温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

新湯の山温泉 グリーンホテル

2012年11月20日 | 三重県

三重県を代表する温泉地である湯の山温泉郷の「グリーンホテル」で日帰り入浴してきました。本来の湯の山温泉よりも全然手前側(平野側)に位置しているためか、こちらでは湯の山という地名の頭に「新」の文字が冠せられているんですね。私は大規模な温泉ホテルに対してあまり興味を抱けないのですが、お湯の質が良いという情報を以前から目にしていたので、実際にどんなお湯なのか確かめてみたく訪問したのでした。


 
ワインレッド色の絨毯が敷かれた広いロビーには、たくさんの土産物類が陳列販売されており、フロントとは別に販売コーナーにもスタッフが配置されていました。昭和の温泉ブームを彷彿とさせる旅館営業スタイルがここではまだ健在のようです。このロビー左手から伸びる廊下を進み、途中で階段を下りて案内に従い左折や右折してゆきます。


 
すると、今までのいかにも昭和然とした館内から突然ラグジュアリ感溢れる渡り廊下につながり、緩やかに下るその廊下を抜けると浴室棟に到着です。この渡り廊下から先は明らかにここ数年の間に全面改築された新しい建物なのでしょう。



浴室の入口(下足場)はえらく立派で非常に良く清掃されており、どこもかしこもピカピカに輝いています。普段鄙びた温泉ばかり利用してる私にとってはあまりに眩しく、情けない哉、踏み込むのを躊躇いそうになってしまいました。

下足棚の上には温泉分析表や温泉協会の温泉利用証が誇らしげに掲示されていました。こちらでは2つの源泉を4つの浴槽へ引いているようですが、分析表や利用証がいくつも掲示されてるため、どのお風呂でどの源泉が使われているのか、オツムの弱い初見の私にはあまり把握できませんでした。


 
更衣室もとっても広々しており、子供だったら思わず駆け出したくなっちゃうかもしれません。また床には葦簀のような化成床材が敷かれていて足元も快適です。水回りもこまめに掃除されており、綺麗で清潔。ロッカーの数も多く、ストレスフリーで利用できました。


 
側面が大きなガラス窓となっている浴室はとっても広くて開放的。非日常的な「ハレ」の空間ですね。

室内にはまるで屋内プールを彷彿とさせる大きな主浴槽がひとつと、小さな4人サイズの源泉風呂がひとつ、計2つの浴槽が据えられています。主浴槽には2号泉が使われており、循環装置を運転させつつ新しい源泉も供給するかけ流しと循環の併用なんだそうですが、浴槽の縁からはしっかりお湯がオーバーフローしており、実際に入ってみても循環湯にありがちの鈍った感じもあまり感じられなかったので、湯船における新しいお湯の割合は相当高いのではないかと思います。なお槽内の一部ではジェットバスやジャグジーが稼働していました。



洗い場にはシャワー付き混合水栓が浴室の左右に分かれて計16基設置されています。脱衣室側から見て左側の5基には各ブースに仕切り板が取り付けられていますが、右側11基は仕切りがなく単純に横一列に配置されています。湯量が豊富のようでして、シャワーからは源泉のお湯が出てきます。これら16基の他、立って使うシャワーも2基設置されていました。


 
内湯で白眉なのがこの源泉風呂「ひすいの湯」です。上述のようにとってもデカい浴室なのにもかかわらず、私が内湯で終始入っていたのがこの小さな湯船でした。文字通り源泉が放流式で用いられいる湯船でして、加温加水なしの源泉は浴槽中央の底から供給され、絶え間なく切掛けから窓側へとオーバーフローしてゆきます。加水なしの為かやや熱い湯加減ですが、ツルツルスベスベの浴感が非常に気持ちよく、特に鮮度感が良好でしたので、体がのぼせてしまうのに、なかなかこのお湯から離れることはできませんでした。
お湯は薄い黄色透明で、木屑のような湯の花がたくさん舞っており、重曹ほろ苦味+微金気味+微タマゴ臭&味が感じられました。



内湯から露天へ出たところには、3号泉を飲める飲泉場が設けられており、ありがたいことに紙コップまで用意されていました。お湯にはフッ素が含まれているため一日2杯までとのこと。飲んでみると重曹ほろ苦味+微かなモール泉的風味が喉を通り過ぎ、樹脂系アブラの匂いが鼻へと抜けていきました。



内湯の窓から見える露天風呂「癒しの湯」です。このお風呂は最近増設されたらしく、ここだけ妙に新しい感じでした。日本庭園の中に八角堂を模した様な浴槽と屋根が設けられており、槽内こそ石板タイルですが、浴槽縁や屋根には木材が使用されていて、和のテイストを醸し出すとともに周囲の緑と見事に調和していました。


 
木の樋から2号泉のお湯が落とされています。槽内には循環用の吸引口および吐出口があって、手をかざしてみたらしっかり稼働していましたが、それと併用して新しいお湯も相当量が供給され且つ排湯されており、浴槽縁の切掛けから捨てられてゆくお湯は、供述する「なごみの湯」へのアプローチ脇で川を成しているほどでした。



「癒しの湯」と模造竹垣の間に伸びる緩い坂を下りてゆくと…


 
もうひとつの露天風呂である「なごみの湯」にたどり着きました。お風呂というより日本庭園の池そのものといった雰囲気ですね。このお風呂に浸かったら、庭園の錦鯉の気持ちが多少はわかるかもしれません。こちらは飲泉所と同じ3号泉が使われており、「癒しの湯」と同様に一部循環を併用している湯使いです。

とにかく大きくて綺麗で立派であるということが、私が感じたこちらのお風呂に対する総評でした。ここで2つの源泉に関して私なりのインプレッションをまとめてみますと…
 2号泉:薄い黄色透明、木屑のような湯華沢山、重曹ほろ苦味+微金気味+微々タマゴ感
 3号泉:薄い黄色透明、湯華は2号泉より少ない、重曹ほろ苦味+微モール感+樹脂系アブラ感
 両方共通:ツルツルスベスベの浴感がはっきりしていて爽快
こんな感じになるでしょうか。各浴槽とも塩素消毒が実施されているようですが、その点に関しては特に気になりませんでした。個人的には内湯の小さな源泉風呂と飲泉所がとても気に入りました。デカい風呂を利用しておきながら、こじんまりとした設備にしか興味が持てないというのは、私の悲しい性でありますが、このふたつがお湯の特徴を最もよく感じられる設備であることは間違いありません。
大規模な観光ホテルだからお湯はダメだろう、という先入観を捨てて利用してみるといい事があるのかもしれませんね。


癒しの湯(新湯の山温泉2号泉源)
アルカリ性単純温泉 41.3℃ pH8.6 200L/min(動力揚湯) 溶存物質0.70g/kg 成分総計0.70g/kg
Na+:188.4mg(96.58mval%),
Cl-:45.2mg(14.63mval%), HCO3-:396.6mg(74.88mval%), CO3--:18.0mg(6.91mval%),
H2SiO3:32.2mg,

みどりの湯(新湯の山温泉3号泉源)
アルカリ性単純温泉 45.9℃ pH8.6 500L/min(動力揚湯) 溶存物質0.53g/kg 成分総計0.53g/kg
Na+:155.7mg(96.16mval%),
Cl-:104.9mg(43.34mval%), HCO3-:208.7mg(50.07mval%), CO3--:6.3mg(3.07mval%),
H2SiO3:34.3mg,

常時循環濾過装置使用、熱交換により加温、衛生管理のため塩素系薬剤使用
放流一部循環濾過式

近鉄湯の山線・湯の山温泉駅より徒歩約10分強(720m)
三重県三重郡菰野町大字千草7054-173  地図
059-392-3111

日帰り入浴10:00~18:00 日帰り入浴は木曜定休
650円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ロッカーあり

私の好み:★★
コメント (6)
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内山温泉共同浴場

2012年11月19日 | 三重県

四日市市の郊外にある内山温泉(共同浴場)を利用してきました。内山温泉には共同浴場とゴルフ場内の浴場以外に入浴施設は存在していないかと思われます(間違っていたらゴメンなさい)。場所としては四日市の里ゴルフクラブ(旧Jゴルフ四日市クラブ)の南側にあり、辺りには丘陵の長閑な農村集落が広がっています。



隣接する公民館の前には「利用券販売所」の看板が立っていましたが、私が訪問した際には番台のおばちゃんが入口前のベンチに腰掛けながら近所の方とお喋りしており、そのおばちゃんに直接お金を手渡しましたので、券を購入することはありませんでした。利用券っていわゆる回数券みたいなものを指しているのかもしれませんね。


 
玄関を入ってすぐのところに小さな窓口の番台が設けられていますので、普段はこちらへ支払うんだと思います。
脱衣室は共同浴場らしい飾り気のない造りですが、限られた空間の中で流し台が2つ設置されていたり、また扇風機が2台(床置きと壁掛けが各1台)取り付けてられていたりと、なかなか使いやすい室内になっていました。また荷物&衣類用の棚と並んで常連さんのお風呂道具を置いておくための専用棚もくくりつけられていました。 


 
男女別の浴室には4~5人サイズの浴槽がひとつ据えられており、室内は青色系のタイル貼りで、縦に細長い窓から浴槽へ光が降り注いでいます。


 
洗い場は左右非対称に分かれており、シャワーが無いスパウトのみの混合水栓が計7基設置されています。


 
縦長のガラス窓の間に突き出ている蛇口からはぬるめの源泉が浴槽へ落とされている他、槽の左隅には水道と熱めのお湯が出てくるバルブがひとつずつあり、お湯の方はホースが伸びて浴槽の底でお湯を吐出していました。分析表によれば源泉温度は46℃だそうですから、前者は加水された源泉で、後者は源泉のままか或いは加温されたものかと思われます。なお前者には「飲めません 飲用としての検査は受けておりません」という注意書きが貼られています。
浴槽内に循環用の吸引口などは見当たらず、お湯はしっかり浴槽から溢れ出ていましたので、加温加水に関しては不明ですが、少なくとも放流式の湯使いであることは間違いないかと思います。、

お湯は薄い黄色の透明で、重曹味とアルカリ泉的な微収斂、そして畑の土のような匂いが感じられます。分析表には「硫化水素臭」と記されていますが、残念ながらそのような知覚は得られませんでした。また、湯中には気泡が多く見られ、湯面にはそれらによる白い膜が浮いていましたが、いざ入浴してみると肌への付着は弱く、うっすらと泡がつく程度でした。しかしながらサラサラスベスベの浴感がはっきりしており、入浴中には軽ろやか且つ滑らかな感触に包まれ、湯上りはサッパリ爽快でした。こんなお湯を日常的に利用できる地域の方が羨ましいなぁ…。

ちなみに当浴場にて掲示されている温泉分析表には、分析申請者として東京中央区の株式会社ジェイゴルフ(※)と記載されており、実際に源泉は隣接しているゴルフ場の敷地内にあって、そこから引湯しているんだそうです。ゴルフ場は2009年にジェイゴルフからアコーディアゴルフに売却されていますから(翌年にゴルフ場名称変更)、現在源泉を所有しているのはアコーディアゴルフということになりますね。
浴場へ入るときには地元の方々から「ようこそいらっしゃいました」と笑顔で挨拶され、退館時には「また来てくださいね」と声をかけてくださいました。地域の方々の温かい心が嬉しい、とってもほのぼのとしたお風呂でした。
(※ 旧安田財閥系の大手不動産会社である東京建物の完全子会社)


アルカリ性単純温泉 46.3℃ pH8.5 250L/min(動力揚湯) 溶存物質0.43g/kg 成分総計0.43g/kg
Na+:119.2mg(94.87mval%),
HCO3-:193.4mg(59.81mval%), CO3--:58.2mg(36.60mval%),
H2SiO3:49.3mg, CO2:0.1mg,

三重県四日市市内山
(場所の詳細は特定は控えさせていただきます)

16:00~21:00(受付20:30まで) 毎週月曜・火曜定休
200円
備品類なし

私の好み:★★★
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小山田記念温泉病院 コミュニティーホールぴあ小山田

2012年11月17日 | 三重県

中部・関西方面の温泉ファンにはよく知られている、三重県四日市市の「小山田記念温泉病院」敷地内にある地域交流施設「コミュニティーホールぴあ小山田」で入浴してまいりました。
今回私はレンタカーで訪問しましたが、JRや近鉄の四日市駅から小山田病院へ運行されている路線バスの終点停留所は、ちょうどこの施設前に建植されていますから、公共交通によるアクセスでも楽だろうと思います。


 
ちなみにこちらが病院の本棟ですが、かなりデカい総合病院なんですね。近鉄名古屋線に乗っていると、車窓の田んぼの真ん中に「小山田記念温泉病院」の広告看板が立っている光景をしばしば目にしますが、四日市市のみならず三重県としても屈指の規模なのかもしれませんね。ちなみに院内にも療養用の温泉浴場があるんだそうです。

施設案内図を見ると、広大な敷地内には病院を中心にして医療・福祉のみならず様々な用途の施設が建てられていることがわかるのですが、中でも目を引くのが「露天風呂 きじの湯」でして、後述する小山田温泉のお湯が引かれているそのお風呂は、お祭りの時や年末年始など限定された期間のみ一般開放されるんだとか。私は未訪問ですが、ネット上の画像を拝見すると魅力的な造りをしており、機会があれば一度は行ってみたいものです。



「ぴあ小山田」の建物には特に入浴に関する案内は掲示されておらず、事前に知識がないとここに温泉浴場があるだなんてわかりませんが、私のような一見の完全な部外者でも問題なく利用することができ、玄関ホールに入って右側にある受付で入浴したい旨を申し出ますと、料金の支払いとともに台帳への記名を求められます。貴重品を預けるロッカーは受付の斜め前に設置されているのですが、もし利用の際は受付でカギを借り、10円玉2枚を用意して有料で利用することとなります。受付の右奥には上画像のようなラウンジスペースが広がっており、食堂も営業していました。


 
浴室は受付前の階段でワンフロア下へ降りてゆきます。階段を下りきってすぐ左手には、陶器のキツネやイラストなどによって童話の世界を立体化したような装飾が施されている飲泉所があり、3本の竹筒からかなり熱い源泉が落とされていました。柄杓に汲んで、フーフー吹いてよく冷ましてから実際に飲んでみますと、重曹味+ほろ苦み+微金気味と、弱ミシン油臭+微モール臭のような匂いが感じられました。いまから入るお風呂にはこのお湯がかけ流しで利用されているんですね。もうワクワクしちゃいます。


 
医療福祉関係の施設ですから施設内の衛生管理は徹底されており、脱衣室は清潔な状態が維持されていてとっても快適です。エアコンが効いているのもありがたいところ。尤も、温泉風情を楽しむ場所じゃありませんから、どうしても無機質な雰囲気は否めませんが、それでも棚の戸には木目の化粧板が貼られていて、見た目の印象を和らげていました。



温泉認定医による「正しい温泉入浴法」が掲示されているところは、いかにも病院らしいですね。



浴室は半地下に設けられているものの、大きな窓の外側は吹き抜けのようになっているので、とても地下とは思えない明るい環境です。また、手すりが完備されていたり、体が不自由な人向けの入浴用椅子が用意されていたりと、福祉的な設備もバッチリです。



洗い場にはシャワー付き混合水栓が4基設置されており、お湯は源泉が給湯されていました。湧出量が毎分830Lとかなり豊富なので、シャワーにも温泉が使えるんですね。


 
源泉がドバドバ吐き出されている湯口には湯の花キャッチャー代わりに布が巻かれており、その効果があらわれているのか、湯中では特に湯の花らしき浮遊物は見当たりません。お湯は薄い黄色の透明で、味や匂いは飲泉所で感じた通り、惜しげも無くしっかりと掛け流されておリ、お湯の鮮度感は抜群です。また長めに全身浴していると肌にはうっすらと気泡が付着します。ツルツルスベスベ浴感がはっきりしており、思わず何度も肌を擦りたくなるほど爽快です。



内湯のガラス窓の外側は露天風呂が設けられています。実用本位な内湯と違ってこちらは岩風呂となっており、半地下であるために景色は眺められませんが、余裕を持って掘り下げられているために入浴しながら青空を仰ぐことができ、また擁壁も温泉風情を醸し出すためか岩積みになっています。
この露天には湯口が無く、どこからお湯が供給されているのかと探してみたら、建物の内外を隔てているはずの大きなガラス窓は浴槽内まで仕切っておらず、湯船は内湯と露天が一体化されており、内湯浴槽の一部が屋外へせり出して(はみ出て)露天風呂としての役割も同時に担っているような造りになっていました。従いまして露天のお湯は内湯と同じであり、内湯のお湯は露天側へと向かい、岩風呂の切掛けから排湯される、という流れができていました。


薄い黄色透明で重曹泉型の単純泉という、三重県平野部の温泉の典型例ですが、知覚ははっきりしており、鮮度感も浴感も素晴らしく、飲泉もでき、その上湯量が豊富でふんだんにかけ流されているのですから、典型例というより代表例と評価したほうがいいかもしれません。


アルカリ性単純温泉 56.8℃ pH8.6 830L/min 溶存物質0.49g/kg 成分総計0.49g/kg 
Na+:124.9mg(95.6mval%),
HCO3-:289.2mg(86.03mval%), CO3--:11.1mg(6.72mval%),
H2SiO3:40.1mg,

関西本線・四日市駅または近鉄名古屋線・近鉄四日市駅より三重交通バスの小山田病院行で終点下車すぐ目の前(近鉄四日市より約35分)
三重県四日市市山田町5570-4  地図
059-328-2907(小山田温泉地域交流ホーム)
小山田記念温泉病院ホームページ

9:30~21:00(受付20:30まで)
500円
ロッカー(有料20円・カギは受付で借りる)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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櫛田川温泉 魚見の湯

2012年11月15日 | 三重県
 
三重県松阪市の東部郊外に、お湯の質が良好なマニア受けする露天風呂があると知り、泣く子も黙る松阪牛や近世の面影を残す風情ある街並みなんて目もくれず、その現場へと直行しました。

松阪市街方面から県道60号線を東進し、魚見橋を渡って右岸の堤防上を500メートル走行すると、右側へ下りる路地が分かれてるので、そこを入ってゆくと今回の目的地である「櫛田川温泉 魚見の湯」に到着です。私を含めた温泉ブロガー達がここに興味を惹かれてしまう理由の一つに、この温泉が「中川グリーンテニスクラブ」というテニスコートに付帯した隠れキャラ的な存在であることが挙げられるでしょう。元々はテニスクラブ会員向けのお風呂だったんだそうですが、その後一般にも開放されるようになったんだそうです。



駐車場の目の前には何面もの屋外テニスコートが広がっています。



敷地内には会員専用の温泉スタンドが設けられていました。セルフで汲むシステムで、100Lで200円なんだそうです。



温泉名が記された倉庫のような外観の屋内コートをグルっと裏手へ回って、「露天風呂」と書かれた方向へまっすぐ進み…


 
屋内コートの控え室のようなところへ入ると、こちらを運営なさっているオーナーさんの奥様が待っていてくださいました。ネット上でこの温泉を紹介しているサイトでは大抵アナウンスされていますが、こちらの温泉は利用者がいないときは空っぽのことが多いらしいので、入浴希望の際には事前に電話連絡をしておいた方が良いのです。わざわざ川崎市くんだりからやってきて空振りするのは馬鹿馬鹿しいので、今回の訪問に当っては1時間前に電話をしておいたら、奥様がそれに合わせてお風呂を掃除しお湯を張っておいてくださいました。
室内では台帳に名前を住所(県や市レベルまででOK)を記入し、テーブルの上に置かれた丸い缶に100円玉を2枚置きます。
隅っこに据え付けられてる流し台の蛇口からは温泉が出るようです。


 
更衣スペースから既に半露天状態なんですね。
カギ付きのスチールロッカーがズラリと並んでいる他、カゴ・扇風機・体重計など入浴施設には欠かせないものならひと通り用意されており、開放的な状態にもかかわらず非常に綺麗ですので、快適に利用することができました。


 
農家の軒先にこしらえられたような趣きの露天風呂です。お風呂は露天のみですから、脱衣所を含めて入浴ゾーンに密閉された室内空間というものは無いわけですね。寒い冬はどうなっちゃうかわかりませんが、脱衣所はもちろんのこと、お風呂も半分は屋根に覆われているので、多少の雨なら問題ないでしょう。

洗い場には混合水栓が3基設置されており、うち2つはシャワー付きで、お湯のコックを開けると加温された源泉が出てきます。ちゃんとボディーソープやシャンプーが備え付けられているのが嬉しいところ。
一般的に、本業に付帯して設けられた利用者が限定されているお風呂って、施工が稚拙で手作り感に溢れているケースが多々ありますが、こちらのお風呂にはそうしたところが見当たらず、まるで浴場メインで営業しているかのような風格すら感じられる本格的な造りでして、お湯の質に触れる前から私はすっかり感動してしまいました。


 
お風呂は大きなステンレスの湯船がひとつ据えられており、その中に同じくステンレス製の小さな湯船が収められています(コンクリブロックで固定されていました)。利用人数によってこの2種類を使い分けているようでして、私は一人で伺いましたから、小さい方の湯船にのみお湯が張られていました。浴槽には水垢が見られずピカピカに輝いており、普段から念入りにメンテナンスされていることが伺えます。
浴槽の傍らにはラケットを持った信楽焼の狸が佇んでおり、全裸で入浴に臨もうとする小太りの関東産タヌキを一瞥しているようでした。


 
源泉温度が28℃とかなり低いので加温された上で浴用に用いられているのですが、加水循環消毒は行われておらず、利用の度にお湯が使い捨てられてゆくのですから、湯船のお湯は実に良好なコンディションです。お湯はホースがつながれた水栓から吐出され、コックもありますから入浴中でも投入量の調整が可能です。なおホースの傍には塩ビのパイプも置かれており、大きな浴槽へお湯を貯める際にはこれが使われるのでしょう。また小さなお湯のオーバーフローも大きな槽へと落とされるようになっていました。

ホースから出てくるお湯は42~3℃でしょうか、加温の塩梅は最適です。思わず声を上げて感嘆してしまったのが、ホースから吐出される勢いによってお湯が泡で白濁しちゃっていることでして、静かな状態ですとかなり薄い黄色(やや褐色)の透明なのですが、ホースからお湯を出すと忽ち浴槽内は泡で霞んでしまうのです。こりゃすごい!


 
実際に湯船へ体を沈めてみたら肌への気泡の付着も夥しく、アワアワな温泉が好きな方だったら感涙の涙が止まらないかもしれません。つい興奮のあまり、自分撮りしちゃいました。
お湯を口にすると重曹味に畑の土(泥)のような味、そして土の匂いとゴムっぽい匂いに有機肥料のような匂いが、それぞれ優しく絡み合っているように感じられました。匂いも味もかなりマイルドであり、もし鼻炎を発症していたらほとんどわからない程度のものです。また、泉質は重曹泉型のアル単であり、気泡による相乗効果によってツルツルスベスベのとても爽快な浴感ですが、メタケイ酸がかなり少ないためか、ツルスベとはいえ強い印象が残るほどではありませんでした。こうしたお湯の知覚面(色・味・匂い)は三重県平野部の温泉では標準的と言えるかもしれませんが、とはいえ、県内で実質掛け流しの温泉は非常に貴重であり、気泡の多さも感動的、とても綺麗な露天で気持よく利用でき、テニス場の付帯施設という独特の属性も面白いので、温泉ファンでしたらどなたでもテンションが上がっちゃいますね。素晴らしいお風呂でした。


アルカリ性単純温泉 28.0℃ pH9.0 成分総計0.43g/kg
Na+:128.5mg,
Cl-:42.3mg, HCO3-:208.7g, CO3-:24.0mg,
H2SiO3:16.6mg, CO2:0.2mg,
加水循環消毒なし、源泉が低温のため加温

三重県松阪市魚見町47-1
0598-59-0121

13:00~18:00(要事前連絡
200円
ロッカー・シャンプー類あり(ドライヤーなし)

私の好み:★★★
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鳴子温泉 福の湯

2012年11月14日 | 宮城県
※2016年12月で休業してしまったようです。
(情報源:鳴子温泉郷観光協会公式サイト内のこちらのページ)


 
鳴子温泉の中心部から川の方へ下り、車湯から鬼首方面へ向かう国道108号の橋を渡って対岸の川沿いをちょっと遡ったところにある日帰り温泉入浴施設「福の湯」を利用してまいりました。外観からして明らかに元々は宿泊(保養)施設だったことが想像され、時代の趨勢に合わせて入浴営業のみへと業態転換したものと思われます。
玄関近くにある施設名の看板には「湯量豊富流れぱなし」と、促音便が苦手な外国人が話す日本語のような訛った表記がなされているのですが、なぜこの表記なのかは不明であります。



手水ならぬ手湯の枡もあり、施設名に因んでか、七福神のうちの3神(布袋・大黒天・福禄寿)の小さな置物が飾られていました。



こちらではローリーによる温泉の宅配業務も行っているんですね。湯量豊富なんだなぁ。



玄関に入り下足場にある券売機で料金を支払います。貸タオルの有無などによって料金が異なりますから、わからなければスタッフへ確認しましょう。下足箱のキーは退館時まで自分で管理します。下足箱と並んで貴重品用ロッカーが設置されているのですが、後述する脱衣室内にはロッカーが無いため、貴重品類はこちらへ預けましょう。ロビーには元々宿泊業を営んでいたような雰囲気が漂っており、食品類や土産物などが販売されていました。


 
浴室は男女入れ替え制となっているらしく、私の訪問時は奥側の浴室に紺の暖簾がかかっていました。二つの浴室の違いはサウナが有るか無いかであり、今回男湯だった奥の方の浴室にはサウナが設けられています。
脱衣室もやはり一昔前の旅館を彷彿とさせる造りですが、とてもよく手入れされており、また部分的に改装されており、おかげで気持ちよく利用することができました。また冷房はありませんが天井ではシーリングファンが回っているので、湯上がりにクールダウンして汗を引かせることもできました。



浴室も脱衣所同様に昭和50年代に建てられた宿泊施設の「大浴場」らしい雰囲気ですが、劣化しやすい部位はしっかり改修されているので、思ったほど古さは感じられません。洗い場にはシャワー付き混合水栓が4基並んでいるのですが、私の訪問時に驚いたのが利用客のマナーの良さでして、先客のみなさんは例外なく、使用後の腰掛けと桶のポジションを上画像のようなスタイルに戻していました。こうしたマナーの徹底ぶりは私たちとしても大いに見習いたいものですね。



浴室内にはサウナの他、大小2つの浴槽が据えられており、大きな主浴槽は「湯治の湯」と名付けられており、且つ「うたせ湯」でおあって、3本の竹筒からちょっぴり熱めの源泉が落とされていました。こちらでは2種類の源泉を浴槽によって使い分けており、「湯治の湯」「うたせ湯」では湧出量の豊富な「末永1号泉」が用いられています。訪問時は既に日没後であったためにお湯の見た目ははっきりとわかりませんでしたが、おそらく無色透明か或いは薄い褐色系透明かと思われます。口にしてみると重曹泉に石膏が溶け込んだような感じの知覚が得られ、東京多摩地区に点在する各温泉から塩気やアンモニア感を抜いて石膏をプラスしたような感じと言ったら良いのでしょうか、樹脂系の味や匂いに重曹の清涼苦味と土類系の味が加わっているようでした。館内表示によれば「温度管理のため掛け流しと循環装置を併用」とのことですが、消毒や濾過は実施されておらず、浴槽の縁の切り欠けからはお湯がしっかり排湯されていましたから、単に温度調整するための循環にすぎず、掛け流しに近い湯使いであると言っても差し支えないでしょう。


 
紹介すべき順番が前後しますが、内湯の小浴槽は後回しにして、次に露天へ行ってみましょう。周囲を塀で囲まれているため、屋外の割にはあまり開放感が得られませんが、風はちゃんと流れてきますから、内湯で火照った体を冷ますにはもってこいです。お湯は内湯の「湯治の湯」「うたせ湯」と同じ「末永1号泉」であり、やはり同様に「温度管理のため掛け流しと循環装置を併用」とのことですが、この時は装置を運転させていなかったのか、装置が働いているような様子は無く、長湯ができるようにぬるめの温度にセッティングされていました。


 
(かなり不鮮明で申し訳ありません)
さて内湯へ戻ってきました。こちらのお風呂で非常に個性的なのが、内湯の小浴槽に張られている「炭酸泉」であります。結論から申し上げちゃうと、主浴槽も露天もすっとばして、この小浴槽だけを目当てにここを利用しても良いぐらいに素晴らしいのです。何が良いかといえば、名前の通りお湯にはたっぷりと炭酸ガスが含まれており、入浴するや否や、たちまち全身に炭酸ガスの泡が付着するのです。最近は都市部のスーパー銭湯でも人工的な炭酸浴槽が設けられて人気を博していますが、何と言ってもこちらの炭酸泉は天然物ですし、いつまでも長湯できちゃう不感温度帯の湯加減なもんですから、気持ち良いことこの上ないのです。浴槽中央の底からボコボコと供給される源泉は、外気に触れない状態で浴槽に溜められるので、湯中における炭酸ガスのキープ率が良好なんですね。お湯に体を入れた途端に、気泡が弾ける刺激が肌で踊り、お湯から上がろうとすると肌にビッシリと付着した気泡が一斉に弾けるため、シュワシュワとした感触が楽しめます。強く明瞭な炭酸味と金気の味を有し、上述の通り温度は38℃くらいですが、いつまでもじっくり入っていられる温度である上、炭酸の温浴効果が相俟って、長く全身浴しているとまるで体内に熱源を抱え込んでいるかのようなポカポカ温感が生まれました。またお湯の色もお隣の主浴槽とは異なっており、浴槽やオーバーフローの流路は金気の影響で赤黒く染まっていていました。

私の訪問時も先客・後客が何人か利用していましたが、常連と思しき方は体を洗ったら「炭酸泉」のみに入り、他の浴槽には目もくれずに帰っていっちゃいました。かく言う私も、主浴槽や露天にはあまり浸からず、館内滞在のほとんどをこの「炭酸泉」入浴に費やしました。建物こそ新しくはありませんが、内部はきちんと改修されており、メンテナンスも行き届いているので、どなたでも気持ち良く利用できるでしょう。鳴子温泉の多様性と実力を改めて確認できるお風呂でした。


末永1号泉(「うたせ湯」「湯治の湯」(内湯主浴槽)・露天風呂「河原の湯」)
ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・硫酸塩泉 58.7℃ pH7.2 蒸発残留物1488mg/kg 溶存物質1998.8mg/kg
Na+:282.0mg(48.65mval%), Mg++:29.7mg(9.69mval%), Ca++:201.1mg(39.79mval%),
SO4--:347.4mg(30.92mval%), HCO3-:884.2mg(61.94mval%),
H2SiO3:171.6mg, CO2:164.7mg,
温度管理のため掛け流しと循環装置を併用、加水消毒なし

大畑1号泉(「炭酸泉」)
含二酸化炭素-カルシウム・ナトリウム-炭酸水素塩泉 38.3℃ pH6.0 蒸発残留物777.3mg/kg 溶存物質1261.9mg/kg
Na+:103.7mg(32.08mval%), Mg++:22.5mg(13.16mval%), Ca++:147.7mg(52.42mval%),
HCO3-:756.7mg(89.92mval%),
H2SiO3:155.9mg, CO2:1221.1mg,
加温加水循環消毒なし


陸羽東線・鳴子温泉駅より徒歩13分(1.1km)
宮城県大崎市鳴子温泉字末沢西16-9  地図
0229-81-1570
ホームページ

平日10:00~20:00(入館19:30まで)、土日祝10:00~21:00(入館20:30まで)、第3木曜定休(祝日の場合は翌日)
500円(大小タオル2枚レンタル付の場合は平日800円、土日祝1000円)
貴重品用ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (2)
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