盛夏の某日、秋田県の泥湯温泉でひとっ風呂浴びようと、以前拙ブログで取り上げた「豊明館」を訪おうとしたのですが、あいにく休業中で固く扉を閉ざしていたため(※)、第二候補である「小椋旅館」で日帰り入浴をお願いすることにしました。私がこちらを訪れるのは6~7年振りです。拙ブログでも以前に「豊明館」の記事で述べましたが、旅館名の「小椋」は木地師に見られる典型的な姓名であり、全国の小椋さんの祖先を追ってゆくと近江国(滋賀県)愛知郡小椋庄にたどり着くことは、民俗学の世界ではよく知られた話です。
通りを挟んで旅館棟と浴場棟の2つに分かれており、まず旅館棟で料金を支払ってから、反対側の浴場棟へと向かいます。
(※)「豊明館」はどうやら長期休業のようです。ついでに言えば、泥湯温泉唯一の飲食店である「どろゆ食堂」も玄関が戸板で打ち付けられ、店じまいしてしまったようでした。当地ではちゃんとした昼食が摂れなくなっちゃいましたね(奥山旅館の売店で玉こんにゃくかおにぎりなら食べられますが…)
「山の湯」と書かれた浴場棟を入りますと、薄暗い館内は天井が低くて床が軋み、山奥の秘湯らしい鄙びた風情たっぷり。この日、隣の「奥山旅館」は多くのお客さんで賑わっていましたが、対照的にこちらは混雑とは無縁の静かな時間が流れていました。
立派な露天風呂が用意されている「奥山旅館」と違って、こちらは男女別の内湯があるばかりの、至って古典的且つシンプルなお風呂があるばかり。脱衣室も極めて質素でありますが、そのシンプルさこそ私のような温泉ファンのハートを鷲掴みにしてくれるんですね。
総木造の浴室には四角い浴槽が一つと洗い場の水栓が2つ、そして奥の方には打たせ湯も用意されています。洗い場に設けられてる2つのオートストップ式水栓からは、ボイラーのお湯が吐出されるのですが、この時はチョロチョロとしか出てきませんでした。
総木造の浴槽にはパイプから源泉が投入されており、縁からしっかりと溢れ出ていました。湯船のお湯は薄いグリーンを帯びた明るいグレーに濁っており、浴室に入った時には浴槽内のステップが目視できましたが、私が湯船に入ると槽内の沈殿が撹拌されて濁り方が強くなり、透明度がほぼゼロになってしまいました。
お湯を口に含むとマイルドな酸味があり、口腔を少々収斂させます。その他、弱塩味やイオウ味、そして粘土のような味が感じられました。湯面からは仄かにイオウ臭や泥のような匂いが漂っています。まさに「The 泥湯」という感じのお湯です。この時は先客がたっぷり加水したのか、ややぬるめの湯加減となっており、じっくり長湯を楽しめました。
槽内にはお湯を濁らせる湯泥が沈殿しており、特に湯口直下にはたくさん溜まっていましたので、その湯泥を掬って桶に入れてみました。湯船に浸かった人は誰しもこの泥を手に取りたくなるようで、湯船上の壁には泥による文字や手形がたくさん残されていました。湯浴みの想い出なんですね。
山の湯温泉
単純酸性泉 64.9℃ 溶存物質429.8mg/kg 成分総計519.8mg/kg
Na+:11.1mg, Ca++:12.3mg, Al+++:7.8mg, Fe++:7.2mg,
Cl-:5.0mg, HS-:10.6mg, S2O3--:0.1mg, HSO4-:10.6mg, SO4--:199.7mg,
H2SiO3:162.7mg, CO2:90.0mg, H2S:<0.1mg,
秋田県湯沢市高松泥湯沢25
0183-79-3035
300円
備品類なし
私の好み:★★★