フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

5月5日(火) 曇り

2020-05-06 11:52:46 | Weblog

8時半、起床。

コンビーフトースト、ハム&エッグ、サラダ、牛乳、紅茶の朝食。

正確には「コンビーフ」はなく「コンミート」である(そう缶に表記されている)。牛肉100%ではなく馬肉も入っているのである。私の知っている「コンビーフ」とは違う味である。

パンをもう一枚トーストして、あんバターを塗って食べる(缶詰のあんこを使って)。

Windows10に付いているボイスレコーダーで録音した講義(音声)のファイルをムードルの動画でアップしようとすると(音声も動画の一種である)、うなくいかないので、どうしてかと思ったら、ファイルの形式が.m4aで、ムードルの動画はそれに対応していないことに気づく。スマホのボイスレコーダーなら.mp3形式になるのだが、音質がいまひとつ。.m4aでも資料としてならアップできるから、容量は大したことはないので(1ファイルあたり19MB)、ストリーミング方式ではなく、ダウンロード方式で聴いてもらおうかと(いったんダウンロードしたらオフラインで聴ける)。ファイルは保存してもらってもいいし、聴き終ったら削除してもらってもいい。

昼食は蕎麦。

GW中の午後3時からはオンライカフェタイムになっている。しばらく会っていない人ばかりで、今日のゲストは卒業生のタエコさん(論系ゼミ3.5期生)。「3.5期生」と呼ぶのはゼミに入ってきたときは3期生だったが、途中で1年留学して、4期生として卒業したからである。彼女と前回会ったのは一昨年の8月だったから(そのとき3期生のユキさんと一緒だった)、1年9か月ぶりである。お元気でしたか? 

彼女は芸能事務所に勤めていて、韓国のアイドルグループの日本での活動を担当している。コロナ騒動で、コンサートなどは延期・中止となっているが、レコーディングなどは(韓国では)進行しているので、オンラインで現場(スタジオ)に参加しているそうだ。日本と韓国の行き来は可能だが、行ったときに2週間の待機、帰ってきたときに2週間の待機が必要で、それでは仕事にならないから、オンラインでやる方がよいのだ。

普段は一人暮らしだが、つい先日、お父様のお誕生祝いで実家に戻ってきて、GW中は実家にステイホームだそうだ。実家に彼女の個室はないので、オンラインカフェは居間でやっているそうで、近くにお母様がいらっしゃるそうだ(お父様は別室)。彼女のご両親は銀座で高級焼き肉店をされていて(現在は臨時休業中)、4期生が卒業したときはお店でパーティーをさせていただいた(格安で!)。その節はありがとうございました。一方、私のいる書斎にも妻がいて、パソコンで仕事をしている(アクセサリーのキッドを生徒さんたちに通信販売しているのだ)。本日のオンラインカフェは公開生放送のようである(笑)。

下の写真はお母様に撮っていただいたもの。

少し時間をおいて(食事の後)、もう一枚送ってきてくれた写真がこちら。お色直しをされたようですね(笑)。でも、これ、さきほどの写真とは左右が反転してませんか(間取りや髪の分け目が逆です)。どちらが正しいのだろう。

いまは在宅勤務だが、普段は住まいと職場をレンタル自転車(かなり普及してきたみたいである)で往復しているそうだ。片道15分とか。地下鉄を使う半分の時間しかかからないそうだ。都会的なライフスタイルですね。コロナ騒動が落ち着いたら、リアルカフェをいたしましょう。どうぞお元気で。

閉店時刻(午後5時)5分前に「ルージュ・ブランシュ」にお菓子を買いに行く。モンブランやロールケーキなどは完売で、焼き菓子(フィナンシェ)を4個購入。でも、厨房ではまだケーキを作っている。今日は「子どもの日」ということでケーキの予約がたくさんあるのだそうだ。

りそな銀行の前の交差点(正面の道の先には蒲田の駅ビルが見える)。

帰りに「ティースプーン」の前を通ったら、来週から木曜日だけテイクアウトを再開することにしますと貼紙が出ていた。お店は閉まっていたが、シマダさんは中で通販の作業をされていたようで、ちょうど店外に出て来られたので、少し立ち話をした。

緊急事態宣言の期間の延長(および対象地域の拡大)が決まったが、臨時休業中の商店は単純に休業延長というわけにはいかないだろう。苦しい生存戦略を迫られることになる。

曇り日は暗くなるのが早い。雨戸を閉めよう。

夕食は冷豚シャブ、冷奴、漬物(柚子大根)、茄子の味噌汁、ごはん。

冷豚シャブにはポン酢をかけて。肉の下には玉ねぎが敷いてある。

深夜、ちょっと強めの地震があった。揺れも長かった。スマホがピーピーと鳴り、大田区は震度4とのことだった。テレビを点けたら震源地は千葉北西部で同じく震度4とのこと。この時期に大きな地震だけは勘弁してほしい。

3時、就寝。


5月4日(月)雨のち曇り

2020-05-05 12:44:28 | Weblog

8時半、起床。

トースト、ベーコン&エッグ(付け合せはスナップエンドウ)、サラダ、牛乳、紅茶の朝食。

アマゾンで注文したコピー用紙が届いた。A4判が500枚で一包み、それが5包みで一箱、2000円である。これまでであれば自転車で池上のホームセンターまで行って買っていたものである。即日で購入できたものが一日、二日かかるという時間的遅れはあるが、ホームセンターの往復の時間や労力は節約できる。価格は、紙の値段はメーカーによって幅があるので、厳密な比較はできないが、ホームセンターの方が安いように思う。コロナ的日常でネット購入が増えるのは当然だが、ポスト・コロナの日常でもそれが持続・定着するのではなかろうか。

昼食は牛肉の大和煮の缶詰をおかずにご飯を食べようと思ったら、家に牛肉の大和煮の缶詰はなかった。「マイバスケット」に買いに行ったら置いてなかった。「セブンイレブン」にもなかった。あるのは圧倒的に魚肉の缶詰で、あとは鶏肉が(焼鳥の缶詰も含めて)ちょっとあるくらい。妻に言ったら「牛肉の缶詰は高いからじゃない」と。そうなのかな。

「セブンイレブン」でレトルトの豚の角煮を買ってきて、角煮丼の昼食。

食事をしながらテレビを観ていたら、「新しい生活様式」という提言がコロナ対策の専門家会議から出るという話題をやっていた。「生活様式」とは「ライフスタイル」ということであるが、箇条書きされたものを見る限り、「生活習慣」と呼ぶべきもので、「生活様式」というほどのものではない。でも、ポスト・コロナの「生活様式」(ライフスタイル)がコロナ以前の「生活様式」と違ったものになるのは確実だろう。週休の日数は同じでも出勤日は減るだろう。日頃よく顔を合わせている人との社交だけでなく、遠距離の人とのオンライン社交が増えるだろう。マスクは花粉症の人だけのものではなくなるだろう。「行列のできる店」を人は避けるようになるだろう。論文指導は研究室ではなくオンラインで行うのが主流になるだろう。

午後3時から卒業生のユカさん(論系ゼミ6期生)とオンラインカフェ。彼女は全国紙の記者をしていて、卒業以来、高知支局で働いている。ゼミ同期で先日オンラインカフェをしたしたセツカさんも新聞記者で金沢支局で働いている。6期生には公務員も多く(都庁・区役所・市役所)、他の代と比べて公的な職業に付いている人が多いという特徴がある。

記者という仕事柄、外出することは多いが、それでも以前に比べればずいぶんと減っているそうだ。ドライブが趣味だが、それも控えるようになったという。外出してお金を使う機会は減ったが、決して貯金が増えたわけではないのは、通販での買い物が増えたからだ。買い物にはストレス発散の効用がある。先日も任天堂スイッチを苦労して入手したそうだ(当然、定価より高かった)。「集まれ動物の森」を始めたわけだが、どういうゲームなのかを詳しく聞いた。無人島での生活。自分の思い描く生活を実現していく過程が楽しいのだろうと思うが、このゲームにはゴール(完成形)というものがないようだ。あたかもガウディのサクラダファミリアのように不断の工事を続けるのだ。狸の不動産から借金をして家を大きくするというのは中心的なテーマのようで、それは戦後日本人の生き方に似ているが、結婚や子供をもつというライフイベントはなく(人間は自分ひとりだけ)、マイホーム=家族の物語の舞台ではないところは違う。個人化された人生の物語だ。しかし動物たちは擬人化されており(人間の言葉を理解する)、彼らとの交流は重要なテーマになっている。個人化してはいても、決して孤立しているわけではないのだ。ふ~む、そういうことね。

彼女は今年の初めから日記(ほぼ日手帳オリジナル)を付け始めたのだが、コロナ的日常になってから日記をつけることが(内容が)楽しくなくなってきて、停滞しているそうだ。それではということで、私のほぼ日手帳カズン(10年続いている)を見せながら、日記を持続する方法(および目的)についてレクチャーした。「お話を聞いてやる気がでました」と彼女は言った。もともと向上心の強い人だから話は早い。

高知での生活も今年で5年目。暮らしやすい街だという。私は一度行ったことがあるだけだが、そうだろうなと思う。気候はいいし、鰹のタタキが美味しい。でも、そろそろ転勤だろう。通例、次はもっと大きな都市、東京か大阪だろうか。東京なら(そしてそのときコロナが終息していたなら)リアルカフェをしましょう。大阪ならオンラインカフェですね。どうぞお元気で。

妻が買って来た「ヴィ・ド・フランス」の食パン。「かまた」の焼印が押されている。

スライスして冷凍する。

アマゾンから注文していた本が届いた。妻も私以上にアマゾンを利用しているので、一日何回も宅配がある。

 村上春樹の新作『猫を捨てる 父親について語るとき』(文藝春秋)

 『文藝春秋』2019年6月号に掲載されたエッセーを単独で本にしたもので、小型で薄い本である。テーマも挿絵の雰囲気もこれまでの彼のものとは違う。

「亡くなった父親のことはいつか、まとまったかたちで文章にしなくてはならないと、前々から思ってはいたのだが、なかなか取りかかれないまま歳月が過ぎていった。」(「あとがき」から)

「僕がこの文章で書きたかったことのひとつは、戦争というものが一人の人間――ごく当たり前の名もなき市民だ――の生き方や精神をどれほど大きく深く変えてしまえるかということだ。そしてその結果、僕がこうしてここにいる。」(同)

「短い文章なので、どのような形にして出版すればいいのか、じぶん迷ったのだが、結局独立した一冊の小さな本として、イラストレーションをつけて出版することに決めた。内容や文章のトーンなどからして、僕の書いた他の文章と組み合わせることがなかなか難しかったからだ。絵に関しては、台湾出身の若い女性イラストレーターである高研さんの画風に心惹かれ、彼女にすべを任せることにした。彼女の絵にはどこかしら、不思議な懐かしさのようなものが感じられる。」(同)

宅配便を受け取るとき玄関先の薔薇の花の匂いがずいぶんんと強くなったなと感じた。

夕食はシシャモ、甘唐辛子と厚揚げの煮物、冷奴+なめこ、ワカメの味噌汁、ごはん。

デザートは苺。

食事をしながら中村昌也主演の『美食探偵明智五郎』第三話(録画)を観る。毎回殺人事件が起きるのだが、今回はかなり凄惨だった。

深夜、近所をウォーキング&ジョギング(4キロほど)。

今日は演習「現代人と社交」の受講生(35名)に授業の進め方について説明したメールを送った。メールを受信したらその旨返信を求めたが、一日でほとんどの学生から返信があった。さすがにワセダメールを使いなれている2年生以上である。一方、「必修基礎演習」の1年生からの返信が滞っている。丸4日が経過したが、まだ8名(26名中)の学生から返信がない。「メールを開くように」とメールをすることができないのが困りものである。

2時半、就寝。


5月3日(日)晴れ

2020-05-04 11:56:00 | Weblog

10時、起床。

トースト、ハム&エッグ、サラダ、牛乳、紅茶の朝食。

昨日の句会のブログを書いてアップする。

昼食は鮪の中落ちご飯。海苔を千切って、醤油をかけて食べる。

3時から卒業生のレイナさん(論系ゼミ6期生)とオンラインカフェ。リアルカフェでお会いしてのはかれこれ1年2カ月ほど前になる。去年の6月にカフェの約束をしていたのだが、彼女が体調を崩してしまい、それっきりになっていた。今日は最初にそのことを尋ねたが、体調は完全に回復したそうである。それはよかった。

彼女は都庁の職員をしていて、3月までオリンピック関連の部署にいたのだが、オリンピックが来年に延期になり、4月から保健所に出向になっている。まさにコロナ対策の最前線の一画である。彼女に限らず、公務員の方は在宅勤務というものが少なく、連日出勤されているのである。ご苦労様です。

1年2カ月ぶりなので、仕事の事やプライベートなこと、そして世の中全体のこと、話すことはたくさんあった。この間の大きな出来事としては昨年11月に研修で一週間ニューヨークに行ったこと。そこで彼女は、アメリカ人の間では普通に見られ日本人の間ではあまり見られない「寄付」という行為について調べレポートにまとめた(取材もレポートももちろんすべて英語で行った)。そのレポートの内容(要旨)について話を聞いた。ゼミみたいだった。

彼女と私には一つ共通点がある。夜更かしということだ。昨日、私は午前3時に寝たが、彼女は午前2時だったという。それは今日が休日だからではなく、平日でもそうななのだという(繰り返すが彼女は在宅勤務ではない)。彼女は実家暮らしだが、家族みんなが夜更かしなのだそうだ。12時前に寝るなんて考えられないそうだ。「でも、それだと昼間、仕事中に眠くならない?」と私が聞いたら、「はい、眠くなります」と彼女は明るく答えた。ダメじゃん(笑)。ちなみに私の場合は昼寝をする(横にはならず椅子に座ったまま眠る)。

彼女は手元に紅茶とお手製のケーキ(ホットケーキミックスを炊飯器を使って蒸かしたもの)を用意していた。それ、まさか一人で全部食べるんじゃないだろうなと思ったが、オンラインカフェの間に半分ほど食べてしまったのには驚いた。もしかして昼食を兼ねていたのかしら(上の写真はオンラインカフェが終了してから、自撮りしたものを送ってもらった)。

レイナさんとオンラインカフェをしている間に彼女とゼミが同期だったアヤナさんからLINEのメッセージが届いた。結婚の報告だった。

 「LINEでの報告になってしまい恐縮なのですが、今年の2月に大学時代からお付き合いしていた方と結婚しました。仕事が落ち着いたら、大久保先生をカフェに誘って結婚のことをお伝えしよう…などと流暢に考えていたらコロナでそれどころでなくなり、ご報告が遅くなってしまいました💦コロナが落ち着いた頃、ゆっくりカフェにご一緒できるのを楽しみにしています。」

おめでとう、アヤナさん。ちなみに彼は身長183センチで、彼女とは30センチの差がある。一種の格差婚である(笑)。そうやって格差が解消(相殺)されていくのも一種の社会的法則なのかもしれない。どうぞお幸せに!

入籍された2月11日は「パン日和あをや」の開店記念日でもあります。コロナ終息後のリアルカフェは「パン日和あをや」にしましょうか。

今日は曇り日。日没までにはまだ少し時間があるが、すでに薄暗くなっている。

夕食は野菜炒め(人参、スナップエンドウ、エリンギ、茄子)、蓮根と挽肉のピリ辛炒め、味噌汁、ごはん。

食事をしながらWOWOWドラマ『鉄の骨』第二話(録画)を観る。原作は池井戸潤、主演は神木隆之介。柴田恭平や内野聖陽といった渋い俳優が脇を固める。

今夜はウォーキング&ジョギングの日ではないが(一日おき)、妻がウォーキングをするので、付き合ってウォーキングをする(3キロほど)。ウォーキングだけだと汗をかくまではいかない。昨夜、ウォーキング&ジョギングをしていたときに一緒になった中国人の女性3人組が今日もジョギングをしていた。彼女たちはなぜか専門学校のキャンパスの周囲を右回りで回っている。左回りが普通だと思うのだが(トラック競技でそうだ)、たぶんそれは右利きの人間(=左足が軸足になる)が多数派を占めているためだと思うが、彼女たち三人のリーダー格の人が左利きなのかもしれない。あるいは、もしかして、中国では右回りが一般的なのかしら。

2時半、就寝。


5月2日(土) 晴れ

2020-05-03 19:15:25 | Weblog

9時半、起床。

トースト、サラダ、牛乳、紅茶の朝食。

昨日、「檍」の上ロースカツ弁当を食べたので(肉は200g)、今朝はハム&エッグは控えた。

卒業研究を担当している学生にメールを送る。文化構想学部の学生は、ゼミに所属していればゼミ論を書くが、ゼミに所属していない学生は卒業研究で論文を書く。私はゼミ論の他に卒業研究の論文指導も担当しているのだ。

昼食はカップ麺を書斎で食べる。なぜ書斎なのかというと、間もなくオンライン句会が始まるのだ。

2時からオンライン(zoom)句会。参加者は、紀本直美さん(主宰)、渺さん、月白さん、まゆこさん、恵美子さん、あゆみさん、立夏さん、私、そして見学のさの字さん。ZoomではなくLINEでの参加(事前に選句をすませている)は、蚕豆さん、こかよさん(句会が終わってからになったが、花さんも)。スタート時にちょっと手間取ったが、無事スタートできた。

今回は33句(11名×3句)である。

パッとみて、当然のことながら、コロナの時代の日常を詠んだ句が多い。

直美さんが全作品を読み上げた後、選句タイムに入る。

私は次の5句を選んだ。

天 すてきなパジャマ売れている四月尽

あっという間に過ぎた今年の4月。いつもとは全然違う春だった。萩原朔太郎は「ふらんすへ行きたしと思へどもふらんすはあまりに遠し せめては新しき背広をきてきままなる旅にいでてみん」と詠ったが、「不要不急の外出自粛」の下では旅に出ることも叶わない。せめては素敵なパジャマを着て、きままなる旅の夢でも見てみたい。もっとも作者はパジャマが売れているという世情を詠んではいるが、自分は買ってはいないようだ。あくまでも観察者の視点だ。上四・中八の型にとらわれない詠み方と、下五の「四月尽」(しがつじん)という俳句独自の言葉のチョイスがちょっとアンバランスで、それが不思議な魅力になっている。

地 眼裏(まなうら)に花の別れを塗りこめぬ

花(桜)は来年も咲きますからと高名な科学者が言った。違う、と私は思う。今年の花は今年だけのものである。来年咲く花は来年だけのものである。人生の或る一日、人生の或る一年が、そのときだけのものであるように。この句の作者はそのことを知っている。だから瞼の裏にその姿を焼き付けるのだ。瞼の裏という代わりに「眼裏」という言葉を使い、焼き付けるという代わりに「塗り込めぬ」という言葉を使うところが、独特である。凡庸を嫌う人なのだろう。

地 纏足(てんそく)を外せ心の風光る

閉塞感に覆われた日常からの脱出を呼びかける句。「足かせ」といえば平凡だが「纏足」といわれるとドキッとする。その効果を狙ったことは明らかだが、「心の風光る」は少々気恥ずかしい。女子高の校歌みたいで(笑)。

人 蚊柱にぶつかりて離別を決す

男と別れようかどうしようか考えながら歩いていて、蚊柱に気付かず、顔を突っ込んでしまった。うわっ、やだやだ、もうやだ、と別れることを決意する。そういう句であろう。これが茶柱だったら、別れなかったかもしれない(笑)。「離別を決す」という大袈裟な表現が工夫したところ。「蚊柱」とのギャップが面白い。

人 片陰り耳打ちをした海の秘密

「片陰り」(かたかげり)は夏の季語。南北方向に続く道を陽が傾くころに歩くと、道の西側は建物の陰になり、東側は陽が当っている。だから神保町の古本屋は西側に軒を連ねている。この句は物語性に富んでいて、とても魅力的である。ただ、あれこれ詰め込み過ぎだし、もったいぶったところもある。もう少し推敲したら、天を付けたい句になりそうな気がする。たとえば「耳打ちの海辺の街は片陰り」とか、「片陰り海辺の秘密語りけり」とか。う~ん、夏井先生のような「劇的添削」とはいかないな。これでは地までは行っても、天には届かない。本人にやっていただくしかない。

全員の選句と披露が終わり、集計結果は以下のとおり。感想を述べ合ったあとに作者が明らかにされる。

16点 藤の下で房の長さを昼寝せん 渺

今回の特選句は渺さん。恵美子さんとあゆみさんが天、月白さんとまゆこさんが地を付けた。「房の長さを昼寝せん」という表現が斬新で評価された。「藤」が春の季語で「昼寝」は夏の季語であることは話題にならなかった。「たかじさんはどうですか?」と司会(直美さん)に聞かれたので、選ばなかった理由を述べた。「ちょっと長めの昼寝という意味でしょうが、理屈っぽい感じがして」。これは完全に私の好みの問題で、理屈っぽいもの、感情過多のものは採らない傾向がある。漱石が『草枕』に書いている。「知に働けば角が立つ、情に掉させば流される」と。でも「意地を通せば窮屈だ」とも書いているから、そういう方針(写生主義)もときに曲げることも必要かもしれない。「房の長さの」ではなく「房の長さを」としたところが「を」で時間の「長さ」ではなく「経過」を表現して的確。

15点 眉頭しっかり描き風五月 月白

まゆこさんが天、こかよさん、恵美子さん、あゆみさんが地、直美さんが人を付けた。マスクで顔の下半分が隠れているから、その分、眉頭はしっかりメイクをするということ。とくに仕事の出来る女(天海祐希風)を装いたいときは必須とのこと。女性陣の共感を生んだ。下五の「風五月」はちょっとメイクが雑に感じた。五月に吹く風は「薫風」とか「風薫る」という美しい季語があるのだから、それを使ったらよかったのではないかしら。

13点 生え際を交代で嗅ぐこどもの日 あゆみ

こかよさんと立夏さんが天、蚕豆さんが地を付けた。「生え際を嗅ぐ」という行為は「あるある」らしい。私はしたこともされたこともないので、実感がわかなかったが、あゆみさんが久しぶりに句会に戻って来てくれたことを喜びたい。

11点 蚊柱にぶつかりて離別を決す 恵美子

月白さんが天、立夏さんが地、蚕豆さん、あゆみさん、私が人を付けた。私の解釈(女性が彼氏との別れを考えながら一人で歩いている)とは違う人もいた。月白さんは、男女が二人で歩いていて、男が蚊柱に気付かず突っ込んでしまう。以前からダメなところのある男だと思っていた女は、それを見て、やっぱりこいつとは別れようと決めたと。すごい解釈ですね。男のことが気の毒に思えてくる(笑)。

 8点 郵便受けに満ちていく春夕焼 あゆみ

渺さんが天、立夏さんが地を付けた。ファンタジックな作品。「春夕焼郵便けに満ちていく」が普通の順序だが、「満ちていく」ものは一体何だろうと思わせておいて、下五で「春夕焼」と正体を明らかにする方が効果的。

 7点 眼裏に花の別れを塗りこめぬ 蚕豆

恵美子さんと私が地、まゆこさんが人を付けた。「眼裏」「塗りこめぬ」という表現が評価された。「マナウラって(音で聞くと)どこかの地名みたいですね」(土浦とか)と私が言ったら、「台無しですね」と恵美子さんに言われた(笑)。でも、「土浦に花の別れを惜しみけり」とかいいと思うんだけどな(戦時中、土浦海軍航空隊というのがあったことからの発想です)。

 7点 口紅を引くこともなく暮れの春 たかじ

私の句。月白さんとまゆこさんから地、蚕豆さんから人をいただいた。作者が私だと知って月白さんが「えっ~!」と声を上げた。女性の作と思い込んでいたようである。してやったり。本人ではなく、観察者の視点で詠みました。月白さんの「眉頭しっかり描く風五月」がマスクをしているが故に強調するメイクを詠んだのに対して、この句では反対に省略するメイクを詠んだ。

 6点 封鎖(とざ)されし書き割りの街路風光る 渺

直美さんが天、こかよさんが人を付けた。外出自粛で舞台芸術が公演中止を余儀なくされているが、人影の消えた街それ自体が舞台上の書き割りのように見えるという句。

 6点 纏足を外せ心の風光る 月白

渺さんと私が地を付けた。渺さんが選句の理由を述べている間、お隣にいる月白さんが画面から消えた。インサイダー疑惑をかけられないためかもしれないが、ご夫婦なのですから、ソーシャルディスタンスは不要かと(笑)。

 6点 盗蜜の味をしめたる来訪者 こかよ

蚕豆さんが天、月白さんが人を付けた。最初、「桃蜜」の間違いではと思ったが、あえての「盗蜜」だった。確信犯ですね(笑)。「いけないこと」の雰囲気が漂っている。こかよさんらしい句である。

 5点 すてきなパジャマ売れている四月尽 あゆみ

私が天を付けた。作者はあゆみさんでしたか(直美さんの可能性もあると思っていた)。以前のあゆみさんなら「四月尽」という季語は思いつかなかったのではないか。成長が感じられる(笑)。

 4点 草陰のその気配青き蜥蜴か 恵美子

蚕豆さんが地、渺さんが人を付けた。蚕豆さん好みの作であることはわかる(笑)。蜥蜴が登場する前に「その気配」と書いたところがポイントで上手いと思う。「青き」は「蒼き」もあったかと思う。その方が光沢を感じさせるから。

 4点 きりきりと身悶える夏のぶらんこ 蚕豆

こかよさんが地、まゆこさんが人を付けた。「きりきりと」というオノマトペには「冬のぶらんこ」の方がしっくるくるという意見があった。そこだけ見るとたしかにそうだが、「身悶える」とはそぐわなないのではないか。かとって「春のブランコ」では生々しすぎる(こかよさんが地ではなく天を付けるかもしれない)。やっぱり「夏のぶらんこ」でよいと思う。

 3点 生き急げ駆け抜けるもの葉桜や 立夏

渺さんが地を付けた。形式上の問題として、直美さんも指摘していたが、「や」は切れ字(流れを一旦そこで止める)なので、通常、下五には使わない(中断ではなくすでに終わっているわけだから)。「古池や」とかのように上五に使うことが多い。この句の場合も「葉桜や生き急げ駆け抜けるもの」としたらどうだろう(中七と下五は句またがりになる)。

 3点 春の月コロナの街に浮かびけり たかじ

私の句。あゆみさんから地をいただいた。「たかじさんの句だと思いました」とのこと。人気のない街。東の空の低いところに満月(スーパームーン)がぽっかりと浮かんでいる情景を写生した。村上春樹の『1Q84』で主人公の生きている世界には月が二つ浮かんでいるのであるが、われわれの生きている世界も、ついこの間までの世界とは別の世界のようである。

 3点 春来るる子どもはひとり通せんぼ 蚕豆

直美さんが地を付けた。私は一読して「来るる」は「暮るる」の誤変換だと思ったが、作者はzoomで参加していなかったので、訂正の自己申告はなく、そのままになった。直美さんがこの句を選んだのは「来る」と「通せんぼ」のコントラスが面白いと思ったのか、あるいは直美さん自身が「オンライン句会でるるる山吹の花」という投句をしていたからではないかと、縷々(るる)考えた。

 3点 宇治川に一羽の鴨が四月尽 花

直美さんが地を付けた。「一羽の鴨が」どうしたのかは書かれていない。たぶん「浮かんでる」のであろう。書くまでもないことである。「鴨」は一般には冬の季語で、別の季節の場合は、「春の鴨」とか「初鴨」(秋)と表記する。ここでは「四月尽」とセットで「春の鴨」の意味。

 2点 画面越し酔っ払いかよ苺ミルク 直美

月白さん、渺さんご夫婦が揃って人を付けた。いわゆるライン飲みである。「かよ」の文字がこかよさんの自己呈示ではないかと思ったが、直美さんの句でしたか。

 1点 片陰り耳打ちした海の秘密 立夏

私が人を付けた。作者は立夏さんでしたか。さすがに劇作家さん(感想は選句のときに述べたとおり)。

 1点 耳に風花びらに風桜草 まゆこ

あゆみさんが人を付けた。「耳に風」は普通は「頬に風」とするところ。風の歌を聴いているのだろうか。

 1点 夜と朝のあわいを蝶の飛びにけり まゆこ

恵美子さんが人を付けた。「あわい」は「間」の意味だが、夜明け前の「淡い」光も連想させて効果的。

 1点 この春は私の髪の色ピンク こかよ

恵美子さんが人を付けた。「私の髪の色ピンク」は普通は「私の髪はピンク色」とするところ。倒置することで「ピンク」が強調されている。

 1点 愛はなし暇持て余し梅雨曇り 立夏

直美さんが人を付けた。時間はあるけれど愛はない、と。お金はどうなのかしら。愛とお金と時間は近代社会の三大資源だが、三拍子揃うことはめったにない。

 1点 それなりに生き急ぎたししゃぼん玉 まゆこ

こかよさんが人を付けた。「生き急ぎたし」は願望だが、それは作者の願望なのか、擬人化されたしゃぼん玉の願望なのか。

 1点 ご無沙汰のメールしてみるシャボン玉 たかじ

私の句。立夏さんから人をいただいた。メールをするのはシャボン玉ではない。メールをしている私の傍らにシャボン玉が浮遊しているのである。「しゃぼん玉」「シャボン玉」と表記は違うが、同じ季語の句が並んだ。「石鹸玉」という表記もありえた。ここでは「メール」に合わせて片仮名表記を選んだ。

 1点 グレン・グールドのバッハ五月の過の中で 月白 

立夏さんが人を付けた。「何の曲ですか?」と聞いたら「インベンションとか」と月白さんは答えた。私は「平均律クラヴィーア曲集」を連想していた。

Zoom句会は初めての試みだったが、十分に成立することがわかった。次回の句会は7月か。おそらくZoom句会になるのではないかしら。兼題は「短夜」(みじかよ)。

プリンター用紙がなくなりそうなので、買いに出る。普段は自転車に乗って池上のホームセンターに買いに行くのだが、なんだか混んでいそうな予感がする。近くのコンビニをのぞいたが扱っていなかった。

ユザワヤの文具を扱っている7号館は閉まっていた。

サンロード商店街の中にある小さな文房店(ハンコがメインなのか)は今日は定休日。

すごすごと帰宅して、アマゾンから注文する。

ついでにマイクも注文する。「日常生活の社会学」の講義(音声)の収録用である。

夕食はアスパラのベーコン巻、薩摩揚げ、サラダ、玉子と玉ねぎの味噌汁、ごはん。

デザートは昨日「まやんち」で買ったチョコレートブラウニー。

深夜、近所をウォーキング&ジョギング(4キロほど)。4月はときに肌寒い日もあったが、この数日は初夏である。

3時、就寝。


5月1日(金)晴れ

2020-05-02 12:55:48 | Weblog

9時、起床。

今日から5月だ。書斎のカレンダーをめくる。ロブスターとレモンの輪切り・・・よほど発想を飛ばさないとついていけない。

大学の研究室で使っている卓上カレンダーも自宅に持って帰っている。花の名前はわからないが(山吹か?)、まだ初夏らしい。

トースト、ハム&エッグ、サラダ、牛乳、紅茶の朝食。

今日の朝ドラの最後の場面で志村けんが登場。小山田耕三という役名。

「日本を代表する西洋音楽の作曲家。裕一のたぐいまれな作曲の才能に気づき、コロンブスレコードに専属作曲家として推薦するが、一方で、裕一の活躍が自分の地位を脅かすのではないかと恐れている。」(『エール』HPの登場人物紹介より)そうである。山田耕作がモデルであることは明らかだ。

志村の登場はおそらく今回のみで、あとは代役になると思われる。

お八つと昼食を調達に出る。

東口方面へ。

「まやんち」(木金テイクアウトのみ営業)へ。今日はドアは開いていた。はたしてまだお菓子は残っているだろうか。

わずかだが、残っていた!

店主の八代さんとビニールシートごしにご挨拶。彼女の名前は「まや」ではなく「まゆみ」であるが、小さい頃、お祖父さんに「まーや」と呼ばれていることに由来する(記憶違いだったらごめんなさい)。

ビクトリアサンドウィッチケーキ+アッサム付(2個)、チョコレートブラウニー(2個)、アッサムティーバック(1パック)を購入。

次回来るときは、事前に電話をして、苺のロールケーキとダックワースを取り措いてもらうことにしようかしら。

「まやんち」の入っているビルの隣にとんかつの「檍(あおき」がある。蒲田のとんかつ屋のトップに位置すると評判の店だが、いつも行列ができているので、一度も入ったことがなかったが、店内での営業を止め、テイクアウトのみになった。いまのタイミングならまたずに買えそうだ。

上ロースカツ弁当(1500円)に豚汁(100円)を付けて注文。

帰宅すると、アマゾンから注文した商品が届いていた。後で開けよう。まずは昼食だ。

上ロースカツ弁当+豚汁。

とんかつソース、辛子、そして岩塩が入っている。岩塩が入っているところが、さすがに「檍」だ。

塩とレモン汁でいただく(ソースはキャベツに掛ける)。衣のサクサク感は店内で食べるときのようなわけにはいかないが、肉(200g)は実に美味しい。いつも行列を横目に諦めていた「檍」のとんかつをこうして食べることができるとは思わなかった。

アマゾンから届いたのはビーチチェアーである。

三階のベランダに持って行く。

幅はギリギリである。あらかじめ測って注文したわけでなかったので、危ないところだった。

仰向けになって空を見ながら食後の昼寝。風が気持ちいいい。風薫る季節だ。

昼寝の後は、夕食の時間までワセダムードルの説明書を読みながらオンライン授業の設定作業。目が疲れる(老眼鏡+ハズキルーペを使っている)。

講義「日常生活」は講義資料(パワポのスライドのPDF)+音声ファイルのオンデマンドでやる予定だが、聴覚に障害がある受講生もいるようなので、録音用台本(原稿)を作って別途送ることで対応することにしよう。音声を文章化してくれるソフトもあるようだが、よほど滑舌よく文節を区切り区切り話さないとダメみたいなので、普通の講義口調では難しいだろう。もし音声→文書化のソフトの性能がもっと高まったら、ライフストーリーインタビュー調査の文章化作業は格段に楽になるだろう。

夕食は焼鳥、シラスおろし、冷奴+納豆+オクラ、玉ねぎの味噌汁、ごはん。

焼鳥は手羽中(手羽先ではなく)。

デザートは「まやんち」で買ったヴィクトリアサンドウィッチケーキ。

WOWOWのドラマ『トップリーグ』の初回(録画)を観る。WOWOWのドラマは早い段階から制作されているので、おそろく最終回までちゃんと観られるはずである。

昨夜、私が担任の「必修基礎演習」(新入生26名)に一斉メールを送り、「このメールを受信したらその旨返信して下さい」と伝えたが、今夜までに返信があったのは10名。半分まで行っていない。まだワセダメールをチェックする習慣ができていないのだろう(自分がよく使っているメルアドへの転送設定もできるはず)。全科目がオンライン授業となるわけだから、メールチェックは頻繁にしてほしい。一種のライフラインである。

2時、就寝。