※2015年4月に「健康の森花岡プラザ」として全面リニューアルしました。当記事ではリニューアル前の旧施設を取り上げています。
2回連続で花岡を称する温泉を取り上げます。前回の花岡は秋田県でしたが、今回は青森県青森市浪岡にある「青森市国民保養センター花岡荘」です。浪岡の街から東へ小高い丘を上がったところにある花岡公園の一角に建てられており、建物は昭和40~50年代の香りが漂うちょっと古びた雰囲気。
花の岡と称するように、公園内では5月初旬になるとソメイヨシノが絢爛に咲き誇ります。この画像は今年(2012年)5月5日に撮影したものです。津軽で桜と言えば、毎年5月の連休に満開を迎える弘前の桜が有名ですが、今年は厳しい冬が長引いて開花予想が例年より一週間遅れる→5月の連休後半に急に暑い陽気が続いていっきに開花してすぐに満開になる→満開になったにもかかわらず悪天(風雨)が続いてたちまち散る、という散々な状態に見舞われて、とてもお花見を楽しめるような状況ではありませんでした。ここ数年では最悪だったかもしれません。雨がしたたる弘前城では葉桜と人ごみしか見られず、せっかく川崎くんだりからやってきた私は不貞腐れながら「もしかしたら…」と微かな希望を抱いてこの花岡公園へとやってきたのですが、弘前では散ってしまった桜もこちらでは見事なまでに満開状態が保たれており、望みを捨てずにこの地へやってきたことに安堵するとともに、桜の花はわずかな環境や地理的条件の違いで開花の具合が全く異なる非常に繊細なものであることを改めて思い知らされました。
ちょうど4月下旬から5月初旬に桜のシーズンを迎える津軽では、満開の桜の中を鯉幟が優雅に泳ぐ光景が見られます。こうした情緒ある風景は北東北ならではですね。
さて温泉に入るべく「花岡荘」玄関へ。玄関の脇には、ここ1年で俄然注目されるようになった↑画像のような文言のプレートが貼られていました。原発事故以降、メディアによって原発マネーという言葉が取り上げられるようになりましたが、六ヶ所や東通・大間(建設中)を擁する青森県では全市町村にほぼ万遍無く原発マネーが行きわたっており、津軽・南部を問わず県内のほとんどの公共施設には原発(or原燃サイクル事業)関係の交付金を受けている旨のプレートが貼られています。もし青森県を訪れる機会があったら是非その施設の玄関や門柱などを注意してみてください。良し悪しは別にして、日本屈指の貧乏県である青森県にとってはこの手のお金がもはや必須なものとなっており、公共施設のみならずハード面もソフト面もどっぷり浸かっているわけでして、たとえばフクシマの事故後もいまだに日本原燃のテレビCMが(事故以前のように)絶賛放映中だったりします。こうした原発マネーが県民にあまねく届いて生活を豊かにしているのなら、よそ者の私があれこれ言う筋合いはありませんが、しかしながら、こうしたマネーは県の経済構造を変革するものではなく、むしろ役所依存体質を助長する方向に働いてしまったため、有効求人倍率は全国屈指の低水準から抜け出せず、民間の産業は育たず、新しい試みを図ろうとしても数年で頓挫し、出る杭は打たれるばかりで、交付金の恩恵というものは、民間レベルではほとんど感じられません。むしろ交付金によって身の丈に合わないハコモノをつくってしまったばかりに、その維持運営に行き詰まって、以前以上の惨憺たる有様を晒しているようなところもあったりします。たとえば我が第二の故郷である鰺ヶ沢町の「日本海拠点館」なんてその典型で、「拠点館」を実質的に見捨てた近年では低レベルの放射性医療廃棄物を受け入れる施設をつくって財政再建団体への転落から何とか逃れようと必死でもがいている始末です。長い物に巻かれて目先の安寧を得る代わりに、将来的な展望を見出そうとせずに、現状を諦観して目を瞑るばかりで、生活保護をもらいながら軽トラでパチンコ屋へ通い、晩は酒を煽って愚痴をこぼす毎日…。傍から見ていてもため息しか出ません。
青森県を愛するがあまりに愚痴が長くなってしまいました。まだまだ言いたいことは山ほどありますが、拙ブログの趣旨に反するので、無駄口はこれまでにして話を先にすすめます。
館内はいかにも昭和後半の公共施設らしい佇まいです。券売機で料金を支払い、受付の係員に券を手渡して奥へ進みます。こちらの施設は温泉のみならず貸切のお部屋もたくさんあって、この日は地元の老人の集会が催されており、館内は大賑わいでした。草臥れた施設ながら、お風呂場へとつながる通路の壁には「BATH」と縦に描かれたアバンギャルドなデザインが施されており、無機質な館内に唐突に現れるこのようなデザインがちょっとユニークです。
浴室は別棟になっており、館内表示に導かれるまま、青いカーペットが敷かれた長い渡り廊下を進んでゆくと、その突き当りに浴室がありました。男女別の内湯が一室ずつで、露天はありません。
館内のお座敷は爺さん婆さんで大盛り上がりでしたが、みなさん食事とカラオケに夢中なのか、お風呂には誰もいませんでした。まるで共同浴場のように簡素な造りの脱衣室には、ただ棚とプラ籠があるばかりです。「施設内にドライヤー設置できなくなりました」ってことは、以前はドライヤーが使えたってことかぁ…。何かあったのかしら。
棚の上に載せられていたデッキブラシにはなぜか「藤沢市下水」のシールが貼られていました。
かなり年季が入っている浴室内では、源泉がパイプから大量に落とされる轟音が湯気で反響していました。洗い場の床も浴槽の底も、六角形のタイルによって花のような模様が描かれています。浴槽にはお湯を排水する吸い込み口があるにもかかわらず、投入量が多くてその排水口だけでは間に合わず、浴槽縁からザバザバとオーバーフローしていました。
男女浴室の間に立つ円柱形の柱には、抱きつくようにU寺型の源泉枡があり、そこへ向けて塩ビのパイプからドバドバと源泉が落とされています。その勢いのあまりに枡のお湯は白く泡立っており、枡から浴槽へ落とされた後でも湯面には泡が浮いていました。
お湯は薄い褐色透明(薄い麦茶みたいな色)、口に含みしなはあまり気づかないものの、徐々に塩分が多いことに気付いていつの間にやら口腔内がしょっぱさで満たされるような、マイルドなようでワイルドな塩味が感じられます。またカーボンみたいなアブラ臭がほんのり嗅ぎ取れました。浪岡一帯にはモール系の温泉が点在していますので、この温泉もモール系かと思いきや、見た目こそそれに近いものの、味や匂いなど外観以外の知覚はそれほどモールっぽくはありません。知覚面のみならず、分析表を見ても炭酸水素イオンは124.8mgしか含まれておらず、ミリバル%ではたったの2.00mval%です。また遊離CO2はゼロなので、源泉枡や湯面でみられる泡は炭酸の気泡ではない事もわかります。入浴中、体への気泡付着もありません。ナトリウムイオンが2160mg(93.20mval%)、塩素イオンが3379mg(92.99mval%)というデータからして明白ですが、この温泉は琥珀色した純食塩泉なのであります。従いまして、モール泉のようにツルスベ浴感で湯上りはスッキリサッパリ、というお湯ではなく、冬の寒い日にじっくり浸かってホコホコに温まる熱の湯なのであります。人間同様、お湯も見た目だけで判断してはいけませんね。なお館内表示によれば「衛生管理のため塩素系薬剤を給湯配管に注入して浴槽水の消毒を徹底しています」とのことでしたが、消毒っぽさはほとんど感じられませんでした。
洗い場には押しバネ式の水栓が6基と、シャワー付き混合栓が4基設置されていました。すべてシャワー付き水栓にせず、4という中途半端な数でとどめているのは、予算の都合なのかしら。
湯船はやや熱めの湯加減となっており、しかも温熱効果の高い食塩泉ですから、湯上りはなかなか汗が引かず、まるで体の中心に熱せられたコークスが埋め込まれてしまったかのように、いつまで経っても体は火照りっぱなしでした。津軽の厳しい冬にはもってこいの、琥珀色した熱の湯なのでありました。なお当記事前半の青森県の現状に関する私見はあくまで県全体に対するものであって、決して「花岡荘」に矛先を向けているわけではありませんので、どうかご理解賜りますよう。
花岡源泉
ナトリウム-塩化物温泉 47.3℃ pH8.26 湧出量測定不可(動力揚湯) 溶存物質6.254g/kg 成分総計6.254g/kg
Na+:2160mg(93.20mval%),
Cl-:3379mg(92.99mval%),
H2SiO3:167.8mg,
塩素系薬剤による消毒あり
JR奥羽本線・浪岡駅より徒歩15分(約1.6km)
青森市浪岡大字女鹿沢字野尻14-1 地図
0172-62-3023
紹介ページ(青森市サイト内)
7:00~20:00 第3水曜および年始休業
250円
備品類なし(基本的な入浴用具は販売有)
私の好み:★★
2回連続で花岡を称する温泉を取り上げます。前回の花岡は秋田県でしたが、今回は青森県青森市浪岡にある「青森市国民保養センター花岡荘」です。浪岡の街から東へ小高い丘を上がったところにある花岡公園の一角に建てられており、建物は昭和40~50年代の香りが漂うちょっと古びた雰囲気。
花の岡と称するように、公園内では5月初旬になるとソメイヨシノが絢爛に咲き誇ります。この画像は今年(2012年)5月5日に撮影したものです。津軽で桜と言えば、毎年5月の連休に満開を迎える弘前の桜が有名ですが、今年は厳しい冬が長引いて開花予想が例年より一週間遅れる→5月の連休後半に急に暑い陽気が続いていっきに開花してすぐに満開になる→満開になったにもかかわらず悪天(風雨)が続いてたちまち散る、という散々な状態に見舞われて、とてもお花見を楽しめるような状況ではありませんでした。ここ数年では最悪だったかもしれません。雨がしたたる弘前城では葉桜と人ごみしか見られず、せっかく川崎くんだりからやってきた私は不貞腐れながら「もしかしたら…」と微かな希望を抱いてこの花岡公園へとやってきたのですが、弘前では散ってしまった桜もこちらでは見事なまでに満開状態が保たれており、望みを捨てずにこの地へやってきたことに安堵するとともに、桜の花はわずかな環境や地理的条件の違いで開花の具合が全く異なる非常に繊細なものであることを改めて思い知らされました。
ちょうど4月下旬から5月初旬に桜のシーズンを迎える津軽では、満開の桜の中を鯉幟が優雅に泳ぐ光景が見られます。こうした情緒ある風景は北東北ならではですね。
さて温泉に入るべく「花岡荘」玄関へ。玄関の脇には、ここ1年で俄然注目されるようになった↑画像のような文言のプレートが貼られていました。原発事故以降、メディアによって原発マネーという言葉が取り上げられるようになりましたが、六ヶ所や東通・大間(建設中)を擁する青森県では全市町村にほぼ万遍無く原発マネーが行きわたっており、津軽・南部を問わず県内のほとんどの公共施設には原発(or原燃サイクル事業)関係の交付金を受けている旨のプレートが貼られています。もし青森県を訪れる機会があったら是非その施設の玄関や門柱などを注意してみてください。良し悪しは別にして、日本屈指の貧乏県である青森県にとってはこの手のお金がもはや必須なものとなっており、公共施設のみならずハード面もソフト面もどっぷり浸かっているわけでして、たとえばフクシマの事故後もいまだに日本原燃のテレビCMが(事故以前のように)絶賛放映中だったりします。こうした原発マネーが県民にあまねく届いて生活を豊かにしているのなら、よそ者の私があれこれ言う筋合いはありませんが、しかしながら、こうしたマネーは県の経済構造を変革するものではなく、むしろ役所依存体質を助長する方向に働いてしまったため、有効求人倍率は全国屈指の低水準から抜け出せず、民間の産業は育たず、新しい試みを図ろうとしても数年で頓挫し、出る杭は打たれるばかりで、交付金の恩恵というものは、民間レベルではほとんど感じられません。むしろ交付金によって身の丈に合わないハコモノをつくってしまったばかりに、その維持運営に行き詰まって、以前以上の惨憺たる有様を晒しているようなところもあったりします。たとえば我が第二の故郷である鰺ヶ沢町の「日本海拠点館」なんてその典型で、「拠点館」を実質的に見捨てた近年では低レベルの放射性医療廃棄物を受け入れる施設をつくって財政再建団体への転落から何とか逃れようと必死でもがいている始末です。長い物に巻かれて目先の安寧を得る代わりに、将来的な展望を見出そうとせずに、現状を諦観して目を瞑るばかりで、生活保護をもらいながら軽トラでパチンコ屋へ通い、晩は酒を煽って愚痴をこぼす毎日…。傍から見ていてもため息しか出ません。
青森県を愛するがあまりに愚痴が長くなってしまいました。まだまだ言いたいことは山ほどありますが、拙ブログの趣旨に反するので、無駄口はこれまでにして話を先にすすめます。
館内はいかにも昭和後半の公共施設らしい佇まいです。券売機で料金を支払い、受付の係員に券を手渡して奥へ進みます。こちらの施設は温泉のみならず貸切のお部屋もたくさんあって、この日は地元の老人の集会が催されており、館内は大賑わいでした。草臥れた施設ながら、お風呂場へとつながる通路の壁には「BATH」と縦に描かれたアバンギャルドなデザインが施されており、無機質な館内に唐突に現れるこのようなデザインがちょっとユニークです。
浴室は別棟になっており、館内表示に導かれるまま、青いカーペットが敷かれた長い渡り廊下を進んでゆくと、その突き当りに浴室がありました。男女別の内湯が一室ずつで、露天はありません。
館内のお座敷は爺さん婆さんで大盛り上がりでしたが、みなさん食事とカラオケに夢中なのか、お風呂には誰もいませんでした。まるで共同浴場のように簡素な造りの脱衣室には、ただ棚とプラ籠があるばかりです。「施設内にドライヤー設置できなくなりました」ってことは、以前はドライヤーが使えたってことかぁ…。何かあったのかしら。
棚の上に載せられていたデッキブラシにはなぜか「藤沢市下水」のシールが貼られていました。
かなり年季が入っている浴室内では、源泉がパイプから大量に落とされる轟音が湯気で反響していました。洗い場の床も浴槽の底も、六角形のタイルによって花のような模様が描かれています。浴槽にはお湯を排水する吸い込み口があるにもかかわらず、投入量が多くてその排水口だけでは間に合わず、浴槽縁からザバザバとオーバーフローしていました。
男女浴室の間に立つ円柱形の柱には、抱きつくようにU寺型の源泉枡があり、そこへ向けて塩ビのパイプからドバドバと源泉が落とされています。その勢いのあまりに枡のお湯は白く泡立っており、枡から浴槽へ落とされた後でも湯面には泡が浮いていました。
お湯は薄い褐色透明(薄い麦茶みたいな色)、口に含みしなはあまり気づかないものの、徐々に塩分が多いことに気付いていつの間にやら口腔内がしょっぱさで満たされるような、マイルドなようでワイルドな塩味が感じられます。またカーボンみたいなアブラ臭がほんのり嗅ぎ取れました。浪岡一帯にはモール系の温泉が点在していますので、この温泉もモール系かと思いきや、見た目こそそれに近いものの、味や匂いなど外観以外の知覚はそれほどモールっぽくはありません。知覚面のみならず、分析表を見ても炭酸水素イオンは124.8mgしか含まれておらず、ミリバル%ではたったの2.00mval%です。また遊離CO2はゼロなので、源泉枡や湯面でみられる泡は炭酸の気泡ではない事もわかります。入浴中、体への気泡付着もありません。ナトリウムイオンが2160mg(93.20mval%)、塩素イオンが3379mg(92.99mval%)というデータからして明白ですが、この温泉は琥珀色した純食塩泉なのであります。従いまして、モール泉のようにツルスベ浴感で湯上りはスッキリサッパリ、というお湯ではなく、冬の寒い日にじっくり浸かってホコホコに温まる熱の湯なのであります。人間同様、お湯も見た目だけで判断してはいけませんね。なお館内表示によれば「衛生管理のため塩素系薬剤を給湯配管に注入して浴槽水の消毒を徹底しています」とのことでしたが、消毒っぽさはほとんど感じられませんでした。
洗い場には押しバネ式の水栓が6基と、シャワー付き混合栓が4基設置されていました。すべてシャワー付き水栓にせず、4という中途半端な数でとどめているのは、予算の都合なのかしら。
湯船はやや熱めの湯加減となっており、しかも温熱効果の高い食塩泉ですから、湯上りはなかなか汗が引かず、まるで体の中心に熱せられたコークスが埋め込まれてしまったかのように、いつまで経っても体は火照りっぱなしでした。津軽の厳しい冬にはもってこいの、琥珀色した熱の湯なのでありました。なお当記事前半の青森県の現状に関する私見はあくまで県全体に対するものであって、決して「花岡荘」に矛先を向けているわけではありませんので、どうかご理解賜りますよう。
花岡源泉
ナトリウム-塩化物温泉 47.3℃ pH8.26 湧出量測定不可(動力揚湯) 溶存物質6.254g/kg 成分総計6.254g/kg
Na+:2160mg(93.20mval%),
Cl-:3379mg(92.99mval%),
H2SiO3:167.8mg,
塩素系薬剤による消毒あり
JR奥羽本線・浪岡駅より徒歩15分(約1.6km)
青森市浪岡大字女鹿沢字野尻14-1 地図
0172-62-3023
紹介ページ(青森市サイト内)
7:00~20:00 第3水曜および年始休業
250円
備品類なし(基本的な入浴用具は販売有)
私の好み:★★