温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

象潟温泉 サン・ねむの木

2013年10月25日 | 秋田県
 
松尾芭蕉ゆかりの地である秋田県象潟や隣接する金浦には塩辛い食塩泉と硫黄の冷鉱泉という全く性質が異なる2種類の温泉(鉱泉)が湧いています。前者のお湯に入れるのは道の駅「ねむの丘」など大規模施設が目立ちますが、冷鉱泉を使用している施設は金浦の「学校の栖(すみか)」や象潟の「サン・ねむの木」など、ちょっとわかりにくい場所に位置している比較的マイナーな施設が多いようです。美的感覚のみならず、キャラクターや境遇などに対しても陰翳礼讃である私としては、どうしても後者の方に心が惹かれますので、今回は冷鉱泉の使用施設のひとつである「サン・ねむの木」へ立ち寄って入浴利用してまいりました。海岸沿いの松が生えた小高い丘の上に建つこちらのお宿は、いかにも昭和の公共宿泊施設らしい、ちょっと古めかしい建物でして、ここで本当に立ち寄り入浴できるのか不安になってしまいそうな、あまりに地味で物静かな佇まいでした。


 
フロントで料金を支払ったら、目の前にある階段の下でスリッパに履き替え、階段で3階まで上がります。


 
ウッディな内装の脱衣室はよく手入れされていて綺麗です。室内には貴重品用ロッカーが備え付けられており、洗面台は2台設置。扇風機も回っているので、湯上がりのクールダウン対策もバッチリですね。


 
洗い場以外の3方向がガラス窓になっている浴室は、特に浴槽が面している2方向は下辺まで窓なので、内湯らしくない開放感と展望が得られます。
なお洗い場にはシャワー付き混合水栓が7基設置されています。


 
窓からは民家越しに日本海が、反対側からはなだらかに広がる由利高原が望めました。付近では羽越本線の線路が横切っているので、たまに踏切の音や列車のジョイント音が響いてきます。この日は盛夏の真っ只中だったのですが、その暑さゆえか、アブラゼミが大量発生しており、網戸や庇にしがみつきながらジージー唸って、その大音響が室内に木霊していました。


 

浴槽は10人サイズで、縁は黒い御影石のような石材が用いられており、槽内は十和田石のような緑色凝灰岩が敷き詰められています。多孔質の石材は肌触りが心地よいですから、浴槽におしりを付けたときの柔らかな感触は実にコンフォータブルでした。

湯口から吐出されるお湯は加温循環消毒がなされたものでして、無色透明でほぼ無味、硫黄が劣化したような匂いの残骸が微かに漂っています。冷鉱泉ですから加温は当然として、消毒に関しても積極的に実施されていることが窺われ、脱衣室内には「レジオネラ症対策に真剣に取り組み、徹底した衛生管理を行っていますので安心して入浴をお楽しみください」と記された貼り紙が掲示されていました。温泉ファンとしてはあまりお目にかかりたくない文言ではありますが、お年寄りの利用者が多い温泉施設にとって、塩素消毒による病原菌の感染回避は切実な問題であり、万一問題が起きた時は施設が責任を負わなきゃいけないわけですから、中途半端に掛け流すより循環消毒を採用する施設側の事情を、一介の利用者としては斟酌しなければなりませんね。とはいえ、塩素臭は殆ど気になりませんでしたし、縁からはお湯が静々と溢れ出ていましたから、薬剤使用量はできるだけ抑えられているとともに、循環しつつ一定量の新鮮源泉も追加投入しているのでしょうね。


 
でも加温循環消毒のお湯のみならず、冷鉱泉の生源泉を直接湯船に投入できるのが、このお風呂の非常に良いところであります。縁からニョキっと突き出た源泉の水栓を開けると、ドバドバと勢い良く冷たい源泉が吐出され、その瞬間、プーンと芳しいタマゴ臭が放たれます。またその鉱泉水を口にすると芳醇なタマゴ味が口腔内を駆け巡りました。総硫黄4.5mgという立派な硫黄泉なのであります。まるで埼玉県秩父地方でよくみられるタマゴ水のような、実に明瞭なタマゴ感を有する冷鉱泉に触れ、私は俄然興奮してしまいました。この鉱泉水を張った水風呂に入ってみたいなぁ…。この時は後から入る他のお客さんへ迷惑が及ばない程度に、この源泉を湯船にたっぷり入れ、できるだけ冷鉱泉の濃度を高くした状態で湯浴みを楽しみました(使用後は源泉の蛇口をきちっと締めましょう)。

国道沿いの道の駅「ねむの丘」はこの日大混雑でしたが、こちらは終始私一人の独占状態でした。穴場的存在と言えましょう。


単純硫黄冷鉱泉(硫化水素型) 14.5℃ pH8.4 溶存物質599.5mg/kg 成分総計599.5mg/kg
Na+:126.2mg,
Cl-:147.2mg, HS-:2.2mg, S2O3--:2.3mg, HCO3-:228.3mg,
H2SiO3:40.4mg, H2S:0.1mg未満,
入浴に適した温度に保つため加温
衛生管理のため循環ろ過装置を使用
秋田県公衆浴場条例の基準を満たすため塩素を使用

象潟駅・金浦駅・羽後本荘駅より羽後交通バスの本荘・象潟線で「蚶満寺前」バス停下車徒歩3~4分(約300m)、あるいは羽越本線・象潟駅より徒歩20分(1.5km)
秋田県にかほ市象潟町字才の神31  地図
0184-43-4960
ホームページ

日帰り入浴9:00~17:00 火曜定休
300円
貴重品用ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント
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