温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

強羅温泉 翠光館

2011年06月23日 | 神奈川県
 
強羅公園に隣接する「翠光館」は、看板や幟を立てて積極的に立ち寄り入浴を受け入れている旅館。こちらでは自家源泉を使用していると聞きつけたので、どんなお湯か伺ってみることにしました。

 
なかなか立派な玄関ですね。エントランスではワンちゃんがうたた寝の最中。
玄関手前の業務用車(ハイエース)が駐車されているスペースには、塩ビのパイプから熱いお湯がチョロチョロ出てバケツに注がれていました。きっと温泉に違いありませんが、何に使うのかしら。


2010年5月にリニューアルオープンしたらしく、館内はどこもかしこもピカピカで綺麗。この画像はフロント前ロビーの様子です。浴室は4階にあるので、エレベータで上へ。なおロッカーは1階にあります。


脱衣所も清潔整然。服と荷物を籠に入れてお風呂へGO。

 
日の光がふんだんに降り注ぐ明るい浴室の大きな窓ガラスからは強羅公園を一望できます。高いところに設けられている展望風呂って、たとえ内湯でも爽快ですね。洗い場のカランはシャワー付き混合栓が4基。


こちらで使用されているお湯は自家源泉(掘削泉)なんだそうです。大涌谷や早雲山で造成して引湯してきた人工の温泉を使用している施設が多い強羅で、自家源泉の天然温泉に入れるのは嬉しい限り。微かに黄色を帯びた透明のお湯は、微かな塩味を有し、弱いがはっきりとした油臭が感じられます。気持ちよいツルスベ浴感です。源泉温度が高いために加水されているようですが、それでも湯口での温度は熱く、温度調整のためか(あるいは訪問時だけなのか)お湯の投入量は絞られていました。館内の表示によれば加温や循環は無く、塩素系の消毒剤が投入されているそうですが、実感として消毒に関してはあまり気になりませんでした。湯使いは放流式(掛け流し)で、洗い場側にはオーバーフローせずに窓側の排水溝へ流れ出ていました。

 
こちらには上で紹介した4階の展望風呂以外にも、2階に貸切の「木風呂」と「陶器風呂」が用意されているんだそうです。意外と湯量が豊富なのかもしれませんね。また、4階のベランダに出ると、外輪山と中央火山丘に挟まれた早川の谷(宮の下方面)が眺望できました。いい眺めですよ。ここでビール飲んだら美味いでしょうね。東京が酷暑の日でも箱根は朝晩にはかなり涼しくなりますから、節電が叫ばれる昨今、東京から近い箱根で避暑するのもいいかもしれません。
全体的には綺麗で良いお風呂なんですが、箱根という場所柄、いかんせん料金設定が高いところがちょっと気になってしまいます。ま、この料金を払えば強羅公園の入園券もオマケでついてくるので、この券の料金(500円)も含まれていると考えれば決して高くないのかもしれませんが、公園なんか興味ねぇよという御仁にはやはり及び腰になってしまうはず。この点をどう捉えるかで、この宿の日帰り入浴の利用価値は大きく分かれてしまうでしょう。


ナトリウム-塩化物温泉 64.9℃ pH7.5 蒸発残留物1.742g/kg 成分総計1.883g/kg

箱根登山ケーブルカー公園上駅より徒歩1~2分(約170m)
神奈川県足柄下郡箱根町強羅1300  地図
0460-82-3351
ホームページ

11:00~19:00
1100円(強羅公園入園券付き)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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強羅温泉 文の郷

2011年06月23日 | 神奈川県
※当記事の本文中で危惧していたことが現実となり、残念ながら2013年3月に閉館となってしまいました。


 
強羅をウロウロしている時、「日帰り入浴」と染め抜かれた幟が立っていたので、それに導かれるように入ってみたのがこの施設。強羅公園構内の公共駐車場のすぐ前に位置しており、比較的わかりやすい場所かと思います。
「文の郷」の文って何の意味があるのかしらと思って調べてみたら、この施設はかつて文京区の保養施設「ごうら荘」だったらしく、行政のスリム化という世の中の流れに乗って2005年に民営化されたのですが、土地や建物の所有権はまだ文京区が所有しているため、どうやらそうした関係で文京区の「文」の字を施設名に含めたみたいです。民営化された今でも文京区民は優待料金で宿泊利用することができ、割引率は一般料金の約6割ほどとなっています。ちなみに一般料金と区民優待料金の差額は、区の財源からこの施設の運営会社へ支払われることになっているので、文京区民は積極的に利用しないと勿体無いですよ。

 
さて、玄関に入って日帰り入浴を乞うと、受付のおばさんは笑顔で実に快く受け入れて下さいました。日帰り客には専用の下駄箱があるので、そこへ靴を収めてスリッパに履き替えます。いかにも昭和の温泉ホテルという感じのロビーです。

 
施設は2棟に分かれており、浴室は各棟に一室ずつしかないため、男湯と女湯を入れ替え制にしています。この時はロビーがある棟のお風呂が男湯、別棟のお風呂が女湯に設定されていました。受付のおばさんがわざわざ浴室まで案内してくれるというので、後に従ってエレベータで2階へ上がり、卓球場の前を通ってお風呂へと向かいます。エレベータの中でおばさんは「うちの温泉は自家源泉で掛け流しなんですよ」とさりげなく教えてくれました。自家源泉で掛け流し! なんて素晴らしい響きなんでしょう。否が応にも期待に胸が膨らみます。


全体的に造りの古い施設ですが、手入れがよく行き届いており、どこも綺麗で清潔。脱衣所も広々しており使い勝手が良好で、室内にエアコンも完備されているため、湯上りにのぼせた体をクールダウンさせることも可能です。

 
浴室のドアを開けると、そこには下へおりる階段が取り付けられていました。階段を降りきったところに浴槽や洗い場があるわけです。余談ですが観光で入れる鍾乳洞ってこんな雰囲気ですよね。浴槽まわりに多くのゴツい岩を配置した、いかにも岩風呂という造りの浴室。内湯のみで露天はなく、岩でもって観光客に温泉の高揚感をもたらすのは古典的な演出ですが、素っ気ない実用的なお風呂よりははるかに雰囲気が良く、天井も高いので意外にも開放感が得られました。


洗い場のカランはシャワー付き混合栓が5基。洗い場まわりは至って普通です。

 
浴槽はひとつだけ。竹筒の湯口から熱々のお湯が注がれています。そして投入される量と同量のお湯が浴槽縁からしっかりオーバーフローしていきます。循環のための吸引口らしきものは見当たらなかったので、受付のおばさんが話していた「掛け流し」は事実でしょう。
お湯は無色透明、弱塩味+微石膏味、湯口付近で油臭+微石膏臭+微芒硝臭が感じられました。食塩泉の味、硫酸塩泉的な匂い・味とトロミと光の反射、そして重曹泉的なツルスベ浴感というように、陽イオンのナトリウムに対応して、各種の陰イオンがそれぞれの個性を発揮している面白い特徴を体感できました。肌への当たりは優しく、湯加減もちょうど良いので、いつまでも入っていたくなる、後を引く優しいお湯なのですが、口に含むと結構硬い味わいなので、そうした硬軟のギャップも興味深いところ。
なお源泉温度が熱いために加水されていますが、成分総計1.5550g/kgという濃度の割にはしっかりと匂いや味が確認できますので、加水量は必要最低限に抑えられているのかと思われます。地盤が硬い強羅で自家源泉ということは間違いなく深くボーリングして得られた掘削泉なんでしょうが、大涌谷や早雲山の造成泉が多い強羅にあって、こうした天然物の温泉に掛け流しの状態で入れるのは、かなり貴重なのではないでしょうか。お湯の質感といい、湯使いといい、箱根のお湯を見直しました。1000円という料金設定はいかにも箱根的ですが、レンタルタオルが大小1枚ずつ付いてくることや、お湯のクオリティを考えると、そんなに高くないのかもしれません。

さてこの「文の郷」ですが、入館すれば誰しも感じるのが、建物の老朽化。非常によく手入れされているので清潔感に溢れているのですが、それでも経年劣化は隠せません。単に古いのではなく、文京区の資料によれば、実は存亡の秋を迎えているほど土俵際に追い込まれているのです。

現状の「文の郷」は、施設や備品は文京区が所有しつつ、民間事業者である株式会社フォレストがそれらを無償で借り受け、営業収入はすべてフォレストのものとなり、1000万円以上を要する大規模修繕の費用は文京区の財源で賄うスタイルをとっています。また上述のように文京区民が優待料金で利用する場合、一般料金との差は文京区の財源から運営会社へ補填されています。要するに、民営化された今でも、文京区が区民の福利厚生のため一方的に支出する形が続いているわけです。

区の保養施設時代は平成3年をピークに以降右肩下がりで利用客数が減少していたのですが、民営化によって一般にも開放されてからは順調に利用客数が回復し、運営会社も平成19年度から黒字収支に転換することができました。しかし利用客の内訳を見ると、一般利用客は増加しているものの、文京区民の利用は激減しています。また、築年数が約30年を迎える上屋は耐震補強工事を行う必要があり、この経費は施設所有者である文京区が負担することになります。

このように多額の大規模工事が必要であるにもかかわらず、区民の利用が減っている現状を鑑みると、文京区がわざわざお金を出してやる筋合いが無いのではないか、施設を廃止して売却または貸付すべきではないか、という方向で検討されているのです。
 文京区の資料「強羅文の郷等のあり方について(中間のまとめ)」(PDF)

一方で、事業存続を求める区民の声も挙がっています。そのほとんどが「たしかに古いけどお湯もサービスもいいから廃止しないでほしい」という意見に集約できますが、意見の数そのものが少なく、区民利用の少なさがここからもよくわかります。
 文京区の資料「強羅文の郷等のあり方について(中間のまとめ)」へのご意見に対する区の考え方(PDF)

いずれにせよ現状の「文の郷」はそう長く続きそうにありません。もし当地で宿泊事業を引き継ぐ企業・団体があらわれても、施設の全面改築は必至となり、となれば現状の「自家源泉・掛け流し」という湯使いが新施設においても継承されるか否かは非常に微妙なところです。
ネット上のクチコミを見ても、高評価の声が多いこの「文の郷」。今後の動向に注目です。


ナトリウム-塩化物温泉 62.4℃ pH7.0 蒸発残留物1.463g/kg 成分総計1.5550g/kg
(加水あり、加温循環消毒なし)

箱根登山鉄道・強羅駅より徒歩5分(急な上り坂を330m)、またはケーブルカー公園下駅より徒歩1~2分(160m)
神奈川県足柄下郡箱根町強羅1300-61  地図
0460-82-3513
ホームページ(音楽が流れるので注意)

※2013年3月に閉館しました
日帰り入浴11:00~16:00
1000円(レンタルのフェイスタオル&バスタオル付)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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強羅温泉 薬師の湯 吉浜

2011年06月22日 | 神奈川県
強羅温泉と一口に言っても、当地で掘削して湧いたお湯もあれば、大涌谷あるいは早雲山から引いてきた造成泉もあり、施設によって使用している源泉が異なるため、事前にきちんと調べておかないとどの施設がどんなお湯を使っているんだか全く見当がつきません。前回は大涌谷造成泉を引いている「五彩館」を記事にしましたが、今回は早雲地獄の蒸気で作られた早雲山造成泉を使用している「薬師の湯 吉浜」を取り上げます。

 
強羅の駅前という好立地に店を構えているこちらの施設は、かつては旅館だったそうですが、今では日帰り入浴専用施設に業態変換して営業を続けています(今でも素泊まりなら可能だそうです)。たしかに玄関はいかにも小規模旅館を思わせる造りです。その玄関ホールには日本産と台湾産の北投石がひとつずつ展示されていました。

 
玄関のすぐ右手に男湯の暖簾がかかっていました。脱衣所は手入れがよく行き届いており、特にアメニティが揃っているわけではありませんが、とても清潔で気持よく使えました。

 
お風呂は男女別の内湯が1室ずつで露天風呂はありません。石板貼りの四角い浴槽は5~6人サイズ、洗い場のカランはシャワー付き混合栓が4基。ケーブルカーの線路脇に位置しているため、浴室の窓からはケーブルカーの架線や車両の屋根・パンタグラフが見えます。
元々旅館の内湯なので仕方ありませんが、800円という料金設定がやや高めな観光地の入浴専門施設でありながら、面白みや風情に欠ける極めて実用的なこのお風呂は、非日常的な楽しみを期待する観光客の評価が分かれてしまいそうです。かといって露天風呂を造るスペースは無さそうですし、観光客にインパクトを与えるようなお風呂を設けるべく上屋を全面改築するのには多大な予算が必要ですし、何とも難しいところです。


浴室の片隅にはミストサウナ室らしきスペースがありますが、この日は全く使われていませんでした。


冒頭にも申し上げましたが、こちらで使用されているお湯は早雲山の造成泉です。白濁して硫黄感が明瞭な大涌谷造成泉と異なり、この早雲山造成泉は無色透明、微かな塩味を有し、湯口でほのかな軟式(ゴム)テニスボール的な硫黄の味と匂いが感じられます。味・匂いともかなり弱めですが、一応塩化ナトリウムが主成分だからか、食塩泉的なツルスベ浴感は意外にもはっきりと得られました。
湯使いは加温加水消毒循環が一切ない素晴らしいもの。源泉温度がかなり高いために投入量を絞ることによって湯船の温度を調整しているようでして、湯口から出る熱いお湯は全て浴槽に注がれているわけではなく、竹を半分に割った筧を湯口にあてがって、お湯の半分近くを浴槽外へ逃がしています。実際に筧のお湯を触ってみると火傷しそうなほど熱く、思わずその場で飛び跳ねちゃいました。

強羅という地名の由来には諸説ありますが、その中のひとつに、早雲地獄から当地へゴロゴロと落ちてくる岩の音から強羅と名付けたという説がありまして、早雲地獄から強羅駅前にお湯が落ちてくる当施設は、まさにこの説を体現しているかのようです。料金の割には面白みに欠けるお風呂をどのように評価するかが問題ですが、造成泉とはいえ放流式でお湯を提供している点は立派だと思います。一般受けの良い大涌谷の白濁した造成泉と違ってこちらのお湯は無色透明で特徴に乏しいものですが、箱根の造成泉にはいろんな種類があるんだということを体験するためにも、ここを含めていろいろと入り比べてみるのも面白いかもしれません。


強羅温泉(5号・6号井混合蒸気造成泉)
ナトリウム-塩化物温泉 64.5℃ pH6.5 蒸発残留物1.410g/kg 成分総計1.484g/kg

箱根登山鉄道・強羅駅より徒歩1分(約80m)
神奈川県足柄下郡箱根町強羅1300-39  地図
0460-82-2258
ホームページ?

10:00~19:00 月曜定休
850円(うち50円は入湯税)
100円リターン式ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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強羅温泉 五彩館

2011年06月22日 | 神奈川県
※残念ながら閉館しました

 
箱根の強羅から早雲山にかけての一帯は企業や団体の保養所が軒を連ねており、一般の観光客がなかなか足を踏みいれることが少ない地域で、言い方を変えれば、日帰り入浴を受け付けている施設も少ないエリアでもあるわけですが、そんな中で積極的に日帰り入浴を受け入れている宿泊施設のひとつが早雲山駅近くの「五彩館」です。県道沿いには入浴を歓迎する幟も立てられおり、入浴をお願いしてもけんもほろろに断られることが多い当地域にあって、玉砕の心配をすること無く訪問できるのですから、大袈裟な表現ですがちょっとした救世主的な存在かもしれません。

 
外観から察するに、元々はここも周辺の施設同様、どこかの企業等の保養所だったのかもしれません。
玄関付近には烏骨鶏が放し飼いされているのですが、このうち画像の手前側に写っているオスが矢鱈に攻撃的で凶暴なので要注意です。画像を撮影後、私はこのオスに凄い勢いで追いかけられちゃいました。コイツを見かけても近づかないでさっさと玄関の中へ入ってしまいましょう。


綺麗で明るい館内。上画像は食堂スペース。
浴室は玄関から右へ折れ、赤いカーペットが敷かれた廊下を真っ直ぐ歩いた突き当たりです。

 
シンプルな造りの脱衣所。棚の上にはなぜか尾瀬を写した2葉の写真が飾ってありました。ここは箱根なのに…。また、100%掛け流しである旨の表示も室内に掲示されています。

 
お風呂は男女別の内湯が1室ずつ。露天はありません。早雲山の高台に立地しているので、お風呂の大きなガラス窓からの眺望が素晴らしく、特に箱根外輪山の明神ヶ岳や明星ヶ岳(大文字焼の山)が一望できます。また窓直下の庭に咲く幾株かの躑躅も綺麗です。


洗い場のカランはシャワー付き混合栓が6基設置されているのですが、硫化防止のためか、水栓の金具が一般的なSUSではなく真鍮のような材質になっていました。


使用されているお湯は仙石原や強羅などでよくお目にかかる大涌谷の噴気造成泉。浴室に入った途端、プンと硫化水素の刺激的な匂いが鼻をくすぐります。レモンタブレットを溶かしたような酸味を有し、口に含むと口腔を収斂させますが、所詮は造成泉なので草津のような天然の酸性泉とは異なり、そんなに攻撃的な酸味ではなく、比較的マイルドです。また石膏味も明瞭です。
湯口から注がれたお湯は画面手前に写っている切欠から排湯されており、完全放流式。湯温はかなり熱いのですが、かき混ぜ棒で湯もみしたら、加水せずに入れる湯加減になりました。


 
私が来るまでしばらく誰も入っていなかったようで、入浴前のお湯は弱く白濁しながらもほぼ無色で透明度を保ち、底に灰白色の沈殿が積もっている状態でした。でもこのままでは熱いので上述のように攪拌したところ、沈殿が一気に舞い上がり、お湯はたちまち強い灰白色に少々の黄緑色を混ぜたような濁りを帯び始めました。画像左(上)は攪拌前、右(下)は攪拌後の浴槽縁の同じ場所を写したものです。攪拌前は浴槽の中の段がはっきりみえているのに対し、後はお湯が濁ったために段が完全に見えなくなってしまいました。

 
湯口も同様に比較してみましょう。攪拌の前後ではお湯の色(濁り)が明らかに異なっていますね。このときはたまたま先客がいなかったのでこのような比較が容易に出来ましたが、もし先客がいても、しばらく誰も湯船に入らなければ、やがて分離が始まり、お湯は無色透明に戻ってゆくでしょう。大涌谷の造成泉は白濁のコロイドが大きいためか、比較的短時間で沈殿しはじめ、白濁を長く維持することはできないみたいです。
さてこの大涌谷造成泉は箱根温泉供給(株)により、大涌谷で勢い良く噴き上がる蒸気に仙石原イタリ池から汲みあげた水を当てることによって人工的に作られた温泉であることは皆様ご案内のとおり。主に仙石原・強羅方面に供給されており、当該地域でお目にかかる白濁湯は大抵ここからの供給を受けているわけですが、同じ造成泉でも噴気造成地(つまり大涌谷)より離れた仙石原で入るより、大涌谷に近い当地(早雲山)で入ったほうが、何となく刺激や酸性が強く、酸性泉らしさや硫黄感がはっきりと表れているように感じられました。一般的に温泉のお湯は、源泉地からの引湯距離が長くなるほど、お湯がこなれてくる、あるいは角が取れてくる、などという表現をすることがありますが、この現象は大涌谷造成泉にも当てはまるようです。つまり大涌谷に近い当地で入浴すれば、角が取れていない荒挽きで力強いの状態のお湯を体感できるというわけです。造成泉だからといって決して侮ることはできない、なかなか本格的な酸性泉だと思います。


大涌谷温泉 蒸気造成混合泉3号線(強羅方面) (箱根温泉供給(株))
酸性-カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉 59.2℃ pH2.2 成分総計1.226g/kg
(分析年月日 平成21年8月14日)
加水加温循環消毒なし

箱根登山鉄道ケーブルカー・ロープウェイ早雲山駅より徒歩5~6分(約600m)
または伊豆箱根バスのJ系統(小田原~湯本~宮ノ下~小涌園~大涌谷~湖尻・箱根園)で早雲山上バス停下車、徒歩1分
神奈川県足柄下郡箱根町強羅字暗1322-36  地図
0460-82-5185
ホームページ

※残念ながら閉館しました
日帰り入浴時間:不明(問い合わせされたし)
680円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み;★★
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二ノ平温泉 翠の宿

2011年06月21日 | 神奈川県
 
最寄り駅の名前が「彫刻の森」であるためか、箱根17湯の中でも知名度が低い二ノ平温泉。温泉の初湧出が昭和38年と歴史が浅く、渋くて小規模な旅館ばかりが並んでいるという点も知名度の低さに一役買っちゃっているのかもしれませんが、山椒の粒のように小さいながらもキラリと光る施設が存在しており、箱根をあまり好きになれない神奈川県民の私も、この二ノ平はなぜか惹かれてしまう場所であります。i以前にも当ブログの開設初期に、二ノ平唯一の共同浴場「亀の湯」を記事にしていますが、今回はその「亀の湯」の向かいに位置する旅館「翠の宿」を取り上げてみます。表に料金表が書かれた看板が立っており、日帰り入浴も積極的に受け入れていることがわかります。

 
お宿の名前を意識しているのか、玄関からグリーンのカーペットが敷かれています。こちらのお宿は傾斜地に建てられており、玄関が最上階で、客室や浴室・厨房などは下のフロアへ下りてゆくことになります。呼び出しブザーを鳴らすと、中から「はいどうぞ、お入りください」という声が聞こえてくるので、その声のする方へ階段を下りてゆくと、そこには「く」の字に曲がった老躯の上から白い割烹着を纏っているおばあさんがお辞儀しており、入浴を乞うと「はいどうぞ、いつもありがとうございます」と、ただでさえ屈曲している腰をさらに折って丁寧に対応してくださいました。都家かつ江を彷彿とさせる白い割烹着なんて今のご時世では滅多に見かけない絶滅危惧種ですが、それはともかく、昔の方の礼儀正しい姿勢を、今に生きる我々は謙虚に見習わなきゃいけないと、このお婆さんとお会いする度に痛感させられます。


浴室は2室。左の緑色基調の浴室が男湯で、右の赤色基調が女湯。両浴室とも、脱衣所・浴室も1~2人入るといっぱいになってしまいそうな、こじんまりとした造りです。お風呂も隅々まで綺麗にお手入れされているので、気持よく入浴できます。

 
浴室には人一人でちょうど良いサイズの浴槽がひとつと、シャワー付き混合栓が1基。浴槽は膝を曲げれば2人は入れますが、ちょっと窮屈でしょうね。一般家庭のお風呂をちょっとだけ大きくさせたような感じと言って差し支えないかもしれません。


浴槽には「温泉」「水道」「ボイラー」という3つの蛇口が用意されており、「温泉」蛇口からは言わずもがな源泉が掛け流されています。熱ければ各自で加水すれば良いのですが、私は若干熱いと感じた程度でしたので、全く加水せず源泉そのままで気持よく入浴できました。
無色澄明、微芒硝味+石膏味、そして石膏っぽい何かが焦げたような香ばしい風味が微かに感じられます。味わいだけで表現すれば、最近小田急の各駅や売店で販売しているミネラルウォーター「箱根の森から」に近いかもしれません(とはいえ、そのミネラルウォーターは二ノ平から離れた仙石原で採水しているんですけどね…)。弱い重曹のツルスベと硫酸塩泉的な引っ掛かりが混在したような浴感。蒸発残留物839mg/kg、成分総計1003mg/kgという数値からもわかるように、ギリギリのところで単純泉から逃れられたような成分濃度ですから、大雑把に言えば癖があまりないさっぱりしたお湯であるとも言えそうです。加水加温循環消毒一切なし。


天井の縁には横に細長いスリットが開けられており、外部と常時貫通して換気されているため、湯気が室内にこもりにくい構造になっています。浴室の換気は快適な入浴には欠かせませんので、原始的な構造ながら嬉しい配慮ですね(虫の侵入が心配ですが)。

 
こちらは女湯。誰もおらず、開けっ放しになっていたので、ちょっと見学させていただきました。基本的な構造や大きさは男湯と変わりません。


(上画像クリックで拡大)
完全掛け流しである証拠。お役所のお墨付き。箱根で完全掛け流し、且つ噴気造成泉じゃない温泉を探すとなると結構骨が折れますから、この湯使いはありがたい限りです。

先日もこちらへ伺った際、おばあちゃんは湯上りに、いつものようにお茶とお菓子を出してくださり、短い時間ながらも四方山話をさせていただきましたが、おばあちゃん曰く、最近は暇で困っているとのこと。けだし、震災以降はその傾向が顕著に違いありません。「暇なんです」と嘆息するその口調がとても悲哀に満ちていました。箱根や伊豆は観光客の足元を見ているような料金設定の施設が多いなかで、小さいながらも綺麗なお風呂で完全掛け流しの温泉に入ることができるこちらのお宿は、お湯のクオリティを重視する温泉ファンにとっては貴重な存在ですから、是非皆さんで利用しておばあちゃんを支えてあげていただきたく存じます。


ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩温泉
64.2℃ pH8.5 蒸発残留物839mg/kg 成分総計1003mg/kg

箱根登山鉄道・彫刻の森駅より徒歩5分弱(約500m)、または二ノ平バス停下車すぐ
神奈川県足柄下郡箱根町二ノ平1077  地図
0460-82-2715
二ノ平小涌谷地区飲食店組合による紹介ページ

9:00~17:00
入浴のみ550円
石鹸あり、他の備品類なし

私の好み:★★★



コメント (6)
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