フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

10月31日(火) 晴れ

2006-10-31 23:59:59 | Weblog
  午前9時半、起床。睡眠時間4時間だが、一応、頭はスッキリ。「プレゼンテーション入門」の続きを書いて、1時から編集者と打合せ。喋りながらいつもより饒舌になっている自分を意識する。寝不足でかえってテンションが上がっているのだろう。2時から新学部の論系・コースの委員長会。4時半から現代人間論系運営準備委員会。その後、新学部の基礎講義の収録スタジオを見学(新学部では基礎講義はオンデマンド授業になるのである)。ついでに収録日の予約を済ませる。午後7時、帰宅。今夜は『役者魂!』と『僕の歩く道』があるが、前者は見切ることにした。藤田まこと演じるシェークスピア俳優のキャラクターがどんどん軽く、物分かりがよくなっていくので、歯ごたえがなくなった。2つ、3つ挿入される妄想劇は早くも新味が失せた。

10月30日(月) 晴れ

2006-10-31 05:21:10 | Weblog
  終日、自宅で原稿書き。
  遅めの昼食を食べながら、TBSの『みこん六姉妹』という昼の連続ドラマを漫然と見ていたら、スタッフロールの「脚本 山上ちはる」という名前が目に飛び込んできた。ん? 山上ちはる? もしかして彼女のことか? そういう名前の社会学専修の卒業生がいるのである。彼女は東大の大学院へ進んで、「娯楽するメディア ―テレビ・バラエティの軌跡とリアリティの変容―」という優れた修士論文を書いた(彼女からいただいたものが研究室にある)。博士課程には進まず、テレビ業界で働いていると聞いていた。さっそくメールを出して「あの山上ちはるというのは君のことか?」と訊ねたら、すぐに返事のメールが来て、「はい、私です」と書いてあった。昼ドラだから誰も気づかないだろうと思ってましたとあったが、私を誰だと思っているのか。
  彼女はセカンドライターの一人で、大まかな設定やストーリーはメインライターが作成し、セカンドライターがそれぞれの担当週の細かいエピソードを作るというシステムで動いているのだそうだ。先々週と今週は彼女の担当なのである。「へんてこりん」な独特の雰囲気はいかにも彼女らしいと思った。1月から放送が始まるNHKの朝ドラ『どんど晴れ』にもかかわっているとのこと。そのうち「山上ちはる」がメインライターのドラマを観る日が来ることだろう。楽しみだ。
  もうすぐ夜が明ける。「プレゼンテーション入門」の原稿はまだ書き上がっていないが(あと少しなんだが)、今日は昼から大学で会議、会議、会議だから、もう寝なくては。とりあえず書けているところまでを編集者にメールで送る。

10月29日(日) 晴れ

2006-10-30 00:57:09 | Weblog
  午前9時半ごろ起床。朝食前に昨日の分のフィールドノートの更新作業。いつもは就寝前にする作業だが、土曜日の夜というのは一週間の疲れが出るのであろう、更新作業の途中で、睡魔に襲われることが多い。昨夜もそうだった。そういうときは寝るに限る。更新されたフィールドノートを読んだ妻が、「女性雑誌を買う時って、恥ずかしくない?」と聞いてきたので、「あまり恥ずかしいという気持はないね」と答える。私にとっては本・雑誌=資料という感覚なので、その雑誌が想定している読者層と自分がずれていても気にならないのである。たとえば『たまごクラブ』は家族社会学的研究の格好の資料であるし、『日経WOMAN』はキャリア志向の若い女性の意識を知るにはいい資料である。購入する側にそういう確固たる意識があると、レジの人から「何?このおじさん」というようなまなざしを浴びることはない。もし浴びたとしても社会学者はそんなことでひるんだりはしない。
  今日の課題は「新プレゼンテーション入門」の原稿を書くこと(今日と明日の2日間で書き上げること)。新学部の基礎演習のためのガイドブックに載せる原稿である。8月に「プレゼンテーション入門」の草稿(400字詰原稿用紙換算で40枚ほど)を書き上げたのだが、そこでは個人研究のプレゼンテーションが基本になっていて、その後、(1)基礎演習でのプレゼンテーションはグループ研究を基本にするという合意形成が行われた、(2)英文学の水谷先生の「アカデミック・ライティング入門」に加えてフランス文学の鈴木先生が「論文の読み方」についての文章を書き下ろしてくださった、この2点を踏まえて、従来の「プレゼンテーション入門」を全面的に書き直すことにしたのである。実は、31日が『社会学年誌』に寄稿する論文の締切で、この忙しいときに…という気持もないわけではないのだが、やはり中途半端な文章のままでは寝覚めが悪い。基礎演習がうまく機能するかどうかに新学部の命運がかかっている、というのはいささかオーバーな表現だが、新1年生にとって基礎演習はこれから学問の世界の探索に出かけるベースキャンプのようなものであるから、ガイドブックはしっかり書かないとならない。午後、書き出しの部分がなかなか覚悟が決まらず、夕方近くになって、ようやく書き始めることができた。書くべき諸要素は決まっているのだが、諸要素の最善の配列を決めるのに時間がかかったのである。しかし、一旦覚悟を決めて書き始めれば、これのあとにはこれ、そのあとにはこれ、と筋道は自ずから定まってくる。書き出しが一番自由度が大きく、後に行くほど自由度は小さくなるのである。なまじ自由があるから人間は迷い、不安になるのである。

10月28日(土) 晴れ

2006-10-29 10:54:30 | Weblog
  2限の社会学基礎講義は1年生用の授業なので、本題に入る前に、専修進級について少しばかりレクチャーを行う。自分も覚えがあるが、この時期、1年生はどの専修に進むべきかであれこれ悩むのである。社会学専修との組み合わせで言えば、一番多いパターンは「社会学専修か人文専修か」というものであろう。研究テーマに関してはこの2つの専修は重なるところが多い。むしろ顕著な違いは演習の進め方にある。社会学専修の演習はグループ研究が基本で、人文専修の演習は個人研究が基本である。だからみんなで協力して1つのプロジェクトをやり遂げたいという人には社会学専修が、自分一人で自由にやりたい人は人文専修が向いている。そういう話をした。
  3限の授業(社会学研究10)を終えて、教員ロビーの自販機で購入したアクエリアス(500ml)を飲みながら、研究室で一息つく。1週間が終わったなと思う。Sさんから今日頼まれた留学のための推薦書類を作成し、机の上の片づけをしてから、研究室を出る。生協文学部店の新刊コーナーで5、6冊購入(教員ロビーに回しておいてくれるよう頼んだので、いま手許に現物がなく、著者・書名・出版社名を記すことができない)。帰り道、丸善丸の内本店に立ち寄り、以下の本と雑誌を購入。

  松沢弘陽・植手通有編『丸山眞男回顧談』下(岩波書店)
  荒木経惟『東京人生』(basilico)
  小池真理子『玉虫と十一の掌篇小説』(新潮社)
  金井美恵子『快適生活研究』(朝日新聞社)
  『リアルシンプル』12月号(日経BP社)

  『リアルシンプル』は女性誌だが、特別付録の「リアルシンプルダイアリー」に惹かれて初めて購入。この「リアルシンプルダイアリー」はこのまま手帳・日記コーナーに並べても十分に単独の商品として売れる仕上がりのもので、これで480円はずいぶんと得をした気分である。そもそもいま店頭に並んでいる手帳・日記の類はどれも価格が高すぎる。発売の時期が年々早くなっているのに比例して、価格も高くなっているのではないだろうか。これは大量の売れ残りを計算に入れて価格設定がされているためである。普通のノートやメモ帳の類と違って、日付入りの手帳は売れ残ったら廃棄処分にするほかはない。手帳・日記コーナーには売れ残ってしまう物たちの悲しみが漂っている。私が毎年、手帳(それからカレンダーも)をついつい余分に買ってしまうのは、そんな彼らへの同情のためもある。

10月27日(金) 曇り

2006-10-28 02:19:31 | Weblog
  昼から大学へ。キャンパスを歩いていると向こうからW先生がやってきたので、お願いしてある今月末が締切の原稿の件を確認をしたら、「1ヶ月待ってもらえる?」と言われ、ビックリ仰天し、「シンジラレナ~イ!」と日本ハムのヒルマン監督のモノマネでかわそうかと思ったが、余裕があると誤解されても困るので、「だめです」と真顔で返事をする。
  3限の社会学演習ⅡBでは、先日放送された「21歳になりました」という番組の一部を教材に使って、ライフストーリーというものの特性ついて考えた。この番組は同一の対象者13名に対して7歳、14歳、21歳(今年)の3時点に渡って追跡インタビュー調査を行い(足かけ15年!)、彼らの成長過程を記録したものである。29日(日)の午後6時からNHK教育TVで再放送されるので、ライフコース研究に関心のある方はご覧になることを勧める。4限の大学院の演習では先週に続いて「バブル文化」についてのディスカッション。
  5限の時間はシャノアールで読書。昼間の研究室は、セールスの電話やアポなしの訪問者のため、落ちついて本が読める場所ではない。研究室が研究室として機能するためには、ドアを開けるとそこには秘書がいて、私の部屋はその奥にあって、訪問者や外線からの電話はとりあえず秘書が対応してくれるという体制が必要であるが、もちろん、大学の現状ではそれは夢物語である。
  6限の「現代人の精神構造」(4回目)は先週に続いて山田先生の担当。ステージ横の椅子に座って拝聴する。最後に「大久保先生、何かご質問は?」と振られたので、「個人化と親密な関係性」についてコメントさせていただいた。私はコーディネーターなので、全部の回に出る予定だが、総合講座形式の授業に不足しがちな「講義の連続性・一貫性」を保つ意味で毎回こういうディスカッションの時間があってもいいかなと思った。来週はお休みで、再来週の担当は心理学の藤野京子先生である。授業の後、何人かの学生が山田先生に質問をしていたが、私のところにも一文の1年生が専修進級のことで相談に来た。この時期、彼らはこの問題で大いに悩むのである。TAをしてくれているI君といつものように五郎八で食事(私は揚げ餅蕎麦、I君は天せいろ)をしてから帰る。
  9時半、帰宅。風呂を浴び、10時からの『セーラー服と機関銃』の3回目を観たが、長澤まさみの演技に飽きてしまった。見切ることにする。振り返るに、私はこれまでの実人生においてもこんな調子で女性を捨ててきた…というのはもちろん嘘です。