温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

日奈久温泉 浜膳旅館

2016年01月24日 | 熊本県
 
日奈久温泉では「浜膳旅館」で一晩お世話になりました。先日拙ブログで取り上げました「松の湯」の前にあり、規模の大きなお宿ですから、温泉街の中でも比較的目立っています。傾斜地の地形に沿って建てられているため、ちょっと変則的な構造になっており、ロビーはエレベーターで3階へ上がります。


 
お宿の方の対応はとっても丁寧。チャックイン時にはロビーにてウェルカムドリンクのお茶をいただきました。



こちらのお宿は一般的な旅館と異なり大浴場が無く、その代わり各客室に温泉のお風呂が備え付けられています。このため、日帰り入浴は可能ですが、貸切利用のみ受け付けているようです。つまり空いている(あるいは日帰り用として確保している)客室のお風呂を使うことになるのでしょうね。フロント前には券売機も設置されていました。


 
今回は某大手宿泊予約サイトを通じて、一人旅専用2食付きの得割プランで予約したため、通されたお部屋は1~2名様向けと思しき6畳の小さな和室でしたが、綺麗なお部屋にはひと通りの備品が揃っており、居心地良好で快適です。


 
腹が減っては戦どころか湯浴みもできません。花より団子を人生の信条とする大食漢の私は、実は温泉よりもお食事が楽しみだったりします。通常よりも安い設定のプランでしたが、夕食はお部屋出しであり、しかも「安いのにこんな充実させて大丈夫なの?」と驚いてしまうような品数とボリュームに、思わず欣喜雀躍してしまいました。上画像は黒豚の豆乳しゃぶしゃぶ、お造り、前菜3点、そして茶碗蒸しです。これだけではなく…


 
ぶりの煮付け、伊勢エビの黄金焼き、揚げ物も出されました。いずれも厨房から出来立てが運ばれてくるので、熱々の状態でいただけました。


 
美味しいものが次から次に目の前に現れると、ついつい食い意地が張って、もっと美食を楽しみたくなってしまうのが、貪婪な人間の性というもの。おすすめメニューとしてリストアップされていた中から、紋甲イカのお造りを追加注文してしまいました(左or上画像)。言わずもがなですが、とっても美味い! もちろんご飯やお吸い物、そして食後のデザートもついてきます。


 
翌日の朝食は見晴らしの良いお座敷でいただきました。セルフで陶板で焼く目玉焼きの他に、ボリュームの大きなものは無く、その代わりに小鉢がたくさん並べられ、卓上は日本旅館らしい和の献立で彩られていました。


 
さてお食事を紹介した後は、お宿ご自慢であるお部屋のお風呂に入りましょう。上述したようにこちらのお宿は、大浴場が無い代わり、各客室に温泉のお風呂が備え付けられているのが大きな特徴です。もちろん今回利用した少人数向けの小さなお部屋にも、ちゃんと温泉が引かれたお風呂がありました。つまり宿泊中は好きな時に好きな分だけ、誰にも邪魔されることなく温泉に入れるのです。
私はちょっと早めにチェックインしてしまったため、入室時にはまだお湯が完全に溜まりきっていなかったのですが、見方を変えれば、お客さんが入れ替わる度にお湯もちゃんと張り替えられているということであり、溜めっぱなしではなく、誰の肌にも触れていないフレッシュな状態のお湯に入ることができるわけですね。


 
浴槽は四角形の石板張りで、2人同時に入っても寛げそうなサイズがあります。左側の縁には壺が2つ並んでいますが、これは湯口ではなく単なる飾りであり、お湯は2つの壺の間にあいた穴から、チョロチョロと音を響かせながら注がれていました。槽内でお湯の吸引や供給が行われているような形跡は見られず、お湯は全て縁の切り欠けから溢れ出ており、この状況から推測するに、完全掛け流しと判断して間違いないでしょう。

客室内には温泉分析書が掲示されており、湧出地として記されている所在地とお宿の所在地は同一でしたので、仲居さんにその辺りの事情を伺ってみますと、こちらのお宿では敷地内にある自家源泉を使っているとのこと。協同組合で管理している混合泉は無味無臭の単純泉ですが、こちらの源泉は食塩泉であり、見た目は無色透明ながら、弱いながらもはっきりとした塩味が感じられました。また浴感に関しても組合管理の単純泉で得られたようなサラッとした癖のないタイプとはちょっと毛色が異なる、ツルスベでありながらも少々のトロミと弱いグリップが効くような引っかかりを有しており、大袈裟な表現をすれば塩化土類泉を思わせるような重くて硬い感じすら帯びているように思われました。実際に浴槽をよく見ますと、湯面ライン上や湯口周りには塩化土類と思しきベージュ色の成分付着が確認できましたので、私が感じた土類的なフィーリングは決して誤認ではないはずです。見た目とは裏腹の複雑な知覚的特徴を有するこのお湯に浸かっていると、全身がしっとりとした優しさに包まれ、湯上りには汗が引かず、食塩泉らしい力強い温浴効果がいかんなく発揮されたのでした。


 
 
浴槽の傍では焼き物のウサギが私を見つめていました。お部屋は海側の小高い場所にあるため、浴室の窓からは温泉街、そして不知火海が見渡せます。窓を開けて開放的な半露天状態にし、自分の好きな時に好きな分だけ、誰にも邪魔されることなく、温泉街を見下ろしながら掛け流しの温泉で湯浴みを愉しむひと時は、まさに殿様気分。
日奈久で最もお洒落なお宿であるらしく、私が泊まった日は平日なのに多くのお客さんで賑わっていましたが、野暮な私ですらも人気を博するのが納得できる、実に素敵なお宿でした。


ナトリウム-塩化物温泉 43.9℃ pH7.72 溶存物質1718mg/kg 成分総計1722mg/kg
Na+:545.2mg(85.82mval%), Ca++:68.5mg(12.37mval%),
Cl-:870.7mg(89.28mval%), Br-:2.6mg, HS-:0.9mg, HCO3-:168mg(10.00mval%),
H2S:0.2mg,
(湧出地:八代市日奈久中西町字西町379-2-2)
(平成16年10月20日)

肥薩オレンジ鉄道・日奈久温泉駅より徒歩12分(約1km)
熊本県八代市日奈久中西町379  地図
0965-38-0103
ホームページ

日帰り入浴(貸切) 10:00~22:00
平日2000円/60分 or 2500円/90分、土日祝2300円/60分 or 3000円/90分
各種入浴用具販売あり

私の好み:★★★
コメント (2)
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