温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

指宿温泉 河原湯

2012年06月05日 | 鹿児島県

指宿駅の駅レンタカー事務所でJR九州の貸し自転車サービス「楽チャリ」を利用して、指宿の外湯を巡ってみることにしました。この日の午後に特急「指宿のたまて箱」に乗車する予定なので、列車に乗り遅れないよう、貸し自転車の営業開始時間である朝9時からスタートし、遠くの浴場から徐々に駅へ戻る方向で攻めることにしました。まず最初は、指宿の共同浴場の中でも私が以前から行ってみたかった「河原湯」です。「河原湯」と書いて「こらんゆ」と読むんですね。関東人の私のとって薩摩弁は外国語のように難解ですが、浜児ヶ水のように地名も難しい・・・。


 
「河原湯」へ入る路地の角には定期入浴客を募る「体験入浴場」の看板が掲示されていました。無料サンプルは小売業界では当たり前の手法ですが、銭湯のお試し入浴なんてあまりお目にかかりませんよね。面白い試みだと思います。
余談ですが、鹿児島県って山元さん・岡元さん・松元さんなど、苗字の「モト」を本ではなく元と表記する傾向がありますね。



「河原湯」には2つの湯屋があり、通りに近いこちらの方は地元民専用です。上述の「体験入浴場」はこちらのことを指しているのでしょう。屋根の上に湯気抜きがちょこんと飛び出ている質素な外観が非常に魅力的ですが、外来客は利用できないので、残念ながらこちらは外から眺めるだけにとどめました。入口の脇にはざっと見ただけでも100名近い加入会員の名札が並べられており、このお風呂が多くの方から愛されていることが窺い知れます。



浴場管理者である岡元さん宅の右隣に建っており、白い壁に「こらんゆ」と平仮名書きされているこちらの湯屋が外来者も利用できる公衆浴場です。男女別に入口が分かれており、右側が男湯、左側が女湯です。



建物の脇には小さな源泉ポンプが唸りを上げて稼働しており、余ったお湯が捨てられていました。



源泉ポンプの横には「湯谷権現」と彫られた小さな石碑が鎮座しており、お神酒と榊が供えられていました。
湯谷権現は熊野(ゆや)権現と同じである、と以前に民俗学の本で読んだことがあるのですが、果たして真偽のほどは?



壁に貼り付けられている小鳥の巣箱のような料金箱へ小銭を投入して中へ入ります。湯屋は無人なのでお釣りはありません。250円という料金ゆえに、あらかじめ50円玉か10円玉を5枚用意しておく必要があります。



湯屋内部は脱衣スペースと浴室が一体化している古い公衆浴場ならではの構造。総木造で古い建物のそこここから貫禄が感じられます。



古い公衆浴場には珍しく浴室には主浴槽の他に歩行湯や扇形の掛け湯槽といった複数の槽があり、単に汗を流すだけにとどまらない湯あみを楽しめるのがこの湯屋の特徴のひとつです。なお洗い場にシャワーはおろか水栓自体がないため、掛け湯槽か主浴槽から直接桶でお湯を汲むことになります。



浴室から脱衣スペースを眺めた様子。画像の左下に見える扇型の槽が掛け湯槽です。朝に訪れたためか、浴室内はとてもきれいに整理整頓されており、とても気持ち良く利用できました。日頃から清掃なさっている管理人の方に感謝です。


 
天井を見上げると、湯気の籠りを防ぐことが求められる湯屋建築らしく梁がむき出しになっており、天井のてっぺんには湯気抜きが口を開けていました。また男女仕切りの壁の上には、九州の古い公衆浴場にはお馴染みである、木板に手書きされた入浴者心得が掲示されていました。



モルタル造で正方形の主浴槽は4人サイズ。薄く白い靄がかかったような貝汁濁りのお湯はキシキシとした浴感を有し、指宿の温泉らしく強い塩味を帯びるとともに、鉄錆味と弱い出汁味を擁し、湯面からは鉄臭と磯の匂いが混ざって香ってきます。なお特に湯の華らしきものは見当たりませんでした。もちろん完全掛け流しの新鮮なお湯で、湯船に身を沈めると、勢いよくお湯が溢れ出てゆきます。このオーバーフローに覆われるためか、浴場の床は全体的に赤っぽく染まっていました。
湯口は湯面下にあり、その傍にあるバルブで利用者が湯量を調整できます。このバルブは利用時のみ開け、それ以外は締めておくのがこちらのルールのようです。というのも源泉温度が高いため、出しっ放しにしていたら熱くて湯船に入れなくなってしまうからだと思われます。


 
浴室の角に沿ってL字形を描く歩行湯は臍上まで浸かる結構な深さがあり、壁には「この湯舟はリハビリ(歩行)用です(以下略)」と書かれていました。じっくり歩けるよう、こちらの湯加減はぬるめに設定されています。高齢者が多い地域ならではの設備なのでしょうが、公衆浴場なのにこんな湯船があるなんて珍しいですね。

ノスタルジー溢れる素敵な湯屋風情に包まれながら、湧きたての新鮮な源泉をじっくり堪能できる、素敵な公衆浴場でした。指宿の湯めぐりの初っ端から私のストライクゾーンど真ん中な湯屋に巡り会えて幸せです。
なお入場時に100円玉しかもっていなかった私は料金箱へ300円を投入したのですが、お風呂から上がって表へ出ると、管理者の方が母屋から現れてお釣りの50円を手渡してくれました。ちゃんとチェックしていたんですね。恐れ入ります。


河原湯8号
ナトリウム-塩化物温泉 62.4℃ pH6.7 溶存物質4321mg/kg 成分総計4355mg/kg
Na+:1145mg(75.08mval%), Ca++:232.1mg(17.46mval%),
Cl-:2263mg(91.74mval%),
H2SiO3:242.0mg,

JR指宿枕崎線・二月田駅より徒歩12分(約1.2km)(指宿駅から自転車で15分)
鹿児島県指宿市東方7582  地図
0993-24-2550

8:00~21:00 無休
250円
備品類なし

私の好み:★★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする