8時、起床。旅支度をして、9時に家を出る。雨こそ降ってはいないものの、パッとしない天気だ。
新宿10時ちょうど発のスーパーあずさ11号で茅野へ。ケータイ電話でいま新宿を出るところだと連絡すると、「こっちの天気は上々だ」とKが言った。へぇ、そうなのか。朝食をとらずに家を出たので、新宿駅構内で購入した駅弁をさっそく食べる。甲州のワインビーフとワイントンで作った牛丼&メンチカツ。なかなか美味しかった。
12時4分茅野着。出迎えてくれたK夫婦の車に乗って、さっそく「香草庵」という蕎麦屋に連れて行かれる。これが蕎麦屋?と思うようなアンチークな西洋建築の家。しばらく待って、テーブルに案内される。ぶっかけとデザートにそばがきぜんざいを注文する。最初に出された蕎麦茶からしてすでに美味しく、大いに期待が高まる。やがて運ばれてきたぶっかけの蕎麦は、腰があって、しかし決して硬くはなく、みずみずしく、しかし決して水っぽくなく、「う~ん」と嘆声が出るくらい美味しい蕎麦だった。蕎麦湯も実にまろやか。食後のそばがきぜんざいはご主人自らが厨房から運んで来てくれた。素朴でやさしい甘味だ。
八ヶ岳連峰を眺めながら腹ごなしの散歩。確かに天気は上々だ。初夏、いや、5月6月を飛び越して、いっぺんに本格的な夏が来たようである。昨日までの東京の雨の毎日が嘘みたいだ。
Kは高校時代のクラスメートであり、バドミントン班でダブルスを組んだ間柄である。Kの奥さんもバドミントン班の同期である。二人が付き合い始めたのは高校を卒業してからだが、それでもすでに40年という歳月を一緒に歩いてきたことになる。二人はとても仲がいい。おしどり夫婦という言葉がまさにピッタリだ。とくに10年前に奥さんが大きな病気で手術をしてからますます仲がよくなったように思う。「N子(奥さんの名前)がいなくなったら俺は生きていけない」とKは私に真顔で言ったことがある。
Kの別荘はいわゆる別荘地にある別荘ではない。奥さんのお祖母さんが一人で住んでいて、お祖母さんが亡くなってからは廃屋になったいた家を壊して、その跡地に建てた別荘である。だから目の前は自分の家の畑が広がっていて、そのはるか向こうに残雪を頂いた甲斐駒ケ岳が見える。夏、風呂から上がって、この風景を眺めながら、ベランダで飲むビールは最高だとKは言う。そうだろうなと、ビールの飲めない私も思う。
すぐ隣に石仏百体観音で有名な長円寺という大きな寺があって、ここにKの家の墓はある。いずれK夫婦もここに入ることになる。
けれど先祖代々の墓は、田んぼの一角を整備した墓地にあり、愛犬シローの散歩がてら連れて行ってもらったが、360度見晴らしがよくて、お寺の墓よりもこちらの方がずっといい場所のように思えた。
村の大きな共同浴場で一風呂浴びてから、夕食は奥さんお手製の山菜の天ぷらをたらふく食べる。ああ、美味しかった。
就寝は10時。普段の生活からは信じられないほどの早寝だが、こういう場所に来ると、早寝早起きの生活がしたくなるものである。