡️ 誰が大統領になっても、貧富の差を拡大する資本主義体制の
  矛盾は変わらず、ひたすら内戦内乱・体制崩壊へと時は進む

図表2潤沢化する米国企業(非金融)の内部資金(純利益+償却費)対GDP

潤沢な企業利益の還流、政府がやるか市場に任せるか
その経路としては、1)政府による企業・富裕者増税と社会的弱者に対する財政支援、2)株式・資本市場を通した企業の利益還元、3)強制的賃金引上げ、労働分配率引き上げ、の3つが考えられ、1)、3)は政府による介入、2)は市場経済を通した再配分と整理できる。先の米国大統領選挙での明確な論点は、ハリス・民主党の「大きな政府・弱者優遇論による増税路線」と、トランプ・共和党の「小さな政府・アントレプレーナー支援論に基づく減税路線」の対立であり、まさにこの核心を巡っての国民選択を問うものであった。そしてトランプ・共和党の勝利により米国の方向性は定まった。
 
➡️ 歴史の法則=歴史の流れ・体制の崩壊を我々は
   変えることは出来ない。

AI技術の実装に先行する
トランプ氏はイーロン・マスク氏を政府効率化省DOGE(Department of Government Efficiency)トップに指名した。DOGEは組織も建物もないが、マスク氏は既存の行政組織OMB(行政管理予算局)を采配することで、行政の効率化と予算削減を行う、と報道されている。マスク氏は2022年にツイッターを買収し、従業員を8割削減するという大ナタをふるった。またロケット打ち上げ企業スペースXはロケット打ち上げコストを8割削減し、契約を勝ち取った。それらは労働強化ではなく業務の効率化と新技術の活用によって実現した。マスク氏は同様のことは、行政機構においても可能である、と考えているのであろう。
➡️ 弱肉強食と私有財産のシステムは、最後は共食いを生み、
  自ら崩壊してゆく=自己組織化現象

AIの進歩は驚異的であり、我々が最新の技術を装備すれば、信じがたい効率化が可能になる。それを阻んでいるのは旧来の既得権益と慣習である。既得権益には、人権、マイノリティ保護、等リベラルの衣を着ている主体も含まれている。DEI(多様性・均等性・包摂性)という口実そのものも、経済発展の阻害要因になっているという認識である。
 
➡️ 左右の矛盾と対立が時代を動かす、絶対優位の存在はない

現状においてすら、規制が少なく、労働と資本が流動的で最もイノベティブな米国が、一段と効率化するなら、それは競争相手にとって恐るべきことである。トランプ氏とマスク氏がこれほどまでに規制緩和と既得権益の打破にこだわる背景には、十分な技術的・経済的正当性がある、と言ってよいであろう。

既得権排除、徹底した規制緩和、究極の自由主義
トランプ氏、マスク氏が共有する徹底した反権威主義、自立自尊の開拓者精神は米国の歴史上度々登場し、経済社会の舵をきってきた、と言われている。1820年代のA・ジャクソン大統領、1980年のR・レーガン大統領などはその代表例であろう。彼らはリアリストであり、力の信奉者でもあった(森本あんり「反知性主義」2015新潮選書)。
 
➡️ これらの資本主義の仕組みが絶対貧困を生み貧富を拡大して、
  体制崩壊を促進するのです。

このように整理すると、トランプ・マスク氏の経済革命は左右両極が非難する新自由主義どころが、もっと激しい究極の自由主義(=リバタリアニズム)であり、大きな思想革命を伴っていることに気づかされる。それは市場と資本主義に対する強い信頼に起因している。AI革命はコストの透明性を大きく高め、市場機能を効率化した。いわば「神の見えざる手」を著しく強化した。それがトランプ・マスク流の究極のリバタリアニズムを正当化している。
 
➡️ 自ら崖の淵に向かっているのが解らない・共産主義の対極の理論

(3) 米国覇権の再構築に与力する日本

第三の開国、米国の世界秩序再構築の支柱に
近代日本の興隆は常に米国とともにあった。黒船による第一の開国、敗戦による第二の開国、そして今第三の開国が米国流株式資本主義の受容として、実現しようとしている。
 
➡️ USA崩壊後は、資本主義の名主は日本

近現代の日本の世界史的役割は、西欧民主主義と資本主義の世界伝播の懸け橋になったことにある。非西洋で近代資本主義と民主主義を土着化させ発展させたのは日本だけである。また非西洋で近代化と工業化を発展させ国民の生活水準を先進国の域にまで高めたのは韓国・台湾・中国(香港)の東アジア3か国だけであるが、韓台中の発展は日本の経済発展モデルをほぼ模倣・踏襲したものであった。韓国・台湾・中国(香港)の東アジア3か国は、移植した市場経済の基盤の上で、米国・先進国からの技術導入と米国市場でのシェア獲得により飛躍的経済成長を実現した。

日中で対極にある対米姿勢、どちらが吉か
起点は1971年のニクソンショックにある。ドルが金の縛りを脱したことにより、米国は対外債務を急増させ、まず日本からそして最後には中国から巨額の輸入を行った。1980〜90年代に日本が対米輸出で経済飛躍を遂げ、1990〜2000年代には韓国、台湾、香港などのアジアNIESが離陸し、2000年代以降中国経済が高成長を遂げたが、その起点はドルの散布にあったと言える。中国が世界の製造業生産の4割弱、PC、スマートフォンなどハイテク製品や、ソーラパネル、EVなどのクリーンエネルギー分野では8〜6割と言う高シェアを獲得するというオーバープレゼンスはまさしくニクソンショックの賜物であった。
➡️ ニクソンショックは終わっていない、第二波第三波がやってくる

米国は東アジア諸国の発展を支えたが、それが脅威となり敵対者と認識すると手のひらを反す。まず産業競争力を飛躍的に高めた日本を米国産業の土台を壊す相手と認識し、強烈な日本たたきを展開した。貿易摩擦、超円高、構造協議と言う口実による内政への関与等で日本を縛り上げた。そして今、米国覇権に対する挑戦の意志をあからさまにした中国に対して、激しい制裁を課し始めている。

ここにおいて同じ経路で発展してきた日本と中国の間に、決定的相違が生じた。軍事的に従属している日本は、米国に屈服したが、中国は米国への対抗心を強めて意気盛んである。中国の方にこの話をすると、溜飲を下げる表情を見せるが、米国は甘くはない。

日本の米国要求の受容は正解だった
米国流のビジネスモデルを受け入れた日本の対応は正しかった。失われた30年の間に、日本は米国の価値観とビジネス慣習に大きくすり寄り、好ましいビジネスパートナーに変わった。

この米国への譲歩は、日本における企業のガバナンス改革に帰結し、これからの日本株高、株式資本主義の繁栄を準備しているように見える。既得権益が強固な日本においてガバナンス改革が成就し得たのは、米国の外圧が重要であった。

他方中国は勝ち目のない相手を敵視することで、国の選択を誤ろうとしている。日本は米国の世界秩序再構築の共同遂行者の役割を淡々とこなすことで国運の隆盛に繋がる。
➡️ 体制が異なるので、当然である。日本はG7の資本主義国家、
  中共は共産主義国家。世界は中共の擬態資本主義の騙されて、
    技術・人材・資本を奪われたのです。

(4) 2025年日本復活のKey Ward、産業ルネサンスとBarbarian at the Gate

遅れていたJカーブ効果の発現、実質賃金上昇により内需の拡大循環始まる
2025年に繰り延べられていた円安によるJカーブ効果のプラス面が発現することは確実である。日本の工業基盤が衰弱してしまって円安による生産回復に時間がかかった事、インフレによる実質所得減のリカバリーに時間がかかった事等から、円安のプラス効果発現までのタイムラグがずいぶん長くなったが、ここからは期待できる。
➡️ 次に来るのは、トランプショック=ニクソンショック第二弾

2025年も2年連続の5%賃上げが続き、実質賃金は2%を超えるプラスに浮上していくだろう。国民民主党の頑張りによる恒久減税の寄与も期待でき実質消費は1〜2%のプラスに浮上するだろう。すでに円安のメリットはインフレによる名目成長率の急伸、海外所得の増加となって企業収益と税収増加に結び付いている。この企業利益と税収増加を家計に還流させる上で、石破自民党の少数与党化は、恒久減税を主張する国民民主党に譲歩せざるを得ず、むしろプラスになっている。来年の参院選を睨めば、恒久減税が目玉政策として飛び出すかもしれず、それは株価の好材料である。

産業ルネサンス・・・米国の対中封じ込め、日米半導体協力で流れが変わった

2025年はTSMCの熊本工場の稼働が始まり、日本の産業拠点としての根源的強さが再評価される元年となるだろう。日本の産業基盤の素晴らしさに驚愕したTSMC創業者のモーリスチャン氏に見られるように、日本の生産拠点としての圧倒的強さを思い知らせる事柄が、これから続出するだろう。世界の最先端半導体を一手に供給しているTSMCはその全てを台湾で生産しているが、それは需要者にとって大きな地政学的リスクである。TSMCは台湾以外の重要供給拠点として日本に注力していくだろう。熊本(JASM)1、2期に続き、第三期の最先端工場建設が検討されている。北海道千歳のラピタスや海外半導体企業の研究所創設など、日本において過去30年間で初めて、設備投資が引き起こす好循環が起きている。これらの半導体プロジェクトは全て米中対立の下で、米国が経済安全保障上、日本に協力を求めたことが起点となったものであり、失敗するという結論はない。つまり成功するまで国は資金を出し続けるのである。国による巨額の半導体支援を批判し小馬鹿にする論者が少なくないが、その様な人々は経済安全保障の深刻さを理解していない。

図表3はハーバード大学が作成している「世界の経済複雑性ランキング」(ECI)であるが、日本が一貫して世界のナンバーワンであることに、注目するべきである。このランキングは、世界各国の輸出データに基づき、(1)輸出品の複雑性と多様性、及び(2)偏在性(独占度)を評価し、順位付けしたものである。複雑性が高いほど高付加価値産業を有し、産業の多様化が進み、世界市場での独占度が高いことを示している(カリフォルニア大学サンディエゴ校ウリケ・シェーデ教授著「シン・日本の経営〜悲観バイアスを排す〜」日経BPで紹介されている)。

スマートフォンを例にとると、スマートフォン完成品の組み立ては規模は大きいが工程そのものは単純である。他方材料や部品、製造機械はそれぞれが固有の工程と技術的ブラックボックスを持っている。この複雑性ランキングでは、固有の工程数とブラックボックス部分が大きい方がランクが高くなる。日本はスマホの生産シェアは低いが、スマホの最終完成品に至る必要技術を世界で一番多く備えていると言える。その基礎力は、日本に生産回帰を進めるうえで大きな力になる。
➡️ 今から100年は日本の時代

図表3 経済の複雑性・世界ランキング(ハーバード大学)

国際的ビジネスマンにとっては、(突出した異能はいないが)日本の労働力の均質性、レベルの高さ、労働に対する誠実性が抜きんでていることは、常識である。今さらではあるがそれがOECDによる成人力調査によって明らかにされた。2023年の調査によると日本人の成人力は、調査3項目のうち読解力、数的思考力でフィンランドに次ぎ第2位、問題解決能力でフィンランドとともに第1位、と発表された(図表5)。これらのビジネス拠点としての日本の優位性は、同時に半導体工場の建設が進む米国やドイツなどとの比較において、際立っていくだろう。日本が先端産業の世界的製造拠点として復活することは明らかである。日本の産業ルネッサンスはすぐそこに来ている。

買収ブームが引き起こす株式資本主義時代

AI革命など歴史的技術発展の時代に、企業収益が高まり、企業部門に過剰利益が蓄積されることが常態化している。この企業利益を経済システムに還流させる上で、米国で定着した株式資本主義が大きな役割を果たした。ベンチャーに巨額の投資資金が集まるエコシステムは米国経済長期繁栄と長期株高の原動力であった。

米国の株式資本主義は、1)金融の効率性=適切な資源配分、2)技術の米国への集積、ハイテクエコシステムの形成、3)成果の大衆(有権者)への還元、として確立し、トランプ次期政権の政策プラットフォームとしても認識されている。

この株式資本主義の出発点が1988年のKKRによるRJRナビスコ買収に象徴される米国の買収ブームであった(図表4参照)。それは2000年のドットコムバブル形成に向かう株高を準備したが、今の日本に同様の動きが起きている。東証・金融庁によるPBR1倍以下の企業の是正要求、日経新聞私の履歴書へのKKR創業者ヘンリー・クラビス氏(30年前は米国でも野蛮人と言われていた)の登場など、日本の政策と企業社会のM&A受容姿勢への変化は驚くばかりである。カナダ企業であるアリマンタシフォン・クシュタール(ACT)によるセブン&アイの買収提案は、資本の効率性をないがしろにし、低株価を放置してきた日本の株式市場に大きく活を入れるものになるだろう。日産・ホンダの経営統合も台湾メーカーの鴻海による日産買収意向が伏線となっている。またニデックが工作機械の老舗牧野フライスに対するTOBを発表したが、創業者の永守氏は「中国の脅威の前に時間はかけられない」との弁を述べた。日本は米国が進む株式資本主義に急速にシフトしている。それは海外投資家の日本株買い、企業による自社株買いを通して、異常に割安だった日本株のバリュエーション革命を推進するだろう。

図表4NYダウ長期トレンドとBarbarian at the Gate

図表5 OECD国際成人力調査、分野別ランキング(2023年調査) 日経12/10/24 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 明けましておめでとう御座い... | トップ | 民主主義という名の左翼独裁... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

第三次大戦」カテゴリの最新記事