温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

飯坂温泉 旅館なかや

2016年01月13日 | 福島県
 
穴原温泉での湯浴みを終えた後はレンタサイクルで飯坂温泉へ戻り、当地でも1湯立ち寄り入浴致しました。今回お邪魔したのは、飯坂温泉のシンボルである共同浴場「鯖湖湯」の十字路から、銀行側へちょっと上がった通り沿いにある「なかや旅館」です。日帰り入浴に関する案内などは特に表示されていませんが、玄関で声をかけて日帰り入浴をお願いしますと、快く且つ丁寧に対応してくださいました。



玄関から鉤状に折れた廊下の先に浴室があり、手前側が男湯、奥が女湯という感じで並んでいます。脱衣室はかなりコンパクトな空間で、カゴは4つしかありませんが、ちゃんと洗面台は設置されていますし、ドライヤーや扇風機の備え付きもあり、綺麗に清掃されていますので、使い勝手に問題はありません。


 
曇りガラスの引き戸を開けて浴室へ。
浴室内も小ぢんまりとしているのですが、竹垣を模した飾りの他、滑らかな曲線を描く黒御影石の浴槽、大理石のような優しい肌触りの石板タイルなど、随所に和の情緒を漂わせる上品な誂えがなされており、日本旅館としての矜持が感じられました。浴室の右側にある洗い場にはカランが2つ並んでいるのですが、うち1基はシャワー付きで、もう一つは浴槽に加水するためのホースが接続されています。


 
浴槽はヨットの帆のような形状をしており、手前側の縁で滑らかな弧を描く黒御影石の縁は、日本の伝統的な刃物の反りを思わせる美しさです。湯面が光をキラキラと反射しており、縁や槽内ともに黒基調のシックな色合いでもありますので、浴槽全体が日本刀のように映えていました。なおキャパは3人程度ですが、今回は私で独り占めさせていただきましたので、悠々自適に湯浴みを堪能できました。


 
底面にあいた小さい穴は排湯用のオーバーフロー管であり、その出口である洗い場の床の穴からは絶えずお湯が静々と吹き上がっていましたが、私が浴槽に入ると、さすがにこの細い管だけでは追いつかず、縁の上からザバーッと豪快に溢れ出てゆきました。おそらく完全放流式の湯使いかと思われます。


 
扇型の石板を3枚積み重ねた湯口からは熱いお湯がチョロチョロと注がれており、浴室ではお湯の滴る音が響くばかり。瞑目してお湯と対峙するにはもってこいの環境です。飯坂の湯らしく、吐出口の周りには硫酸塩の白い析出がこびりついていました。こちらのお宿では「湯沢分湯槽」からお湯を引いており、共同浴場「鯖湖湯」でも同じお湯が引かれています。

お湯は無色透明で、微細な黒い浮遊物、そして褐色の膜が千切れたような浮遊物が、それぞれチラホラと湯中を舞っていました。いずれも湯の花なのでしょう。お湯を掬ってテイスティングしてみますと、パラフィンを思わせるような硫酸塩由来の味と匂いがあり、微かな塩味もあったような無かったような・・・。ちょっと熱めの湯加減だったのですが、それゆえ心身がシャキッと冴え、それでいてしっとり優しく包まれるようなフィーリングも感じられます。またアルカリ性泉であるにもかかわらず、硫酸塩の存在の影響なのか、サラスベのなめらかな浴感とともに、いかにも硫酸塩泉らしい引っかかりも拮抗しており、意外と複雑な浴感を有していることが体感できました。同じお湯を引く施設は他にもありますが、公衆浴場と違ってお宿のお風呂は利用者の数が限られていますから、コンディションの良いお湯をじっくりと味わうことができるのが、こうしたお宿のありがたいところです。
小さいながらも好印象でお湯の質も良い、素敵な一湯となりました。


湯沢分湯槽(湯沢源泉・筑前源泉・一本松源泉・財産区大島源泉・24号源泉・大門源泉、以上6源泉の混合)
アルカリ性単純温泉 52.5℃ pH8.6 217L/min(動力揚湯) 溶存物質0.6236g/kg 成分総計0.6236g/kg
Na+:162.1mg(85.04mval%), Ca++:22.3mg(13.39mval%),
Cl-:72.2mg(24.73mval%), OH-:0.1mg, SO4--:231.6mg(58.42mval%), HCO3-:53.1mg(10.55mval%), CO3--:9.6mg,
H2SiO3:62.6mg,

福島交通飯坂線・飯坂温泉駅より徒歩5~6分
福島県福島市飯坂町湯沢25  地図
024-542-2582

日帰り入浴時間不明
400円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
コメント (4)
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