温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

白神温泉 静観荘

2013年10月17日 | 青森県

青森県津軽の西海岸にある深浦町は、交通アクセス的にかなり奥まった場所に位置しているので、固い意志を持って訪れようとしない限り、なかなか行く機会に恵まれない秘境めいたエリアですが、それゆえ人の手が付けられていないような素晴らしい大自然の宝庫でもあり、わざわざここまでやってきて五能線の「リゾートしらかみ」号の車窓を眺め、あるいは国道101号線をツーリングするなどして、世界遺産の白神山地や日本海の大自然が織りなす絶景をみなさん堪能していらっしゃるわけですね。そんな深浦町域でも、特に秋田県境にあたる旧岩崎村は、青森県の各市町村よりも秋田県からアクセスしたほうが近い場所にあって、所用で鰺ヶ沢に屡々訪れる私でも旧岩崎村にはあまり訪れたことがありません。
その旧岩崎村の中心部にあたる、駅や役場支所の近所には「世界遺産憩いの宿」という文言を名称に冠している温泉宿「白神温泉 静観荘」が営業しており、こちらのお湯がなかなかの絶品であるので、真夏の某日、立ち寄り入浴で利用してまいりました。



暖簾が掛かった玄関を入りますと、この時の館内は薄暗くて人がいる気配が無かったのですが、カウンターには料金箱が置かれていますので、そこへ100円玉を3枚納めて館内へ入らせていただきました。


 
玄関を上がって右手へ進み、廊下を歩いて浴室へと向かいます。右(下)画像に写っている衝立の向こうが浴室です。脱衣室は一見綺麗に見えますが、室内にはトイレからの「芳香」が忍び込んでいますし、棚の上は雑然と物が置かれ、しかもなぜかデカいアブが数匹飛び交っていました。


 
お風呂は男女別の内湯でして、浴室は2方向が横長のガラス窓となっており、その下に浴槽が一つ据えられています。お風呂はお世辞にも手入れが行き届いているとは言えず、天井のペンキはあちこち剥げてめくれており、壁タイルの目地にはコケが生え、窓の出っ張りには細かいゴミが散らかったままになっていました。たまたま掃除直前のタイミングに訪れちゃったのかな。なお洗い場にはカランが9基並んでおり、うち2基はシャワー付きです。


 
窓のすぐ前には五能線の線路が敷設されており、タイミングが良ければ目の前を列車が横切っていきます。そしてその奥には日本海の海原ものぞいています。この時も運良く「リゾートしらかみ」の「橅」編成が五所川原方面へ走り去っていきました。線路からは至近距離にあるので、その隔たりだけで考えると、車窓から浴室内は丸見えのはずなのですが、幸か不幸か窓がかなり汚れているので、この曇りが上手い具合に目隠しになっており、こちらの様子に気づく乗客はいないものと思われます。


 
浴槽はかなり広くて10人近くは同時に入れそうな大きさを有しています。浴槽の縁には温泉成分の析出がコンモリとこびりついており、大部分は赤茶色やアイボリー色に染まっていますが、一部は緑色に変色していました。このお湯が洗い場まで流れちゃうと浴室内がボコボコになって歩きにくくなっちゃうわけですが、それを未然に防ぐためか、浴槽の周囲にはオーバーフローのお湯を受け止める樋が設けられており、湯船のお湯が洗い場へ流れるようなことはありませんでした。
湯船に張られているお湯は弱い貝汁濁りを呈しています。槽内はワインレッドの小さな丸いタイルが敷き詰められているのですが、泉質由来なのかメンテナンスの問題か、底は野湯みたいにややヌルヌル気味でした。



この温泉はお湯が実に秀逸であります。析出がコンモリと盛り上がった湯口からは、ジュワジュワと音を立てながらお湯が吐出されており、付近の湯面を泡で覆っていました。そして湯面全体では炭酸の気泡がパチパチと弾けていました。湧出温度がやや低いために季節によっては加温されるそうですが、この日はおそらく非加温状態かと思われる40℃弱のお湯が供給されており、口にすると明瞭な塩味と出汁味、そして弱金気味と強い炭酸味が感じられ、臭素臭と土気臭に加えて少々の金気臭が嗅ぎ取れました。重曹泉的なツルスベ浴感が実に爽快であるとともに、入浴中は炭酸の気泡が(少々ですが)肌に付着し、湯上がりも炭酸の温浴効果が発揮されて、いつまでも体内から発熱しているかのようなポカポカ感が持続しました。貝汁濁りで析出コンモリ、そして塩味と出汁味を含む炭酸のお湯といえば、良泉揃いの奥会津の温泉を彷彿とさせます。季節による加温こそあるものの、加水循環消毒のない放流式の湯使いです。

炭酸たっぷりのお湯は本当にすばらしく、不感温度帯に近いぬるめのお湯ですので、いつまでもじっくり浸かっていたかったのですが、訪問したのが一年で生命活動が最も盛んになる真夏だったためか、室内には炭酸ガスにおびき寄せられた大きなアブが余多飛んでおり、そんな吸血性のアブにロックオンされた私は室内という逃げ場のない環境で殺(や)るか殺(や)られるかという状況に追い込まれ、奴らの猛襲に遭いながら、そしてキ●タマの袋をガブリを噛まれて悲鳴をあげながらも、タオルをブンブン振り回して数匹撃退し、結局落ちついて入浴できずに退散する羽目となってしまいました。年間でアブが暴れまわる期間は夏の間だけでしょうから、私が訪れたタイミングが悪かったのかもしれませんが、まさか室内でアブたちに襲われるとは思ってもよらず、当地がいかに自然豊かな場所であるかを実感した次第です。時季を改めて再度訪問し、今度こそはじっくりと湯浴みしたいものです。もちろんお宿の方は可能な範囲内で頑張ってお手入れしているのでしょうけど、施設としてのB~C級感の強さは否めず、せっかくの良泉が勿体無い気がします。美人なのに字が汚いとか整理整頓ができないとか、あるいはイケメンなのに虫に弱いとかスポーツ音痴だとか、そんな残念な感じを抱きました。


ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物温泉 36.5℃ pH6.7 湧出量測定不可(動力揚湯) 溶存物質6.976g/kg 成分総計7.519g/kg
Na+:1933mg(90.22mval%), Mg++:38.5mg(3.39mval%), Ca++:67.7mg(3.63mval%),
Cl-:1145mg(35.13mval%), Br-:3.0mg, SO4--:420.7mg(9.53mval%), HCO3-:3102mg(55.28mval%),
H2SiO3:149.0mg, HBO2:29.3mg, CO2:542.8mg,

五能線・陸奥岩崎駅より徒歩6分(500m)
青森県西津軽郡深浦町岩崎平舘7-4
0173-77-2411

日帰り入浴時間不明
300円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント
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