温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

吹上温泉 みどり荘 前編(内湯)

2016年01月30日 | 鹿児島県
 
今回から鹿児島県薩摩地方の温泉を巡ってまいります。まずは日置市吹上温泉の名湯であり、「日本秘湯を守る会」の会員宿でもある「みどり荘」から。石畳が敷かれた正面入口では、明治45年に創業した当時のままの姿を残す屋敷門がお出迎え。


 

門を潜った先にある受付棟で日帰り入浴をお願いします。と言っても受付には券売機がありますので、この機械で料金を支払い、券をカウンターへ差し出すだけでOK。私のような一見はもちろん、回数券を発行しているほど日帰り入浴welcomeなんですね。みどり池を中心にして広がる園内にはいろんな棟が池畔に沿って点在しており、池を周回する遊歩道が各棟を結んでいます。


 
客の姿を見つけては餌をねだるアヒル達を横目にしながら、池畔の小径を歩いて浴場棟へと向かいました。


●内湯
 
お風呂は内湯と露天風呂(宿泊客は家族風呂も利用可)があるのですが、両者は離れていますので、拙ブログでも別々に取り上げさせていただきます。私がはじめに利用したのは内湯棟です。男女両内湯の入口にそれぞれ家族風呂の扉も並んでいました。つまり家族風呂は2室あるってことですね。


 
出入口の扉に手を掛けようとした時点で、辺りに漂う硫化水素臭に気づきました。浴室の外まではっきりと香ってくるんですから、浴室の中では余程強く嗅ぎ取れるのでしょう。期待に棟を膨らませながら脱衣室へお邪魔します。ウッディーな室内は綺麗に整頓されており、ロッカーや扇風機、ドライヤーなどひと通りの用具類もきちんと備わっていました。
この室内で目を引くのが、壁に掲示されているFAQ。入浴客がこの温泉に関して抱くであろう疑問に答えており、例えば「石鹸・シャンプーがないのはなぜ?」という問いに対して、「良質の天然温泉には垢を洗い落とす成分があり、湯につかるだけで洗浄できるほど」であるため、また「自然を守る為、良質の温泉をお肌で感じて頂くため」に、露天風呂では石鹸・シャンプーの利用を控えてほしい、と説明されていました。また「室内大浴場と露天風呂の泉質の違いは?」という湯めぐりを趣味とする私にとっての大きな関心事に対しては、室内大浴場(および家族風呂)は町から供給されるお湯と自家源泉のミックスであり、露天風呂は自家源泉のみである、おすすめは自家源泉のみの露天風呂である、という自信満々の返答が記されていました。それだけ自分の源泉に誇りを持っているのですね。ますます楽しみになってきましたので、一秒でも早くお湯とご挨拶するため、さっさと素早く脱衣して浴室へと向かいます。


 
大きな窓からみどり池を一望する開放的な浴室は、この景観を眺望しながら湯浴みするという一点に全神経が注がれているような造りでもあり、余計な飾りなどがないためか、明るく開放的でありながらも落ち着きを感じさせる空間です。もちろん室内にはイオウ由来のタマゴ臭が充満しており、温泉情緒をより高めてくれました。


 
大きな窓に面して据えられた横に長い浴槽は、目測でおよそ8m×3mの石板張り。ちょっと離れて浴槽を見ますと、まるで池と同化しているかのようです。槽内の石板の表面は、温泉に含まれる硫黄と鉄分が結合した硫化鉄が付着するためか、黒く染まっているように見えました。また浴槽のお湯は基本的に無色透明ですが、湯中では半透明の膜状のものや黒いものなど、数種類の形状をした湯の花が舞っており、これによってお湯自体も若干深緑色を帯びているように見えました。


 
 
池とは反対側に洗い場があり、お湯と水のカランのペアが計6組並んでいました。どのカランも硫化のため黒ずんでおり、硫黄泉であることをビジュアル的に実感させてくれます。お湯のカランを開栓すると、ほんのり黒くてぬるめのお湯が出てきました。このお湯からは硫化水素の匂いがはっきりと漂ってきましたから、カランのお湯も源泉使用なんですね。なお上述のようにお宿では石鹸類の使用をすすめていませんが、どうしても使いたいお客さん向けに、秘湯を守る会オリジナルの「秘湯くまざさ」アメニティシリーズが用意されていました。


 
浴槽へお湯を注ぐ湯口はふたつあり、いずれも白や黄色の結晶がビッシリとこびりついていました。この湯口や湯面から放たれる香りは上述のようなタマゴ臭なのですが、より細かく表現すれば、ちょっと焦げたような感じも混じっており、チオ硫酸インを多く含むアルカリ性泉にありがちな、深くて濃いタマゴ臭が存在感を主張しているように思われます。また味覚に関しては、はっきりとした苦味を伴うタマゴ味が得られました。湯船に浸かるとツルツルスベスベの非常になめらかな浴感が得られましたので、浴中は何度も自分の肌を摩ってその滑らかさを楽しみ、あまりに気持ち良い浴感と落ち着いた入浴環境、そして芳醇なタマゴ臭が相まって、湯船から上がるのがためらわれるほど、実に素晴らしい湯浴みを堪能できました。

内湯だけでも極上なのですが、つづく露天ではどのようなお風呂に出会えるのでしょうか…。

後編につづく
コメント
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