遠刈田温泉の公衆浴場「寿の湯」の近くにある「旅館大忠」の前を通りかかったとき、玄関前に日帰り入浴の利用を歓迎する看板が立てられていたので、その文言に誘われて利用させていただくことにしました。外観は料亭を思わせ、玄関には水が打たれており、館内に入ると帳場の周りをはじめとした廊下は畳敷きになっていました。下足場に靴を脱ぐと、スタッフの方が靴をきちんと並べておいてくれました。
帳場で直接料金を支払い、スタッフの丁寧な説明に従って、右手に進んで浴室へと向かいます。
男湯の脱衣室の壁は紺色に塗られており、そのシックな趣きには誰しもが落ち着くはず。洗面台には紅色の陶器が用いられており、その周りも小洒落た感じにまとめられています。アメニティ類の備え付けもしっかり。しかもエアコンが取り付けられているので、室温は快適な状態が保たれていました。建物自体は決して新しくないのでしょうが、創意工夫を凝らしたリノベーションにより、居住性も実用性も向上させており、諸々の努力には敬意を表したいものです。
浴室にはシャンプーが備え付けられていますが、その他にも浴室入口にはいろんな種類のシャンプーが用意されており、お客さんの好みに合わせて自由に選べちゃうんですね。こうしたサービスは女性のみならず男性だって嬉しいものです。
ステンドガラスが美しい浴室には、温泉が張られた四角形の浴槽と並んで温泉蒸気の寝湯があり、気品のある大正モダンを連想させる、和洋折衷の素敵な雰囲気です。床には厚い木材が敷かれており、足元から伝わってくる感触が優しく、見た目のみならず肌感触も上品な浴室です。
温泉蒸気の寝湯に敷かれているスノコの下では、70℃の源泉がシャワー状に流されており、スノコのスリットから湯気が上がって体をじんわりと温めてくれます。実際に寝っ転がってみますと、上がってくる湯気は結構熱いのですが、決して嫌な熱さではないので、何度も利用して独特の温浴を楽しみました。
洗い場にはシャワー付き混合水栓が4基並んでいます。シャワー前に備え付けられているボディーソープやシャンプー類のケースは、浴室のステンドガラスの色に合わせているのかな。シャワーヘッドから吐出される水流は、中央が太くて円周部が細く、繊細な水流がとても気持ち良いものでした。
結構大きな浴槽は、縁が木で槽内はタイル貼り。木組みの湯口から直接触れないほど熱いお湯が注がれており、縁の切り欠けから排湯されています。湯口の樋はV字型になっており、その下部にはトゲトゲ状の析出がこびりついていました。源泉温度が高いために多少は加水されていますが、加温循環消毒は行われていない放流式の湯使いでして、源泉投入量を絞ることにより加水量をできるだけ減らしているようでしたが、それでも湯船はやや熱めの湯加減でした。
使用源泉は遠刈田の7号泉でして、この源泉は拙ブログで既に取り上げている周辺の他旅館(「あづまや旅館」や「たまや旅館」など)でも引かれている主力源泉のひとつです。湯船のお湯は窓越し降り注ぐ光を受けているためか、橙色に明るく濁っており、底が辛うじて見える程度の透明度でした。他の宿のお風呂より濁り方がやや強いかもしれません。新鮮金気と共に土類系の味と匂い、そして石膏や芒硝の味と匂いが感じられ、湯船に浸かるとキシキシ浴感と同時に全身を毛布で覆われているような優しい安心感に包まれ、遠刈田らしいしっかりとした浴感と、湯上がり後のツルスベ肌を堪能出来ました。
私がお風呂から上がって退館しようとすると、帳場ではその日に泊まるお客さんが続々とチェックインしていました。ネット上での評判を拝見しますと皆さん高く評価なさっているようですが、今回日帰り入浴しただけでも十分に好印象でしたから、人気を集めるのも納得できます。お風呂は今回利用した内湯の他、露天の貸切風呂があり、別途料金(1回3000円)を要しますが日帰り利用も可能とのこと。次回は是非宿泊利用してみたいものです。
遠刈田7号泉
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉 68.7℃ pH7.0 蒸発残留物2081mg/kg 溶存物質2256.2mg/kg
Na+:389.8mg(52.87mval%), Ca++:276.0mg(42.92mval%),
Cl-:234.1mg(21.58mval%), SO4--:876.6mg(59.66mval%), HCO3-:342.1mg(18.34mval%),
H2SiO3:74.7mg, CO2:186.3mg,
源泉が高温のため加水
加温循環消毒なし
白石蔵王駅・白石駅よりミヤコーバスの遠刈田温泉方面行バスで遠刈田湯の町バス停下車・徒歩1分
宮城県刈田郡蔵王町遠刈田温泉旭町1 地図
0224-34-2306
ホームページ
日帰り入浴11:00~20:00
600円
シャンプー類・ドライヤーあり、貴重品類は帳場預かり
私の好み:★★★