新屋温泉といっても津軽の有名温泉銭湯ではなく、秋田市の新屋にある温泉が今回の主役であります。駐車場入口に建つベージュ色に塗られた鉄のゲートが印象的なこちらの温泉浴場は、元々この土地を所有していた地元の材木屋さんが私財を投じて建設したものなんだそうでして、専門家の反対を押し切って先代の社長が掘削してみたところ、平成8年に地下700メートルにて見事に温泉を掘り当て、その温泉を浴場として公へ供するにあたり、木材屋さんらしく現社長が設計して総木造の立派な建物を拵えたんだそうです。
館内へ入った途端に木の香りに包まれます。木へのこだわりは半端じゃなく、館内ではありとあらゆる物に対してふんだんに木材が使用され、特に柱や梁には樹齢200年以上の太く立派なヒバ材が贅沢に用いられており、徹底した木材へのこだわりにはただただ圧倒されるばかりです。日帰り入浴施設でここまで徹底した木造建築は他に例を見ないかと思われます。下駄箱のカギを料金支払い時に受付へ預けて脱衣室へと向かいます。脱衣室内も当然ながら総木造です。
広くて開放的な浴室も総木造であり、高い天井を太い梁や柱が支えています。あまりに立派なので、見上げてその木材を目にするだけでも感動してしまいます。お風呂は内湯のみで、男湯の場合は左側に槽が3つ据えられ、右側に洗い場のカランが一列に並んでいました。
洗い場にはシャワー付き混合水栓が14基設置されており、ありがたいことに各カランにはシャンプーやボディーソープが一組ずつ備え付けられていました。なお各カランの前に置かれている腰掛けも木製です。床はスノコ状になっているため、シャワーのお湯やアブクは床を彷徨い漂うこと無く、すぐにスノコの隙間から下へと流れ落ちてゆきます。木の床ゆえに濡れるとどうしても滑りやすく、後述する温泉の性質ゆえに更に輪をかけてスリッピーな状態となっているのですが、転倒防止のために床の一部には人工芝のような色のマットが敷かれていました。おのマットはせっかくヒバ材で統一されている室内にあってはかなり異質であり、安全のために必要であるとはいえちょっと艶消しであるようにも思えました。
3つある浴槽のうち1つは水風呂で残る2つが温泉槽です。温泉層はぬるめと熱めに分かれており、上画像の「ぬるめの浴槽」は源泉を加水して濃度を半分ほどに希釈しているんだとか。
一方、「ぬるめの浴槽」よりやや小さなサイズのこちらの浴槽は「あつめの浴槽」でして、加水なしの源泉100%のお湯が注がれております。両浴槽とも加温されており、且つ半循環の湯使いのようですが、薄い黄色で透明なお湯の中では黄褐色の湯の花が大小様々な形でたくさん浮遊していました。なおお湯は両浴槽の間にある三角屋根の下へと吸引されてゆき、オーバーフローはあまり見られません。
化石海水的な温泉のようでして、口にすると非常にしょっぱく且つ苦味もあり、化石海水的な有機的な匂いに土気と金気、臭素臭、そしてヨード臭を混ぜたような、とても個性的な知覚を有しています。知覚面ではそれほど強調されませんでしたが、分析表によればヨウ素イオンの含有量は37.6mgという高濃度であり、旧泉質名でしたら含ヨウ素-強食塩泉となるでしょうね。食塩泉的なツルスベ浴感がとっても良好で、床をツルツル滑らせているのもこの泉質由来なんだと思います。また濃い食塩泉ですから温まりが強く、なかなか汗が引きません。厳冬期には熱の湯として湯あみ客の体を芯から温めてくれるでしょう。
ヒバや杉を贅沢に使ったこの建物は、館内に入って雰囲気を味わうだけでもだけでも、充分に訪問する意義があるかと思います。こんな立派な木造建築の温泉なんて、余程の旅館じゃないかぎり、なかなかお目にかかれません。ちょっとわかりにくい立地ですが、お近くへ訪れた際には立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
ナトリウム-塩化物強塩泉 41.5℃ pH7.6 260L/min
Na+:9687.0mg, Ca++:543.6mg, K+:286.6mg, Mg++:118.6mg, NH4+:37.6mg, Ba++:5.5mg, Fe++:2.8mg,
Cl-:16210.0mg, HCO3-:244.1mg, Br-:142.5mg, I-37.6mg,
大浴槽のみ加水あり(強塩泉につき肌が刺激に弱い人のために希釈)
加温あり(入浴に適した温度に保つため)
循環利用あり(浴槽の水位が下がると自動的に源泉が足し湯される)
塩素系薬剤を使用(衛生管理のため)
羽越本線・新屋駅より徒歩8~9分(700m)
秋田県秋田市新屋大川町20-3
018-888-8800
10:00~21:00 毎週月曜定休(祝日の場合は翌日)
500円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★