温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

小林温泉

2013年10月26日 | 山形県

茅葺屋根の農家が残る山形県酒田市郊外の小林地区へとやってまいりました。この長閑で寓話的な景色を眺めていると、どこからともなく市原悦子や常田富士男のナレーションが聞こえてきそうです。


 
集落の中心には鄙びきった集落の公民館が建ち、そしてその後背には長らく使われていないような滑り台や錆びたブランコが草に埋もれていました。この広場に子供の歓声が響いていたのは、一体いつのことでしょうか。夕刻近くに訪れたためか、周囲の景色から醸しだされる哀愁がより際立っているようでした。


 
そんな集落の一角にひっそりと佇む「小林温泉」は、その外観から想像するに集落のための共同浴場かとおもいきや、実は宿泊もできちゃう、本格的な温泉施設なのであります。



玄関を入ってすぐ左に開かれている窓口で、明るく朗らかなおばちゃんに料金を支払います。この玄関ホールではカラフルな手編みの籠がたくさん販売されていたのですが、この地域では有名な工芸品なのでしょうか。



窓口で料金と引き換えに受け取った入浴料領収書です。財布に入れて数日経た後に撮影したため、真ん中が折れ線が残ってしまいました。



公民館のような雰囲気の館内には、地元の小学生による小林温泉への応援メッセージが掲示されていました。その寄せ書きのひとつひとつに目を通していたら、何だかとってもほのぼのしちゃいました。


 
コンパクトな造りの脱衣室は辛うじて2~3人が同時に利用できるかどうかという狭さですが、室内は非常によく手入れされており、とっても綺麗で清潔、腰掛けやドライヤーも用意されていますので、使い勝手も良好です。そして流し台に活けられているお花が温かい印象を与えてくれました。なお脱衣室前の廊下にはロッカーも設置されていますが、もし使用の際は受付でカギを借りることになります。
旅行をしていると、一丁前の金額をとるくせにお掃除が中途半端なお宿がありますが、そういう残念な旅館は是非この小林温泉を見倣っていただきたいものです。


 
脱衣室のコンパクトさに呼応する感じで、浴室も民宿やジモ専クラスの小ぶりな空間ですが、改修されてまだ間もないためか、非常に明るくて清潔感が漲っており、快適な環境が保たれていました。室内にうっすらとたゆたうタマゴ臭は、お湯から香っているのでしょう。
室内には長方形の浴槽がひとつ据えられ、洗い場にはシャワー付き混合水栓が3基設置されています。カランから出るお湯はごく普通の真湯ですが、350円の施設ながらボディーソープ・シャンプー・リンス(いずれもイオングループのPV)が完備されている点は大いに評価したいところです。


 

窓の外には一面緑が広がっています。緑を構成するのは山の木々と手前の水田や畑なのですが、手前の耕地は半分近くが耕作放棄地のようであり、野放図に伸びた深緑の雑草を見つめていると、手放しで「長閑」と表現できない物悲しさが伝わってきます。なお浴室の裏手に立っているのは貯湯タンクでしょうね。


 
浴槽は3人サイズで、縁には御影石のプレートが用いられ、槽内はタイル貼りです。湯船のお湯はライトグレーに弱く濁っています。こちらの源泉は湧出時の温度が10度しかないため、浴用には加温したお湯が張られており、循環や消毒こそ行われていないものの溜め湯式の湯使いとなっていて、利用者が好みに合わせて各自でコックを開き、加温されたお湯や生の冷鉱泉を湯船に投入します。訪問時はどなたもいらっしゃらなかったので、私もこのコックを開けて自分好みの湯加減に調整してみました。

2つ並んでいるコックのうち、注目すべきは「源泉」と書かれた左側の水栓であり、これを開けると非加温の冷たい鉱泉がドバドバと吐出されるのですが、これが非常に魅力的でして、そばに置かれているコップで飲泉してみますと、明瞭なタマゴ味と弱い苦味、そして微かな砂消しゴム的硫黄味とアルカリ性泉的な微収斂が感じられました。また吐出と同時にふんわりと芳しいタマゴ臭も室内に放たれました。

できるならば湯船をこの冷鉱泉だけで満たしたいのですが、他のお客さんも利用するお風呂ではさすがにそうもいきませんから、すぐに加温湯でリカバリーできる範囲内で冷鉱泉を投入し、とってもぬるい状態でじっくりと全身浴させていただきました。いかにもアルカリ性に傾いているタマゴ水らしい、心地の良いツルスベ浴感がしっとりと肌に馴染み、あたかも化粧水の中に浸かっているような沖融感を堪能することが出来ました。そして湯上がりの爽快感も実に素晴らしく、強く印象に残る浴感でした。なお入浴後はお湯で元の湯加減まで戻しておきましたが、この沸かし湯が非常に熱く、直に触って火傷しそうになったので、もし今後こちらで入浴される方はその点にご注意を(ハンドルで温度調節可能)。


村上源泉
アルカリ性単純冷鉱泉 10.9℃ pH9.1 蒸発残留物342mg/kg 溶存物質453.8mg/kg
Na+:117.1mg,
Cl-:13.4mg, HS-:0.3mg, SO4--:18.0mg, HCO3-:259.3mg, CO3--:16.2mg,
H2SiO3:18.2mg,
供給量の不足を補うため加水
入浴に適した温度に保つため加温
放流式・消毒なし

羽越本線・砂越駅より庄内交通バスの小林行で「小林温泉」バス停下車、徒歩1~2分
山形県酒田市小林杉沢117-1  地図
0234-54-2130
酒田市公式サイト内の紹介ページ

10:00~19:00 火曜および年末年始定休
350円
シャンプー類・ドライヤーあり、ロッカー使用の際は番台で鍵を借りる

私の好み;★★+0.5
コメント (6)
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