温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

花岡温泉

2012年06月20日 | 秋田県
私は小学生の頃に某大手進学塾Nに通っていましたが、社会科の授業では花岡・釈迦内・小坂・尾去沢・阿仁など秋田北部の細かな地名を学習した記憶があります。これはもちろん国内の鉱山を学ぶためでして、私が受験した学校の入学試験では出題されなかったためにそれらの知識は脳みその奥底へとお蔵入りされてしまったのですが、それから20~30年の年月が経って温泉巡りに目覚めるようになると、子供の時に頭へ叩き込んだ知識が長い眠りから覚めて日の目を見て大活躍するようになりました。というのも、上記の鉱山はいずれもグリーンタフ(緑色凝灰岩)の分布に沿って存在しているものであり、温泉という視点で考えれば、グリーンタフ型の温泉が湧出しやすい地域であるといも言えるからです。つまり鉱山地名を学習したことは、大人になって温泉探索をしてゆく上で非常に役立つ知識となったのでした。無駄な知識って無いんですね。
グリーンタフ型の温泉は硫酸塩泉か食塩泉となる場合が多く、秋田北部に限ってみると、大館周辺の無色透明な石膏(or芒硝)泉か、小坂(八九郎)から坂梨峠を越えて青森県の古遠部あたりまで分布する黄土色濁りの含石膏食塩泉のいずれかに二分できるかと思います(八九郎も古遠部もグリーンタフが胚胎する黒鉱鉱床を掘り当てようとして出てきた温泉)。
前置きが長くなりましたが、今回取り上げる花岡温泉は大館付近で良くみられる無色透明な硫酸塩泉の典型例でして、その花岡は言わずと知れた同和鉱業が黒鉱を採掘していた鉱山だったところであります。



すっかり日が暮れて辺りが静まり返った花岡の集落を車で南から北へ縦断していると、集落を抜けて川を渡ったあたりの路傍でこのような看板と遭遇しました。看板の矢印に導かれるまま、川の右岸の土手道を進んで行くことに。


 
温泉は花岡の集落から外れた川岸にポツンと佇んでいました。地味な平屋の建物です。川の対岸には民家がひしめき合っていますが、こちら側には温泉以外に何もない幽霊でも出てくそうな寂しい場所で、小さな看板を照らす街灯や建物から漏れてくる照明の明かり以外に光を発するものは何一つありませんでした。


 
「花岡温泉」は主に地元民が利用する共同浴場です。券売機で支払い、券を番台のおじちゃんに手渡して中へと入ります。番台の奥にはちょっとした休憩スペースが設けられており、その一角では常連と思しき爺様が碁盤を囲んで対局中でした。お風呂は男女別の内湯が一室ずつ。小さな浴場ですが牛乳の自販機があるのは嬉しいところです。



脱衣所は建材の素地がそのまんま剥き出しになっているような飾りっ気の無い簡素な造りで、あたかも地元民専用の共同浴場に入り込んでしまったかのような錯覚を覚えましたが、各棚にはプラ籠がひとつずつ収められていたり、コインで動くドライヤーが設けられていたり、洗面台が設置されていたりと、一応必要最低限の設備は一通り揃っています(コインロッカーは脱衣室外です)。



浴室の戸を開けた途端に石膏の匂いがふわっと香ってきました。浴室内には浴槽がひとつと、シャワー付き混合栓が5つ。水栓は隣同士の間隔に余裕があるので、ゆったりと使うことができました。台形の浴槽は8人同時に入れそうな大きさで、浴槽の縁からふんだんにお湯がオーバーフローしており、訪問時はそのオーバーフローしている洗い場で横になって寝湯を楽しんでいる常連さんがいらっしゃいました。



源泉は獅子の湯口の他、窓下から湯面下に潜っている塩ビのパイプ(エアコン用スリムカバーのエルボーで被覆)からも投入されていました。獅子の湯口といえば、ご近所の釈迦内温泉「泉湯」(訪問済ですが当ブログでは未掲載)もやはり同じように獅子の口からお湯が注がれていますね。花岡と釈迦内は、鉱山の他に獅子の湯口という点でも共通項があるわけだ…。
お湯は無色透明で、この地域らしい明瞭な石膏の匂いと味の他、微かなタマゴ的知覚と弱い金気が感じ取れました。その金気の影響か、オーバーフローが流れる洗い場の床やライオン湯口直下の浴槽底はほんのり赤く染まっています。また湯中での泡付きが強く、20秒もお湯に浸かっていたら全身が泡だらけになりました(特に湯口付近で顕著)。湯中で肌をさするとその泡付きによるスベスベ感と硫酸塩泉らしい引っかかりが混在する浴感が得られ、41℃という絶妙な温度で湧出する源泉をそのまま湯舟へ注いでいるおかげで湯加減も最高。非常に気持ち良く入浴することができました。

質素で渋い小さな浴場ですが、石膏感が強くてアワアワなお湯のクオリティは素晴らしく、しかも惜しげもなくお湯を掛け流す湯使いには惚れ惚れしました。グリーンタフ万歳。


カルシウム・ナトリウム-硫酸塩温泉 41.1℃ pH不明 成分総計等不明
Na+:247.9mg, Ca++:510.7mg,
Cl-:229.9mg, SO4-:1399.0mg,

秋田県大館市花岡町字長森65-2-1  地図
0186-46-1171

1月5日~3月31日→7:00~20:30、4月1日~11月30日→6:00~21:00、12月1日~12月30日→7:00~20:30、大晦日~1月4日→6:00~21:00、不定休
250円
ロッカー(100円有料)・ドライヤー(10円有料)、他備品類なし

私の好み:★★★
コメント (4)
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