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津軽平野の西部では藩政時代の新田開墾に伴って多くの溜め池が築かれましたが、その中でも最大規模である廻堰大溜池には津軽富士見湖という別称が付けられており、湖面に映る岩木山や青森ヒバで造られたアーチ橋の「鶴の舞橋」が織りなす景色は、まるでモネの絵画を想像させるほど美しく、私が大好きな津軽の風景のひとつでもあります。
そんな津軽富士見湖の湖畔かつ鶴の舞橋の袂に建っている宿泊施設「つがる富士見荘」ではクオリティの高い温泉に入浴することが出来ますので、先日利用してまいりました。
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宿泊利用者は正面玄関から出入りできますが、日帰り入浴客はその左側にひっそりと開かれている専用の勝手口から入り、下足場でスリッパに履き替えます。
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入口こそ宿泊客と日帰り客で分けられますが、館内に入ると両者は合流し、宿泊利用時のチェックインと同じフロントカウンターで入浴料金を支払います。施設内にはお風呂が2室あり、昼間の時間帯は日帰り入浴でも両方利用できますので、今回はまず日帰り入浴客の利用可能時間が短い「展望大浴場」から入ってみることにしました。
●展望大浴場
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フロントの右手を進み、津軽富士見湖を右手に見ながら浴室へ。落ち着きのある暖色系の内装でまとめられている脱衣室は宿泊施設に相応しく良く手入れされており、空調も効いていて、快適に利用できました。
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津軽富士見湖を臨む大きな窓から外光が降り注ぐ浴室は、窓の下に大きな浴槽が据えられ、ゆとりのある洗い場にシャワー付き混合水栓が計7基設置されています。
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室内には源泉が注がれている上がり湯があり、そこから溢れ出るお湯によって流路に当たる床は黒く染まっていました。
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縁が緩やかな曲線を描く浴槽は14~5人サイズ。窓から外を眺めますと鶴の舞橋が正面に映っていました。なおこの窓ガラスにはマジックフォルムが貼られているので、外側から覗かれる心配は御無用。
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小さなドーム状の湯口から源泉が注がれており、湯船を満たしたお湯は惜しげも無く縁から溢れ出てゆきます。湯口付近の湯面は気泡に覆われ、あちこちでプチプチと泡が弾けていました。もちろん入浴中の肌にも気泡が付着してきます。
お湯は茶褐色の半透明で、口にすると塩味と出汁味の他、金気味と炭酸味、そして湯口限定で薄いタマゴ味といったように多様な味覚が感じられ、モール泉的な芳醇な芳香とともに金気臭が鼻孔をくすぐってきました。食塩と重曹のダブル効果によるツルスベ浴感の他、引っかかる浴感も拮抗しているようでした。また湯上がりは食塩泉的な温浴感と重曹泉的な爽快感が共存しているような不思議な感覚が全身を包んでくれました。
●多目的ホール大浴場
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続きまして、フロント左側の階段でアンダーパスを潜った別棟にある「多目的ホール大浴場」へ向かいました。日帰り入浴で早朝や夜間に利用する場合は、「展望大浴場」は宿泊者限定となるため、こちらのみの利用となります。アンダーパスを上がった先には薄暗くて寒々しいホールが広がっており、その奥にちょこんと設けられている小上がりを挟んだ左が女湯、右が男湯です。
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いかにも旅館らしい内装だった「展望大浴場」の脱衣室とは異なり、こちらは広いながらも実用的な雰囲気が強く、エアコンが無い代わりに扇風機がブンブン回っていたり、棚や籠がたくさん並んでいたり、調和よりも明るさを重視したカラーコーディネートが採用されていたり、なんとなく公衆浴場のような空気感が支配しているようでした。
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2階層となっているお風呂がこの「多目的ホール大浴場」の大きな特徴でしょう。下段には大きな四角い浴槽が、上段にはやはり大きくて丸い浴槽がそれぞれ据えられており、上下両方に洗い場が設けられています。なお下段には9基、上段には8基のシャワー付き混合水栓が取り付けられており、お湯は沸かし湯が出てきます。
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下段の浴槽はタイル貼りの長方形で14~5人サイズ、壁際の浴槽縁には装飾の石が並べられて視覚的なアクセントとなっています。斜め上を向いたパイプから温泉が噴き上がっており、湯船のお湯は他の浴槽と同様に縁からしっかりオーバーフローしています。後述する上段の浴槽よりもややぬるく、万人受けする湯加減となっていました。
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一方、上段の浴槽は真円のほぼ10人サイズで、温泉は岩の湯口から落とされ、全ての縁より溢れ出ているお湯は洗い場の床を漱ぎ、その流路を焦げ茶色に染めていました。なお下段の浴槽より若干熱めの温度となっているように感じられました。
上下段の両浴槽ともにお湯は「展望大浴場」と同じ源泉を用いているのですが、湯使いが異なるのか、味や匂い、そして湯中における泡付きまで「展望大浴場」の方が優れているように、私には感じられました。
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上段にはまん丸い浴槽のほか、サウナや水風呂も併設されているのですが、この水風呂が実に爽快なのです。おそらくこの水風呂で使われている水は単なる水道水ではなく、温泉とは別個に掘られた井戸水ではないかと推測されるのですが、冷たすぎない25℃前後のとても入りやすい水が蛇口からドバドバ注がれており、火照りやすいここの温泉に入った後でこの水風呂に入れば、どんなに暑い日でも湯上がりはすっきりさっぱり。私は丸い湯船とこの水風呂を何度も行き来して、冷温交互の入浴を楽しみました。
大沢温泉2号泉
ナトリウム-塩化物温泉 44.5℃ pH7.03 湧出量222L/min(動力揚湯) 溶存物質3.105g/kg 成分総計3.303g/kg
Na+:980.2mg(91.25mval%), Mg++:17.7mg, Fe++:1.0mg,
Cl-:1301mg(78.42mval%), SO4--:102.0mg(4.53mval%), HCO3-:481.5mg(16.86mval%),
H2SiO3:132.4mg, CO2:197.9mg,
五能線・五所川原駅もしくは陸奥鶴田駅より弘南バスの五所川原~鶴田線(廻堰経由)で「廻堰十文字」バス停下車、徒歩20分弱(1.5km)
青森県北津軽郡鶴田町廻堰大沢71-1 地図
0173-22-3003
ホームページ
展望大浴場9:00~16:00
多目的ホール大浴場7:30~21:00
350円
ロッカー(※)・シャンプー類・ドライヤーあり
(※)100円リターン式、多目的ホール大浴場に設置。展望大浴場には無し
私の好み:★★+0.5