フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

5月30日(土) 晴れ

2015-05-31 11:09:14 | Weblog

6時半、起床。

よく晴れた空だ。

鉢植えの草木に水をやる。紫陽花が咲きはじめた。

ハムトーストと紅茶の朝食。

食後に桜ん坊を摘まむ。

長田弘がなくなった日にネットで注文した『長田弘全詩集』が届いた。ある時期からの彼の詩集はすべて単行本でもっているが、初期の詩集はこの「全詩集」で初めて知った。

  夏のサーカスのように、

  ぼくたちの青春は 不毛な土地を

  巡業して廻っているのだろうか。

  ぼくたちは、きっといま

  ハードボイル小説みたいに孤独だ。

これは「われら新鮮な旅人」という5頁ほどの長さの詩の一節だ。この詩が収められた長田弘の最初の詩集『われら新鮮な旅人』が出版されたのは1965年、彼が26歳のときだった。1939年生まれの彼は、団塊の世代の若者たちの兄貴にあたる世代の若者だった。もちろん、当時11歳だった私は彼の名前を知らなかった。サーカスは好きだったが、ハードボイルド小説なるものは読んだことがなかった(トリオ・ザ・パンチの内藤陳の「おら、ハードボイルドだど!」のギャグは一世を風靡していたから、「ハードボイルド」という言葉は知っていた)。

  言葉をぼくは逆手ににぎる

  それがぼくのやり方だ、

  夕陽のなかで 魚屋が

  かじきを逆手にしっかりとにぎるように

これは「ぼくは借りを返さなければならない」という短い詩の始まりの一節だ。この詩が収められた長田弘の二冊目の詩集『メランコリックな怪物』が出版されたのは1973年、彼が34歳のときだった。私は大学1年生になっていた。その頃、長田弘の名前を知っていたかどうか、記憶は定かでない。しかし、内ゲバで荒廃したキャンパスに立って、大学1年生の私がそこで生き抜いていくための「言葉」(概念やセオリー)を切実に求めていたことははっきりと覚えている。

午後、妻と病院へ母を見舞いに行く。

途中、昼食をとるために「宝来」の暖簾をくぐる。

冷やし中華を注文する。

今シーズン最初の冷やし中華だ。冷やし中華には醤油だれのものと胡麻だれのものがあるが、ここは醤油だれ。私も基本は醤油だれで、たまに胡麻だれも食べたくなる。また、食べるときに具と麺をかきまぜて(渾然一体にして)食べる人とそうしない人がいるが、以前の私は前者で、最近の私は後者。

妹の夫(カツヨシさん)と、一昨日も来てくれた甥っ子のリョウスケもまた来てくれていた。

母はこれまでの4人部屋から個室に移った。

ちょっとすませておかないといけない用事があるので、夕方、いったん家に戻る。

自転車に乗って、再び病院へ。娘もやってくる。娘は午前中に一度来ていて、そのとき相部屋だったAさんにご挨拶したのだが、あとからAさんが私に「とてもきれいなお嬢さんですね。びっくりしました」と言った。「きれいなお嬢さんですね」だけだったらお世辞だと思うが、「びっくりました」というのは本当にそう思っているということだろう。今日の午後、娘は梅屋敷の劇場に知り合いの劇団の芝居を見に来ていて、もしかしたら会場案内係などの手伝いをしている可能性もある。そのため普段より入念に化粧をしていたのかもしれないと思った。しかし、やってきた娘を見ると、普段の服装で、普段の化粧である。いつもの見慣れた娘である。「午前中に来たときはいまと違う服装やメイクをしていたの?」と尋ねると、「ううん、同じだよ。何で?」と言った。う~む、Aさんはこのレベルで「びっくりした」のか。

1時間ほど滞在して帰宅する。帰宅するとき、母はベッドに寝たままの姿勢で、両手をあげてゆっくりと振った。声はもうかすれ気味になっている。

夕食はカレー。カレーだが、カレーライスではない。私と妻がだぶって朝食用のパンを買ってしまったために、せっせと消費しないとならなくなったのである。 

食事中に大き目の地震があった。連続する地震や、噴火のニュースは人を落ち着かない気分にさせる。

デザートは病院からの帰りに「藤肥軒」で買ってきた麩饅頭とみたらし団子。

今日、購入した『NHK俳句』6月号。

表紙に印刷された「今月の一句」(櫂未知子選)

  地下鉄にかすかかな峠ありて夏至  正木ゆう子

地下鉄の線路にも「峠」のごときものがあるというのはいわれてみるまで気づかなかった。人をハッとさせる句である。いい句というのはそういうものである。「ありて夏至」は「ありて夏」でも5音で収まるが、「峠」と「夏至」の意味連関がこの句のポイントである。


5月29日(金) 曇り時々小雨

2015-05-31 00:36:30 | Weblog

7時半、起床。

トースト、サラダ(鶏のササミ、トマト、レタス)、紅茶の朝食。

昼前に家を出て、大学へ。

昼食は研究室でおにぎり。ちりめんじゃこ2個、明太子1個。

いつもなら違う種類を3個買うところだが、先日食べて美味しかったので、ちりめんジャコのおにぎりを2個にした。3個でもよかったかもしれない。

3限はゼミ3年生のK君とTさんの学習指導(ゼミでの発表前の事前相談)。

4限はゼミ4年生のEさんとYさんのゼミ論指導。Yさんは現在進行中の就活で心がポキポキ(いや、バキバキか)折れているようなので、接骨治療も行う。

 「面接でそんなにちぢこまっていないで、肩の力を抜いて、自分をもっと解放してごらんよ」

 「そんなことしたら落とされちゃいますよ・・・」

 「だってどっちみち落とされるんだろう」

 「そ、そうですね!」

(ちょっと荒療治だったかもしれない)

5限は3・4年生合同ゼミ。

6限は学年に分かれてのゼミで、私は3年生の方へ出る。

9時過ぎに大学を出る。夕食は早稲田駅に行く途中にある「熱烈中華食堂 日高屋」で。以前この場所にはコンビニ(ファミリーマート)があった。この店に入るのは今日が初めて。

肉そばと半炒飯のセットを注文。あまり期待しないで入ったのだが、けっこう美味しかった。

10時半、帰宅。


5月28日(木) 晴れ

2015-05-30 12:10:48 | Weblog

7時半、起床。

トースト、サラダ(ハム、トマト、レタス)、牛乳、紅茶の朝食。

9時半に家を出て、大学へ。

2限は大学院生の研究指導。

昼食は36号館ラウンジの売店で購入した「和風ビビンバ」弁当(380円)を研究室で食べる。このお弁当は戸山キャンパスの生協食堂で作っているもののようである。そのためだろう、ご飯が硬く冷たくなっておらず、電子レンジでチンする必要がない。

3限は大学院の演習。

4限は空き時間。『早稲田ウィークリー』の最新号をパラパラ読んでいたら、「おっ!」と思う記事に出会った。 

卒業生(昨日とアリさんと同じ、2000年卒、一文社会学専修)で、脱サラして有機農家を始めた宮本雅之君が「先輩に乾杯」という欄に登場しているではないか。彼とは一年前の私の還暦の祝いの会で会い、その後、彼が作った野菜たちを送ってもらった。彼はあの席で、こんなことを言っていた。「きっと華々しく活躍しているだろう同期の卒業生たちが集まる会に、自分のような人間が行ってよいものか迷いました。そのとき、先生のブログで、「生きる意味を問うこともなく冬銀河」という先生作の俳句を見て、うん、自分も行っていいんだと思いました」。あのときの宮本君は、精悍な表情をしていて、冬の星のように輝いていた。 

5限は講義「日常生活の社会学」。

講義を終えて、すぐに大学を出る。今日は妹の子どもたちが仕事終わりに母の見舞いに来てくれることになっているので、合流するためである。 

7時に蒲田駅に降りると、改札のところに妹とヨシユキがいて、妹が私に「たかじさん!」と妻が私を呼ぶときのように言った。ほどなくしてリョウスケもやってきて。

母は今日はずっとベッドに寝ていたそうだ。それでも孫たちが来てくれたので、精一杯の声を出して話をした。

病院には1時間ほど滞在。

蒲田駅に戻り、自宅にいる妻も電話で呼び出して、みんなで「梅Q」で食事。

釜飯は出てくるまでに時間がかかるので、サラダ、焼き鳥、御新香を注文して、ビール(私はウーロン茶)で喉を潤す。

 

 

釜飯は5種類のものを注文し、みんなで分けて食べた。

鶏釜飯。

カニ釜飯(特製)。私はこれが一番好き。

エビ釜飯。

牛釜飯。

ホタテ釜飯(特製)。母はこれが一番好きだった。

お腹いっぱい食べた。今日は平日の夜に遠路ご苦労様でした。


5月28日(水) 晴れ

2015-05-29 11:23:26 | Weblog

7時45分、起床。

トースト、サラダ(ウィンナーソーセージ、トマト、レタス)、紅茶の朝食。

9時半に家を出て、池袋へ。東急ハンズ池袋店で開催中の「文鳥と仲間たちトリトブ部屋」展にカフェ仲間の陶芸家清水直子さんが出品しているので、卒業生のアリさん(2000年卒、一文社会学専修)と一緒に見に行く約束をした。アリさんとは昨年11月に清水さんが吉祥寺東急で個展を開催したときも一緒に行っている。清水さんの作品のファンなのである。

池袋東口のサンシャイン通り入口の五差路のところで待ち合わせる。今日は夏の陽射しが強いが、ここは大きな木陰になっている。

次女のミリちゃんも一緒である。吉祥寺東急の個展のときは6か月だったミリちゃんは、先日、満一歳になった。

今回の作品のメインモチーフは文鳥であるが、文鳥以外の鳥の図柄の作品も多い。

あれこれ迷った末、アリさんはスワン柄の湯呑に決めた。前回の湯呑は長女に譲りますとのこと。

買物を終えて、駅前の「TAKASE」というカフェで昼食をとることにした。昭和感にあふれた店で、ベテランの店員さんに尋ねたところ、創業して90年ほどとのこと。おそらく大正時代からやっているカフェなのだ。(あとからネットで調べたら創業は9年で、パン屋としてスタートしたそうである)。

私はホットサンドとクリームソーダを注文。

アリさんはクリームソーダという注文に小さな驚きを隠さなかった。「子供みたいですね」と。君、社会学を勉強した人間は、クリームソーダ=子供という固定観念(暗黙の規範)から自由でなくてはダメだよ。

彼女はレディースセットというものを注文し、ミックスサンド(ハーフ)+モンブラン+アイスティーという組み合わせだった。ケーキは8種類くらいからチョイスするのだが、私だったらサバランをチョイスするところだ。それを言ったら、アリさんは「サバランにはお酒が含まれてますけど、それは大丈夫なんですか?」と再び驚いた。あいかわらずクリームソーダ=子供と思い込んでおる。 

  一生の楽しきころソーダ水  富安風生

  空港のかかる別れのソーダ水  成瀬櫻桃子

  ソーダ水方程式を濡らしけり  本井英

私の愛用している歳時記には「クリームソーダ」を詠んだ句は載っていないが、いずれ私が「クリームソーダ」の句の決定版を作ってみせよう。  

店員さんにお願いしてスリーショットの写真を撮っていただく。

アリさんが化粧室に行っている間、ミリちゃんと二人きりになる。愛想のよい子でよかった。

世界には素敵な組み合わせというものたくさんある。「青い空と白い雲」というのはその代表だが、「美しい母親とかわいい子供」、「メロンソーダとアイスクリーム」というのもそれに負けず劣らず素敵な組み合わせである。

でも、アリさんはピンでも魅力的である。広いおでこと大きな目。

ミリちゃんが歩きたいみたいだったので、五差路の木陰で歩かせる。よちよち歩きながら、転ばずに、せっせか歩く。

私が側について(ときに手をつないで)歩く姿を見て、「ミリとジジ」とアリさんが言った。ジジ(!)。そんな童話があった気がする(ないです)。

素敵な組み合わせにはときとして付属物がある。「メロンソーダとアイスクリーム」に付属する「サクランボ」みたいな。それはクリームソーダにとっては本質的なものではないが、ないと物足りないというもので、それなりの存在感を有している。はたして「美しい母親とかわいい子供」と「ジジ」の関係もそういうものだと言えるだろうか。う~ん、言えまい。

次に会うときはかなりのおしゃべりになっていそうな気がする(間違いない)。

アリさんミリちゃんと山手線に乗り、私は高田馬場で降りた。 

大学へ。

研究室で使っている清水さんの湯呑はこれで3個目になった。右端の大きめの湯呑が今回購入したものである。

1時半からI君のゼミ論指導(3時まで)。

ゼミ論指導を終えて、大学を出る。スロープ横のメタセコイヤの大木が夏の青空を見上げている。生命のエネルギーに溢れている。

いったん帰宅し、妻と母の見舞いに病院へ行く。あれこれ確認しておきたいことがあった。母はベットに寝ていたが、上体を起こして、私が持参した資料を見ながらテキパキと答えてくれた。もうしばらく食事をしていないから体力はずいぶんと落ちているが、気持ちはまだしっかりしている。大したものである。

夕食は豚肉生姜焼き。


5月26日(火) 晴れ

2015-05-28 00:00:54 | Weblog

7時半、起床。

トースト、サラダ(トマト、レタス)、紅茶の朝食。

9時半に家を出て、大学へ。

2限は演習「個人化の社会学」。前夜、発表で使うパワポのスライドが送られてきたが、枚数が50枚以上あって、これでは多すぎます、厳選しなさいとアドバイスしたところ、30枚ほどになっていた。45分の発表時間でこれくらいが適量である。紙のレジュメだとどうしても発表する側も聞く側も下を向いてしまいがちである。みんなが顔を上げて、対面的状況で話をすること(「読む」のではなく「話す」こと)が肝心である。聞く側も、大教室での講義ならいざしらず、小さな教室で、話をしている人の面前で居眠りをするなどもってのほかで、そんな不作法はあってはならない。居眠りをしないコツは、メモをとりながら、あとから質問したりコメントをしたりすることを考えながら、発表を聞くことである(だから教師は居眠りをしないし、できない、のである)。

昼食は研究室でおにぎり3個。今日のおにぎりはコンビニではなく、東京駅から大手町駅へ乗り換えの途中、オアゾビルの地下通路の惣菜屋さんで買ったもの。ジャコと山椒のおにぎりが美味しかった。

3限は講義「現代人のライフスタイル」。90分間、びっしり(圧縮した内容で)講義をした。今回の内容は大切ですぞ(試験のとき)。

4限、5限は空き時間。研究室で読書や来客の相手。

6限は演習「個人化の社会学」のグループ発表の事前相談。生協で購入したビスコを茶菓子に配る。

7時過ぎに卒業生のIさん(論系ゼミ3期生)が仕事終わりにやってくる(職場は日本橋)。下の写真はデジカメでタイマーを使って撮ったもの。これも自撮りというのだろうか。身体とカメラが分離していると自撮りとはいわないのだろうか。

研究室でしばらく話をしてから食事に出る。中庭から戸山図書館に行く途中の34号館のオープンラウンジ。彼女が在学中にはなかった空間だ。工事が終わったキャンパスを訪れる卒業生が一様に言うのが、「早稲田じゃないみたい」だ。「オシャレなキャンパス」ということだろう。

「五郎八」に食事に行く。女将さんが「そろそろいらっしゃる頃だと思っていました」と言った。

私は天丼+せいろ(1枚)。

Iさんは豚しゃぶ、トマト、キャベツ、トマトをのせた冷たい蕎麦。「わあ、おいしそう!」と言ったIさんだったが、しばらくして、蕎麦が入っていないことに気付く。女将さんが「もうしわけありません」と新しいものを持ってきた。どうやら「五郎八サラダ」と間違えたようだ。「五郎八サラダ」と同じ材料で、具材の切り方が違っている(そばと一緒に食べるからトマトは小さめに切る)。先に出された「五郎八サラダ」はすでに箸を付けてしまっていたから、二人でそのままいただいた。びっくりしたが、得した気分。

「カフェゴト―」へ。普段は「五郎八」で蕎麦のほかにもあれこれ注文するのだが(薩摩揚げとか田楽とか卵焼きとか)、今日はIさんが「カフェゴト―」のタルト(それもハーフ&ハーフ)を食べたいという希望だったので、食事の方は控えめにしておいたのである。

パンプキンパイとバナナタルトのハーフ&ハーフ。まろやかでしっとりとした味わい。

Iさんは論系ゼミ3期生だから、今年で社会人3年目だ。初めて職場で後輩ができたそうで、後輩の指導という新しい仕事が増えた。職場環境は恵まれているそうだ。しかし、プライベートでは、先日、彼氏が彼女の誕生日をうっかり忘れる(直前になって気づく)という「事件」があったそうだ。それから彼氏の実家を訪問したとき「飼い犬に手を噛まれる」という「事故」もあったそうだ。どちらも、まあ、大きな不幸とはいえないが、一難去ってまた一難、日日草の花が咲く、それが人生ですよ(笑)。

火曜日の夜の「カフェゴト―」は空いていて、最後の1時間ほどはわれわれの貸切状態だった。下の写真は自撮りではなく、お店のスタッフの方に撮っていただいたもの。1週間はまだ始まったばかりだけれど、Iさん、お仕事頑張ってください。