フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

3月30日(金) 曇り

2012-03-31 02:27:44 | Weblog

  8時、起床。暖かいが、湿気もあり、生温い感じだ。卵焼き、鰯の甘露煮、ご飯の朝食。

  先日、卒業したばかりのゼミ二期生のT君からメールが届く。出版社への就職が決まったとことの知らせだった。ぎりぎり滑り込みセーフという感じではあるが、T君についてはとくに心配はしていなかった。自分のペースでやっていける能力を有した学生であったからだ。きっといい編集者になるだろう。

  左右社の編集者のTさんに原稿が遅滞していることのお詫びのメールを送る。そのうち卒業生の方のT君にも原稿の遅滞のお詫びのメールを出す日が来るかもしれない。「先生、締め切りは守っていただかないと」「す、すみません・・・」という場面が目に浮かんでくる。因果はめぐるだ。

  昼から大学へ。1時から面談を一件。それを済ませてから、「maruharu」へ昼食をとりに行く。ホットドッグとコーラ。春らしい気分だ。

  教務室に戻って書類の束に判子を押していると机上の電話が鳴る。下の事務所からで、「オープン教育センターから電話がありました。2時半からの会議に先生がまだいらっしゃらないので、いらしてほしいとのことです」と言われる。あっ、いかん、失念していた(新年度の手帳に移行するときにその予定を記入し忘れたのだ)。あわてて本部に向かう。

  本部での会議を終え、教務室に戻り、再び書類の束に判子を押す。

  今日はいつもよりちょっと早めに仕事を終えて、有楽町の「ピカデリー2」に本日が最終日の『ものすごくうるさくて ありえないほど近い』を観に行く。先日、『ドラゴン・タトゥーの女』も最終日に観たのだが、話題の映画を初日に観るのもいいが、こうして最終日に観るのも悪くない。繁華街の映画館であっても、観客はまばらであるから、好きな席で観られるのがいい。いつものように前方中央の席で、大きなスクリーンを見上げるようにして観る。

   9.11で大好きな父親を失い、しかし、その死を受け入れることができず、母親との関係もギクシャクしてしまっている少年が、たくさんの人々との出会いを通じて心のバランスを回復し、新しい人生の地平に歩み出て行くまでの物語。ある日、父親のクローゼットの中で、小さな青い花瓶の中にはいった一本の鍵を少年は見つける。その鍵が入っていた小さな封筒には「ブラック」と書かれていた。人名に違いないと少年は考え、電話帳を調べてニューヨーク在住の472人のブラックさんをピックアップする。そして彼らの元を訪ねて、父親のことや鍵のことを聞こう、そうすればそれが何の鍵で、そこには何が入っているのかがわかるだろう。その何かは父親が自分に残した何かであるはずだ。一日平均2人、毎週土日をその訪問にあてるとして、3年で472人のブラックさん全員を訪問できるできるはずだ。そう少年は考え、リサーチを開始する。見ず知らずの人の家を訪ねるというのは、社会調査の経験のある人にはわかるだろうが、なかなか大変なことである。それも田舎町とかではなく、ニューヨークでだ。普通は門前払いされるところだが、多くのブラックさんは少年の話に耳を傾け、家の中に招き入れてくれる。「9.11で父親を亡くした少年」に対して一般のアメリカ人が抱く気持ちがよくわかるが、実は彼らが少年を受け入れたのには別のある理由がある(それはここでは書かないことにしておこう)。

  少年が会ったたくさんのブラックさん。
  ありえないほど美しいアビー・ブラック
  いつも祈っているハゼル・ブラック
  同じ人の絵を描き続けてきたアストリッド・ブラック
  元教師なのに脳が死にかけているボリス・ブラック
  コインを集めているレイモス・ブラック
  庭園に入れないアラン・ブラック
  ハグ好きのヘクター・ブラック
  「帰れ」とどなったリー・アン・ブラック
  3人のベン・ブラック
  絵をくれたエレイン・ブラックと5人の騒がしい子どもたち
  耳が不自由なミスター・ブラック
  ロッカウェイ半島のジーン・ブラック
  泣き出しそうなローナ・ブラック
  男で女の人
  ありえないほどボロボロの建物に住んでいる人
  絵を一緒に描く双子
  奥さんの死後、音を聞かない人
  ・・・・などなど

  この映画の脚本の一番よいところは、少年の回復の物語を家族の物語の内部だけで展開しないで、ニューヨークに生きるたくさんの人たちの物語と絡ませたことである。ふだん都会に暮らすわれわれは、日々、たくさんの他者と出会う。たとえば、電車の中で、向かいのシートに座った人の生活や人生に思いをはせることがある。でも、実際に話しかけて、その人の生活や人生について話を聴くことはない。この映画の主人公の少年はそれをやっているのである。儀礼的無関心やただの無関心に支配された毎日を送っているわれわれには、これは都会の御伽噺である。ユートピアの物語といってもいい。 こんな風に他人と言葉を交わせたらどんなに素晴らしいだろう。

  もしリサーチする人の名前が、ブラックではなく、スミスとかアンダーソンであったら、物語の寓意性は薄らいだだろう。ポール・オースターの二ユーヨーク三部作の1つ『幽霊たち』は、探偵のブルー、依頼人のホワイト、被調査者のブラックが登場する。ニューヨークの住人にはブラックという名前が相応しい。都会に生きることの匿名性をその名前がよく表しているからだ。少年が一人一人のブラックさんの元を訪れることで、匿名的・記号的存在だった彼らが、一人一人個性的で内実のある人生を生きている人たちであることが明らかになるわけである。その意味では、この映画はニューヨーク賛歌でもある。素晴らしきかな人生。素晴らしきかなニューヨーク。アメリカ映画らしいアメリカ映画であると思う。  

  「玉屋」でいちご大福と道明寺とみたらし団子を買って帰る。

 

  今日一日の終わりに伊吹唯さんの「一日」という歌を聴く。

http://www.youtube.com/watch?v=bm0eD_d6NR8&feature=related


3月29日(木) 晴れ

2012-03-30 01:40:31 | Weblog

  8時、起床。フライドチキン、トースト、蜂蜜、紅茶の朝食。

  9時半ごろ家を出て、大学へ。今日は11時から文化構想学部の新入生の科目登録ガイダンスがある。場所は大隈講堂。去年は戸山キャンパスの38号館AV教室(400人収容)で3回にわけて行ったが、今年は1回で(大講堂は1400人収容)。

  11時開始。冒頭、浦野学術院長の挨拶があって、続いて私がカリキュラムの説明。以下、事務所の方、留学センターの方、生協の方などが次々に登壇してあれこれの説明を行う。

   講堂の外ではサークルの勧誘部隊が新入生が出てくるのをいまや遅しと待ち構えていた。新入生が早稲田パワーの洗礼を受ける最初の瞬間である。どうか自分を見失わないで、充実した大学生活を送ってほしい。

  文キャンに戻る前に「早稲田軒」で昼食(ワンタンメン)をとる。

   教務室に戻って、1時から会議。

  3時半から面談を一件。それが終って、引き続き会議。

  7時頃まで仕事をして帰る。

  新入生にとっての直近の課題は、明日から始まる科目登録をちゃんとすることと、キャンパス内の建物の番号と教室の場所を覚えること、そしてホッと一息入れられる場所を見つけることである。その場所はキャンパスの中でもいいし(図書館とか、文カフェとか、校舎の脇のベンチとか)、キャンパスの周辺でもいい(カフェとか、公園とか、古本屋とか)。とにかく新学期早々はキャンパスは人であふれている。日曜日の歩行者天国みたいである。にぎやかだが、疲れる。ホッと一息入れられる場所を見つけることは、とても大切なことだ。そこでボケッとするもよし、読書をしたり、日記を書いたり、高校時代の友達にメールをするのもいいだろう。それは孤独なひとときではあるが、孤独を恐れて、いたずらに人とのつながりを求めるべきではない。人とのつながりは大切だが、それはひとりの時間をちゃんともてることと表裏一体でなくてはならない。孤独と社交、それは大学生活の基本的なテーマであろうと思う。


3月27日(火) 晴れ

2012-03-29 00:57:17 | Weblog

  8時、起床。今日も青空。バタートースト、ジャム、紅茶の朝食。

  牧阿佐美バレエ団の公演「ロミオとジュリエット」(6月15日・16日・17日)のチケットの予約販売が今日から始まった。10時過ぎにバレエ団事務所に電話を入れて、17日のチケットを予約する。もちろん17日は伊藤友季子がジュリエットを踊る。伊藤は足の故障に苦しんできた。昨年10月の「リーズの結婚」を降板。12月の「くるみ割り人形」は出番のそれほど多くない役(金平糖の精)だったので踊り切ったが、2月の「ノートルダム・ド・パリ」を再び降板。6月の「ロミオとジュリエット」は再起をかけた舞台になる。

  昼から大学へ。今日の暖かさのためだろう、キャンパスの桜の蕾がほころび始めた。 

   1時から面談を一件。それを済ませてから「フェニックス」に昼食をとりに出る。ピラフとコーヒーを注文。

  5時半頃に大学を出る。今日は私の母の誕生日。昭和2年の生まれで、今日で85歳になった。花束とケーキとケンタッキーフライドチキン(母の好物)を買って帰る。毎月28日は「にわとりの日」ということで「とりの日」パックというのがお徳である。 レジで私の前にいた女性も「とりの日」パックを購入していた。


3月27日(火) 晴れ

2012-03-28 00:49:28 | Weblog

  7時半、起床。今日も青空。焼きソーセージ、レタス、ジャム、紅茶の朝食。

  昼から大学へ。1時から面談を一件。それを終えてから、昼食をとりに出る。

  『孤独のグルメ』はこんなナレーションで始まる。

     時間や社会にとらわれず、幸福に空腹を満たすとき、つかの間、彼は自分勝手になり自由になる。

     誰にも邪魔されず、気を遣わず、ものを食べるという孤高の行為。

     この行為こそ現代人に平等に与えられた最高の癒しといえるのである。

  「時間にとらわれず」というのはとても素敵なことなのだが、生憎と、ランチタイムは2時までという店が多いので、それを過ぎてから空腹を満たすことは制約を伴う。いい天気なので、散歩がてら「いもや」へ行く。   

  老夫婦がやっているカウンターだけの店だ。えび定食(味噌汁が付いて800円)とお新香(50円)を注文。ご飯は軽めにしてもらう。天ぷら定食にもえび天が2本付いているが、えび定食はさらに2本付いて計4本。えび天単品で2本注文すると300円だから、それより100円安い計算になる。えび天丼も800円だが、ここの天丼は天丼のたれと天つゆが同じなので、天丼のたれとしては薄味に感じる。私は天丼のタレは天つゆよりも濃い目の方が好きである。卓上に食塩は置かれていない。カウンターの中にもそれらしいものはない。郷に入らば郷に従え。全部天つゆ(大根おろし入り)で食べる。揚げたての天ぷらは旨い。蜆の味噌汁も美味しい。

  女将さんが「遅いお昼ですね」と話しかけてきた。他に客はいない。もう2時を回っている。「はい、2時前後に食べることが多いです。なので2時を過ぎてもやっているお店はありがたいです」と答える。「いもや」は昼は3時までやっているのだ。女将さんと話をしたせいで、追加(お好み)の注文がしたくなった。あなごとキスを注文。もうご飯のないのを見て、女将さんが「もう少しご飯をお食べになりますか」といってくれたので、軽めにして減らした分くらいのご飯をいただく。「これだったら最初から軽めなんていわなければよかった」と私が言うと、女将さんはニッコリした。メニューに出ていないが味噌汁のお代わりもする。お代は1200円也。つまり蜆の味噌汁は50円ということになる。安い。最後にお茶を一杯いただいてから、店を出る。いい店だ、また来ることになるな、と井之頭五郎のように心の中で呟く。

  教務室に戻り、7時頃まで仕事をして帰る。昨夜見た、金星―三日月―木星の縦三連星の配置は今日はくずれ、月は金星の左少し上方に位置していた。昨夜見られたことはラッキーだったなと思う。


3月26日(月) 晴れのち曇り

2012-03-27 09:53:29 | Weblog

  7時、起床。青空が広がっている。これが本当のブルーマンデー。

  午後から大学へ。昼食は自宅から駅に向かう途中の「オレンチーノ」でカレー煮混みうどん。スープはサラッとしているが、コクがある。隠し味に味噌が使われている気配がある。バナナやキーウィが入っている。バナナであることはわかっていたのに、食べるときになんとなくネギのように見えてしまい、口に入れたらやっぱりバナナの味がしたので驚いた。癖になりそうなカレーうどんである。

  2時半から面談を一件。その後は、夕方まで戸山図書館に篭って、演習「個人化の社会学」で読む文献(論文)の渉猟とマスターコピーの作成。昨日の卒業式で2011年度は事実上終了し、今日からは2012年度の活動が始まる。本当は、年度の間に、数日でもいい、リフレッシュする期間がほしいところだが、そうもいっていられない。

  この時期、戸山図書館はガラガラである。4階の窓際のカウンター席からはスカイツリーが見える。その方向だけたまたま高い建物がないせいである。昨日の卒業生たちは、一夜明けて、今日はどうしているだろう。

  教務室に戻って、7時頃まで仕事をして帰る。西の空の低いところに、金星と木星が縦に並んでいるが、今日はその中間に三日月が位置している。初めて見る配置のような気がする。

   コンビニで『月刊テレビジョン』を購入し、春のドラマをチェックする。とりあえず初回を観てみようと思うのは、以下の7作品。

   火曜9時 フジ系 「リーガル・ハイ」 主演:堺雅人・新垣結衣

         法廷もの。堺雅人があらゆる訴訟を勝利に導く天才弁護士を演じる。

   火曜10時 フジ系 「37歳で医者になった僕」 主演:草剛

         病院もの。草剛ときて「僕」とくれば、「僕・・・道」シリーズ3部作を連想する。草主演のドラマはまずハズレがない。

   水曜10時 日テレ系 「クレオパトラな女たち」 主演:佐藤隆太

         これも病院もの(ただし美容外科)。稲森いずみが形成外科医の一人で登場するので見てみようかなと。 

   木曜10時 フジ系 「カエルの王女さま」 主演:天海祐希

         かつてのスターで、いまは落ちぶれた元ミュージカルスターが地方の町のコーラスグループの建て直しを頼まれるという話。個人の再起と町お越しがセットになっているところがミソだろう。とにかく天海祐希である。

   金曜10時 TBS系 「もう一度君に、プロポーズ」 主演:竹野内豊、和久井映美

         突然の病気で記憶を失ってしまった妻。夫は妻と再び出会って恋をしようと決意する。主題歌はビリー・バンバンの歌う「また 君に恋している」・・・ということはないよね。

   日曜9時 フジ系 「家族のうた」 主演:オダギリ・ジョー

         落ち目のミュージシャンのところにある日突然あなたの娘ですと名乗る少女とその弟が現われる。(ドラマでは)よくあるスチュエーションであるが、オダギリ・ジョーははまり役だろう。

   日曜9時 TBS系 「ATARU」 主演:中井正広

         主人公は自閉症で知的障害があるが、特殊な能力を有しており、難事件の解決に貢献するという話。かての中井正広のドラマはハズレが少なかったが、最近はいまひとつである。今回はどうだろう。

   番外:NHKの朝ドラ「梅ちゃん先生」はわが町、蒲田が舞台である。