温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

雪沢温泉 大雪

2013年08月03日 | 秋田県
 
大館付近で宿泊するに当たり、2食付きでどこか安い温泉宿はないかしら、と某大手宿泊予約サイトを探していたら、雪沢温泉の「大雪」で提示されている金額(1泊2食付きで6,000円)に心が惹かれたので、今回一泊してみることにしました。大館と小坂を結ぶ県道2号沿いのとってもわかりやすい場所にあります。雪沢温泉に関しては、他の施設でしたら入浴したことがあるのですが、なぜかここだけは今までご縁が無く、何度も目の前を通過していながら、こちらでの湯浴みは今回が初めてとなります。



玄関を入るや、宿のご主人と奥様が出迎えてくださいました。とってもアットホームな応対に自然と心がほぐれます。今回通された客室は東側に窓が開けた6畳の和室です。建物はかなり古いもののきちんと清掃されており、テレビや扇風機などもちゃんと備え付けられていますが、トイレや洗面台は共用でして、その上クーラーも無かったので、暑い日にはちょっと厳しいかも(とはいえ都内のような酷暑とは無縁でしょうけどね)。共用洗面台の傍には年代物の客用冷蔵庫がありますから、持参した飲み物をそこで冷やしてもOKです。


 
館内廊下の随所には本棚が置かれ、無数の蔵書が並べられていました。さながら神保町の古本屋にいるかのようでして、そのラインナップは和辻哲郎・西田幾太郎・小林秀雄をはじめ、哲学・歴史・地誌など人文科学系が多いように見受けられます。後ほどご主人とお話したところによれば、どうやらご主人は東京の大学を出ていらっしゃるようでして、とりわけ歴史に関しては造詣が深く、私が「東北地方では奥羽山脈を境に文化が異なりますね。特に北前船の影響を受ける日本海側は…」という旨をポロっと口から零したら、眼前に好敵手現れりと言わんばかりに目を輝かせ、東北の歴史や文化についての薀蓄を止めどもなく語り、ご自身の語る東北の歴史ロマンに陶酔なさっているようでした。実際にとても興味深いお話の数々を拝聴することができ、会津と仙台の血が混じっている私としても(本筋は江戸ですけど)、明治以降の東北のことを「白河以北一山百文」と嘲罵しやがった薩長土肥やそんな連中を礼賛する史観がちっとも気に食わなかったので、ご主人が訴える東北の燦然たる歴史と豊穣たる文化に共感し、終始東北バンザイという欣快な空気の中で意気投合していたのですが、調子に乗って私が「東日流外三郡誌」にイチャモンをつけたら、古代史に関するロマンに泥を塗ってしまったのか、ご主人が明らかに臍を曲げてしまったのが、我ながら迂闊な勇み足でした。でも「東日流外三郡誌」は、フィクションとしては面白いかもしれませんが、古文書としては明らかにインチキですぜ。あんな誇大妄想の塊で中央に対する歴史的コンプレックスを晴らそうとしちゃいけません。


  
閑話休題。本棚の前を通って浴室へ。男女別の内湯があって、露天風呂はありません。手前側が女湯で奥が男湯です(男女の区分は固定されているようです)。浴室エリアは最近改修工事が行われたんだそうでして、全体的な古さは隠しきれませんが、それなりに綺麗で居心地も良好です。還暦手前のおばちゃんが頑張って整形してお化粧を厚く塗りたくったような感じかな。脱衣室内には扇風機が設置されており、湯上りのクールダウンには好都合でした。


 
浴室はかなり広く、子供だったらつい駆け出したくなるかも。コンクリの床にはグリーンのペンキが塗られており、その真ん中に表現の難しい変則的な六角形のヒバ風呂が据えられています。浴槽の一角に据え付けられた岩の湯口の周りには鉢植えの観葉植物が並べられ、岩の無機質な印象を払拭しようとしていました。室内の壁際には混合水栓が7基取り付けられており、うち6基はシャワー付きです。改修してまだ間もないためか、水栓金具はピッカピカに輝いていました。どんなものでも新品って良いもんですね。


 
岩の湯口から無色透明の石膏泉が滔々と流れています。岩の周りには白いトゲトゲの析出がビッシリと付着しており、まるで鉱石標本のような姿を呈していました。お湯が岩から湯船へ落とされるところには木のBOXのようなものがあり、そのフタを外してみるとBOXの中は湯溜まりのようになっていて、湯溜まりから浴槽へお湯を流出させる箇所には固形物を濾し取るための布が巻かれていました。
この無色澄明のお湯は典型的な石膏泉でして、トロトロな浴感とともに、石膏の匂いと味が感じられましたが、石膏感に関しては特別強いわけではなく、どちらかと言えばふんわり&ほんのりと言った感じでしょうか。完全掛け流しの湯使いで、湯加減もちょうど良く、湯上りには硫酸塩泉らしいパワーが発揮されて体の芯までしっかり温まります。

この雪沢温泉をはじめとして、大館市内の釈迦内花岡、坂梨峠付近の八九郎古遠部(青森県)など、界隈に点在する温泉の多くは黒鉱の鉱床を掘り当てるべくボーリングしたら湧出してきた温泉であり、かつて当地が鉱山により活況を呈していたことを物語る名残であると言えましょう。館内には温泉分析表の掲示が無かったので、ご主人にデータに関して確認をすればよかったのですが、歴史の話で盛り上がってしまい、温泉のことはすっかり忘れてしまいました。


 
浴槽は縁のみならず槽の全てがヒバ造りです。体を湯船に沈め、肌が槽に触れた時の上品な質感がなんとも言えません。お湯は縁からしっかりオーバーフローしていました。

なお、翌朝には女湯に入らせてもらったんですが、惜しむらくは画像が無いのでビジュアル的にお風呂の様子をお伝え出来ません。簡単に文章で説明しますと、女湯も男湯ほどではないにせよ、なかなか広いスペースが確保されており、床はグレーに塗装され、その真ん中に長方形のヒバ風呂が据えられていました。お湯のクオリティは男女に差は無く、どちらも甲乙つけがたいところです。


 
私の記憶が確かならば(←鹿賀丈史風に)、雪沢温泉の源泉は大館市が所有しており、各施設が市有源泉の分配を受けているはずです。てことは「大雪」もここからお湯を引いているのかな。上画像は市の貯湯タンクでして、県道沿いのとってもわかりやすいところに設置されています。


温泉分析表掲示なし
(ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉 54℃ 湧出量400m3)

大館駅より秋北バスの小坂行で「小雪沢」バス停下車すぐ
秋田県大館市雪沢小雪沢101  地図
0186-50-2323

日帰り入浴時間要確認
日帰り入浴300円
ボディーソープのみ備え付け有り、他の備品類なし、貴重品類は嘲罵預かり

私の好み:★★★
コメント (4)
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