日本全国に「長寿」と称する温泉浴場は一体いくつあるのでしょう。施設名ではなく、浴室名を含めたら、それこそ星の数に匹敵するかもしれません。その中でも今回は庄内地方の中心都市である鶴岡で市民から熱い支持を得ている「長寿温泉」を取り上げます。大雑把に表現するとこの温泉は鶴岡ドリームスタジアムのバックネット裏あたりに位置している民営の公衆浴場であり、周囲には閑静な住宅街が広がっています。私が訪れたのは閉館間近の夜8時過ぎでしたが、広い駐車場には多くの車が止まっており、人気の高さが窺えました。
玄関ドアは入口と出口で分けられており、入口は外側から向かって左側です。館内に入って下足箱に靴を収め、帳場で直接料金を支払います。ロビーには、二代目の四股名を継ぐ前の貴花田、旭富士、貴ノ浪、曙、貴闘力、舞の海など、相撲が大人気を博していた平成初期の力士のサインがたくさん並べられていました。あの頃の相撲は本当に面白かったなぁ…。また帳場の前には流し台が設置されているのですが、これは温泉の飲泉所でして、ちゃんと保健所から飲泉許可を受けているのであります。
浴室はいかにも公衆浴場らしく、全面タイル貼りの実用本位なものであり、左右に洗い場がシンメトリに分かれ、奥に大きな浴槽がデンと据えられています。洗い場には左右合わせて計10基のシャワー付き混合水栓が取り付けられており、カランから出てくるお湯は源泉使用です。
室内の壁には源泉がどこから汲み上げられ、どのような経路を辿って浴槽へ供給されるのか、そのプロセスをイラストでわかりやすく説明したプレートが掲示されていました。それによれば、地下888mという、何とも縁起の良い(末広がりの)八並びの地中より54℃の温泉を汲み上げ、一旦高架式の貯湯タンクにストックされてから、浴槽へ注がれているんだそうです。
決して新しい施設ではないのに、浴室は綺麗な状態が維持されているのですが、それもそのはず、常連さんのマナーがとても良いようでして、どなたもご自身が使用した腰掛けや桶は、きちんと元の場所へ戻して整理整頓に務めていらっしゃいました。気持ちのよいお風呂というのは、施設側のみならずお客さんの心がけがあってこそ、保たれてゆくのですね。
浴槽は大小に二分割されており、それぞれに対して湯口から源泉が供給されています。まずは左側の大きな湯船から見てゆきますと、白い析出が線状に付着した石の投入口から50℃近いアツアツのお湯が10~12人サイズの湯船へ落とされており、44℃近い熱めの湯加減となっていました。
一方、小さな方は4~5人サイズで、2つの蛇口から源泉と冷水が投入されており、加水のおかげで大きな浴槽よりも入りやすい湯加減となっていました。源泉が出てくる蛇口には白い析出がビッシリとこびりついていますね。
さて肝心のお湯についてですが、見た目は無色透明ながら僅かに霞んでいるようにも見えます。口に含むと弱石膏味と弱芒硝味が、そして弱芒硝臭が感じられました。グリーンタフ系の温泉なのかな。入浴すると硫酸塩泉らしいトロミと引っ掛かりのある浴感が得られ、近所の湯田川温泉に似ているフィーリングが感じ取れました。加温循環消毒は行われておらず、特に左側の大きな浴槽は加水も行われていない完全掛け流しであり、浴槽の縁からふんだんに溢れ出ていました。鮮度感が高くて熱めのお湯に体を沈めると、その熱さで全身の毛穴がきゅっと引き締まり、体の内部から元気が漲ってくるようでした。こんな温泉に毎日入れる近所の方が羨ましくてなりません。
長寿源泉
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩温泉 55.6℃ pH8.6 蒸発残留物1887mg/kg 溶存物質1832mg/kg
Na+:349.5mg, Ca++:233.6mg,
Cl-:161.2mg, SO4--:1001mg,
H2SiO3:42.0mg,
鶴岡駅前より庄内交通バスの新山鉱泉行で美原団地バス停下車・徒歩5分、もしくは机行で小真木原運動公園前下車・徒歩8分(700m)
山形県鶴岡市小真木原町5-11 地図
0235-23-2614
6:00~21:30(入館は21:00まで) 第2・4木曜定休
350円
ロッカー(無料)あり、基本的な入浴道具の販売あり
私の好み:★★★