温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

2016年1月 台湾総統選を野次馬的に「観光」

2016年01月28日 | 台湾
※今回の記事に温泉は登場しません。あしからず。

既に各メディアで報道されているように、今年1月16日に行われた台湾の総統選挙では、民進党の蔡英文氏が国民党の朱立倫氏にダブルスコア近い大差をつけて勝利し、同時に行われた立法院(日本の国会)議員選挙でも民進党が単独過半数を獲って、8年ぶりの政権交代は、ねじれのない民進党の圧勝、国民党の惨敗で幕を下ろしました。

この選挙が行われた日の前後数日に私は台湾を訪れ、いつものような温泉巡り等の観光を楽しみつつ、そのついでに、毎度お祭り騒ぎのような盛り上がりを見せる台湾の選挙運動の様子を、野次馬根性で簡単にウォッチングしてみました。しかしながら結論から申し上げれば、選挙運動が禁止される投票当日はもちろんのこと、本来なら盛り上がってしかるべき投票前夜や前々夜でも、「本当に選挙やるの?」と首を傾げたくなるほど、街中でも地方でも盛り上がりに欠け、ごく普通の日常とあまり変わらないような光景が広がるばかりでした。いや、もちろん選挙事務所へ行けば、いつもようなどんちゃん騒ぎが繰り広げられ、まるでライブ会場のような熱狂が渦を巻いていたはずなのですが、普通に街を歩いているだけでは、その熱気がほとんど感じられませんでした。これは、台湾の民主主義が成熟して冷静な選挙を志向するようになってきた証なのかもしれませんが、結論が誰の目にも明らかで、活動するだけ無駄だったという、ある種の諦め(あるいは楽勝)ムードが台湾中を覆っていたからかもしれません。
選挙に関する分析や今後の政局など、詳しいことは専門家におまかせするとして、あくまで一介の外国人が適当にまわって見聞しただけの野次馬的「観光」としての選挙を、今回の記事で取り上げさせていただきます。もうニュースとしての旬は過ぎてしまいましたが、あくまで一個人の旅行記としてお付き合い下されば幸いです。


●台北の街 選挙2日前
 
 
私が台北の街に降り立ったのは、選挙が行われる2日前のこと。松山空港からMRTを乗り継ぎ、連日冴えない天気が続いて南国らしくない肌寒さが続く台北の中心部をウロウロしていたところ、台湾選挙ではおなじみの、大きな広告が随所で目につきました。例えば、通りを走る路線バスの車体には、候補者の名前と上半身をプリントしたラッピング広告がデカデカと貼られていましたし、交差点など目立つ場所では候補者の名前がまるで隙間を埋めるかのように貼り出されていました。上画像に写っているバスの中扉には、作り笑いを浮かべる国民党の総統および副総統候補である朱立倫と王如玄が大きく写っており、その左に今回の国民党のキャッチフレーズである"ONE TAIWAN"の文字が躍っていますね。
とにかく目立つことに命を懸けるのが台湾の選挙。台北アリーナ前の斜前に立つショッピングモール「微風南京」では、建物の交差点側をほぼ全て覆い尽くす形で、巨大な広告が掲示されていました(右下or最下の画像)。これは「選挙に行こう」キャンペーンではなく、親民党の広告です。どの陣営も広告に莫大な資金をつぎ込んでいるのですね。
このように広告自体は相変わらず派手でしたが、しかしながら、どの街を歩いても、肝心の街宣活動が繰り広げられていなかったのです。ま、事前にちゃんと調べて、しかるべきタイミングでしかるべき場所に行けば、テレビで報じられているような熱狂的なフィーバーを目にできたのかもしれませんが、台北の街はなかなか広く、そこまでのリサーチ力と行動力が無い私には無理な話でした…。


 
日が暮れて帰宅する通勤者が街に出てくるタイミングで、ようやく選挙運動をする辻立ちの姿がチラホラと現れ始めました。また、私が夕食を食べていた庶民的な食堂では、運動員が各テーブルを回ってチラシとポケットティッシュを配っており、一介の旅行者且つ外国人である私も調子に乗ってそれを貰ってしまいました。地元選挙区で団扇をあげた程度で公選法に抵触してしまう日本とは異なり、こちらはとにかく粗品(選挙事務所にいけば軽食)を配って、少しでも有権者の印象に残ろうと必死の攻勢をかけてくるのです。私の記憶が確かならば、台湾の選挙においては一品当たり30元(日本円で約120円)を超えない範囲内で、グッズの無料配布が許されているはずです。


●民進党・蔡英文の本部
 
台北駅から程近い、北平東路の通り沿いにある民進党・蔡英文陣営の選挙事務所(本部)へ行ってみることにしました。上述のように決戦直前である投票2日前に訪れたのですが、既に勝利を確信していたのか、早くも本部前の通りを車両通行止にして道路を封鎖し、大きな仮設テント及びステージの設営が行われている真っ最中でした。また通りを挟んだ反対側では報道クルーもカメラをセッティング中でした。でも決戦間近だというのに、本部の前にはひと気があまりなく、本当にここが優勢の伝えられている候補者の本部なのかと疑いたくなるほどでした(尤もこの時、蔡英文陣営はキャラバンを組んで、南から北へ台湾を縦断していたのですが・・・)。


 
既に一部の仮設テントは組み上がっており、内部でさらなる準備が行われていました。そんな民進党一色に染まったエリアにもかかわらず、仮設テントの目の前の路地には、対抗する他政党の広告も堂々と掲示されているのですから、その意地らしさは微笑ましくもあります。


 
さてさて、実際に本部の中へと入ってみましょう。民進党のカラーである緑色を基調とした館内は、映像資料や印刷媒体などで公約をアピールする党のPRスペースになっており、私のような部外者を含め、誰でも自由に入場可能です。画像を見ますとテレビのカメラが写っていますが、実際に館内では若い有権者に対して取材が行われていました。上述にて、国民党のキャッチフレーズフレーズは"ONE TAIWAN"であることに触れましたが、対する民進党は"LIGHT UP TAIWAN"でした。何気ない文言ですが、国民党の方は、世論の対立を承知の上でそれでもひとつにまとめあげるべきだとする主張が伝わってくる一方、民進党は「台湾は台湾として輝くのよ」という主張がコピーの向こうに見え隠れしているようでした。



一人の日本人として見逃すことができなかったのが、この必勝ダルマです。日本の選挙事務所には欠かせないグッズですが、まさか台湾の地でこれを目にするとは思いませんでした。内側はもちろん外側からもよく目立つ、本部内の通り側に置かれていたのですが、これって日本に対する何らかのメッセージだったりするのかな?
説明によれば、これは蔡英文が昨年10月に東京を訪れた際、在日本の台湾人が主催した晩餐会で寄贈されたものなんだとか。この記事を書くにあたって調べたところ、10月6日に永田町・キャピトル東急の大宴会場「鳳凰」で在日台湾同郷会主催の「蔡英文氏を励ます会」(会費\30,000)が催されていますので、おそらくその会で手渡されたものなのでしょう。まだこの日は選挙前でしたので片目状態ですが、おそらく16日夜の勝利宣言後に右の目も黒く塗られたことと思います(説明にも勝利の暁には両目を黒く塗ると書かれていました)。
余談ですが、キャピトル東急が会場となった理由は、単に蔡英文の宿泊先が同ホテルであったからだと思われるのですが、この会の2日後である10月8日、まだ蔡英文が滞在していた同ホテルへ、実弟や山口県関係者との会食のためにやってきたのが安倍首相。おそらくこの際に両者は秘密会談を持ったと推測されていますが、会ったことを表立って公表してしまうと中国がうるさいので、一応表向きには、両者がたまたま同じタイミングで同じホテルに居合わせただけ、ということになっているそうです。このダルマの左目はそうした動向を見ていたのでしょうか。


 
ところで、私がこの本部へ行ってみようと思い立ったきっかけは、昨年大晦日に出た毎日新聞の「民進党・蔡主席グッズ人気 カップ、Tシャツ、枕…」という記事です。基本的に私はノンポリですし、他所の世界の政治に関してあーだこーだ言う筋合いもありませんので、別にどちらかの陣営を応援するつもりは無かったのですが、昨年の時点で既に蔡英文の勝利は誰の目にも明らかでしたから、私も勝ち馬に乗って物見遊山の気楽な気分で、今しか買えないグッズを入手してみようと思い立ったのです。
グッズ売り場は選対本部の奥にあり、その名も「小英商號」。日本語っぽく訳すと「英ちゃんショップ」になるのでしょうか。当たり前ですが、店内には蔡英文グッズが所狭しと陳列されており、ここだけは客もスタッフもたくさん集まってヒートアップしていました。


 
 
上画像が販売品であるグッズの数々。かつての原宿などで見られたタレントグッズのお店を彷彿とさせますが、下北沢か自由が丘あたりの雑貨屋さんみたいに小洒落ており、とてもここが選対本部だとは思えません。蔡英文は猫が好きとのことで、猫に絡めたグッズもたくさんありました。一部では、独立志向を表面化させたら選挙にも当選後の政権運営にも不利なので、その志向を隠している、猫を被っているその猫のことだ、などと揶揄する見解もあるそうですが、果たして実際はどうなのでしょうか。
文具から衣類・生活雑貨など実に多種多様のものがグッズ化されていたのですが、でも単なる物販ではなく、候補者や党に対する献金も含まれているのか、一つ一つの値段が高く設定されており、各グッズを複数買い込むことは躊躇われました。どれを買おうか迷っていたところ、蔡英文に猫耳をつけて萌えキャラ化した気持ち悪いちょっと変わったデザインのグッズ(ディスプレイ用のクリーニングクロス)を見つけたので、今回は敢えてその気味悪い風変わりなものを買ってみました(右or下画像)。どうやら民進党としては、萌えキャラを好むような一部の若者を取り込むべくこのようなキャラを作り出したらしいのですが、その効果はよくわからず、実際のところは空回りだったようです。盤石と思われていた民進党でも、細かいところをみていけば、いろいろと迷走していたようですね。そんなことをしなくても、台湾の若者は民主主義に対して誠実であり、みなさん期末試験を控えていながら、きちっと本籍地のある故郷に帰って一票を投じていたのでした。


●桃園市街
 
翌日予定していた秘湯巡りに備えて、その日の晩に桃園市へと移動しました。ちなみにその秘湯については、またいずれこのブログにて紹介させていただきます。
橋上駅舎化されたばかりの台鉄桃園駅前では、帰宅する通勤者に対して、各党の運動員が粗品のプレゼント攻勢を繰り広げていました。


 
交差点など目立つ場所は立候補者の幟、看板、横断幕などで埋め尽くされていました。このような光景は桃園だけでなく、台湾全土でも同様です。でも、こうした静的且つ物質的な盛り上がりこそ見られるものの、台湾の選挙名物であるお祭り騒ぎは、どこへ行っても全く見られませんでした。どんちゃん騒ぎを期待していた私としては、かなり拍子抜け・・・。


●山間部や農村部
 
秘湯を目指すついでに、都市部から離れた田舎の様子もちょっと見てみましょう。翌朝、私は桃園市街でレンタカーを借り、桃園と宜蘭の境界付近にある山奥の秘湯を目指していたのですが、その道中の山間部でも、路傍には広告がデカデカと掲出されていました。左(上)画像は台7線(北横公路)の桃園市復興区界隈。市街地からはかなり離れた山間部なのですが、にもかかわらず沿道にはデカイ広告が連続して立てられていました。山の美観も景観もあったもんじゃありません。ちなみに右(下)画像に写っている10番の女性は、原住民枠で立候補しているタイヤル族出身の高金素梅候補。彼女の言動については毀誉褒貶があり、どんな言動をしているかはここでは触れませんが、ま、台湾にもいろんな人がいるんだと思い知らされる人物であります。


 
さらに山道を車で進んで行くと、山しかない場所なのになぜか渋滞中。この渋滞の先頭では、当地の立法院議員立候補者やその支持者達が車列を組んで大行列をなしていたのでした。追い越しができないほど長蛇の列を組み、しかも見通しの悪いワインディングをチンタラ走るものだから、いくら交通量が少ないとはいえ、後続が次々に詰まっていってしまうのです。
いつまでもこの車列に付き合っていられないので、先が見通せるところでアクセルを踏み込みこの車列を追い抜かしたところ、私の車のすぐ後方でバンバンと爆竹が爆ぜる音が響きました。図らずもこんな山奥で台湾選挙の洗礼を受けてしまったわけですが、この爆竹も台湾の選挙には欠かせないアイテムですから、選挙の盛り上がりを期待していた私にとっては、寧ろ願ったり適ったりの出来事でした。


 
ところかわって、こちらは台湾中部の南投県埔里近郊に広がるマコモダケ水田です。南投県は伝統的に国民党が強い地域であり、今回の選挙でも国民党が優勢を保った数少ない選挙区となりましたが、水田の畦道や電柱などあちこちに国民党や同党の立法院議員候補である馬文君氏の横断幕・広告等が掲示されていました。でも面白いのが、必ずと言って良いほど、その近くに国民党批判の広告も張り出されているところ。右(下)画像の幕には青天白日ロゴがプリントされているので、一見すると国民党の広告に見えますが、文章をよく読めば「(南投県選挙区の国民党立候補者である)馬文君と、(支持率が低い)馬英九は同じ一族だぞ。馬文君を支持することは、すなわち馬英九をも肯定することになるんだぞ(それでもいいのか)」という脅し文句が書かれているように、この幕は民進党陣営が掲出したものでした。日本でこんなストレートな表現をしたら問題になっちゃいますよね。こうして張り合っちゃうところが実に面白い。


●選挙翌日の新聞
台湾では本籍地のあるところで投票することになっています。このため選挙前日は、投票の帰省をするため、各交通機関が大混雑。バスや鉄道などの座席はほぼ満席状態となり、各高速道路や主要幹線道でも渋滞が発生していました。それだけ台湾のみなさんは老若男女を問わず選挙に対して真面目なのですね。どこかの国の国民のように、行政サイドがどれだけ譲歩しようとも、いろんな言い訳を口にしてちっとも投票にいかず、そのくせ上から目線で文句ばかり垂れ続けるような、民主主義を愚弄する態度はとらないのです。

投票当日は朝からテレビ各局が出口調査の結果などを元に開票速報を伝えており、私もテレビやネット中継などで注視していました。日本ではアナウンス効果を避けるために、投票締切(午後8時)を待ってから各社一斉に予想を出しますが、台湾では投票真っ最中の朝から予想をバンバン出していました。特に予想公表による世論誘導などは考慮されていないようです。
午前中は予測が拮抗している選挙区もあったものの、投票の締切時間(即日開票)である午後4時を回る頃には既に大勢が判明し、昨年の時点から蔡英文の優勢が伝えられていた総統選はおろか、情勢がどうなるかわからなかった立法院議員選挙ですら民進党が単独過半数の議席を獲得。高雄や台南では国民党が議席を失う事態となり、既に報じられているような民進党の快勝、国民党の歴史的な惨敗となったのでした。

なお選挙当日、私は台湾中部の中規模都市にいたのですが、国民党の力が強い地方だからか、選挙が行われているような雰囲気が全く感じられず、むしろ標高3000mを超す合歓山の上の方で積雪があったからそれを見に行こうとする観光客が騒いでいるような状況で、テレビで報じられているような台北の熱狂は、少なくともこの地方の街には全く届いていませんでした。選挙の盛り上がりを期待していた私としては、ちょっとガッカリ…。


 
選挙翌日の17日に、コンビニで台湾4大紙のうちシェア上位2紙を購入しました。左(上)画像は「自由時報」、右(下)は「アップルデイリー(蘋果日報)」です。笑顔で手を振る蔡英文が、両紙の一面でドデカく躍っています。各紙とも選挙報道に多くのページを割いており、台湾初の女性総統の誕生、そして民進党の躍進を大々的に伝えていました。「蘋果日報」の「狂勝」という表現はなかなかキャッチーですね。


 
一方、左(上)画像は「蘋果日報」2面に掲載されていた国民党のゴメンナサイ広告。しょんぼりしている国民党候補の朱立倫の横顔とともに「私の努力が足らず皆さんを失望させてしまった」という言葉で始まる反省コメントが記されていました。ものすごく切ない構図ですけど、でも翌朝の新聞に掲載されたということは、この新聞の締め切りに間に合うよう、敗戦の広告原稿が事前に用意されていたということでしょうか?

この反省広告で寂しい表情を浮かべている朱立倫ですが、彼はちょっと貧乏くじを引いちゃった部分があり、且つ、昨年春の立候補者選定時点でグズグズしたツケが回って、なるべくしてなったような気もします。というのも今回の総統選において、国民党は当初、女性の洪秀柱を公認候補にしていましたから、蔡英文との女性対決になると目されていたのですが、この洪おばちゃんは中国との統一志向が強く、いずれ台湾は中国と一緒になるのよ、という類の発言を繰り返したため、このままだと選挙に勝てないと判断した国民党は、昨年10月に土壇場のところで、洪おばちゃんを無理やり公認候補から引きずりおろしました。でも国民党にとって負け戦になるのが明白なこの総統選で、好き好んで敗戦処理を名乗り出るような立候補者が現れず、党内の有力者が「お前がやれよ」「お前こそやれよ」と牽制し合っている中、仕方なく手を挙げたのが国民党主席であり新北市長も務めていた朱立倫でした。主席という立場だとはいえ、これってほとんどダチョウ倶楽部の上島竜兵状態です(右or下画像)。ギリギリのタイミングで止むを得ず代替候補者となったこの朱立倫も、以前「新北市長の職を辞してまでして、総統選には立候補しない」と発言した経緯があるため、世論は朱氏の言行不一致を見逃さず、足並みをそろえて再出発しようという朱氏の掛け声も虚しく響くばかりで、情勢を挽回することなんてできず、予想通りに国民党の敗戦となったわけです。私は特定の政治思想を持たない野次馬の外国人と言いつつ、どちらかといえば泛緑の方に肩入れしたいような考えを持っているのですが、今回ばかりは朱立倫にちょっぴり惻隠の情を抱いてしまいました。


●選挙4日後
 
選挙の4日後、台湾各地を巡っていた私は、帰国のため再び台北の地に戻ってまいりました。帰国前に私の好きな水餃子の店に立ち寄るべく、林森北路を歩いていたのですが、道中からちょっと寄り道すれば民進党本部なので、熱狂の後はどうなっているのか、その様子を確かめに行ったのです。熱しやすく冷めやすい台湾人気質だからか、あるいは肌寒く冷たい雨が降っていた平日の昼下がりだったためか、圧勝の熱狂が過ぎ去ってからまだ間もないのに、民進党本部前は至って静かで、不気味なほど平穏でした。
この本部前には中央芸文公園の大きな広場が広がっており、選挙当日はここに万単位の支持者が集まったわけですが、私が再び訪れた時、広場はガランとしており、宴の後と言うべき静寂に包まれていて、本部の表通り側もシャッターが閉められていました。ということは、もう本部で蔡英文グッズは買えないのかな?


 
本部の前ではテレビ局の中継車が待機中でしたが、特に蔡英文が出てくるような気配は無かったので、さくっと見学した後、私はさっさと水餃子屋さんへ向かいました。

私が「観光」として見てきた台湾の総統選は以上のような感じです。一言でいえば、総じて意外にもおとなしい選挙でした。しかしながら、台湾の方々の選挙に対する熱い思いは各所で現れており、それが時として派手なパフォーマンスにつながってゆくのでしょう。日本と違って台湾は選挙の争点がはっきりしており、その結果が生活や経済へダイレクトに影響するからこそ、有権者の皆さんは真剣且つ情熱的に一票を投じるわけですが、とはいえ、民主主義のありがたさを忘れかけている日本で暮らす私の目に、この地の光景は実に羨ましく映りました。
まだ蔡英文が実際に政権を握るまで時間がありますが、新しい政権はどのような舵取りをして、台湾をいかなる方向へ導いてゆくのでしょうか。早くも大陸からは「台湾総統選を受け中国が「観光客激減」の報復措置、倒産ラッシュは不可避か」などという流言蜚語に近いレベルの噂が放たれており、今後も同様の牽制球がどんどん投げつけられるでしょう。こうした大陸からの嫌がらせにうろたえることなく、尚且つ上手い具合に大陸との距離感や関係を保ちつつ、毅然とした台湾らしさを貫いていただきたいものです。

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コメント (4)
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