温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

知内温泉 展望台の湯 2012年11月

2012年12月21日 | 北海道
北海道知内町には「展望台の湯」や「営林の湯」といった野湯の存在が知られていますが、両者に関してはここ数年ネット上で新しい情報が出ていないようですので、2012年11月中旬、このうち比較的発見しやすそうな「展望台の湯」を探索してみることにしました。



ここからスタート。2本の白いポールが目印。念のために熊除けの鈴を鳴らしながら歩くことに。


 
早くも藪に行く手を遮られてしまいます。数年前までここを車で走れたことが信じられません。草は枯れているのでまだ藪こぎしやすいのですが、笹はしっかり茂っており、これが夏だったら前進不可能だったかもしれません。


 
たまに視界がひらけて道路の跡が明瞭な箇所もあるのですが…



こんな風に倒木が前方に立ち塞がっていることもしばしば。倒れている枝が疎になっている部分から先へすり抜けました。ひたすら藪こぎするばかりです。なお今回は上下セパレートのレインコートを着ていたので、枝の先などで痛い思いをすることなく、また衣類に枯れ草や種などが付着することも無く、藪へ体当りするような感じで前進しました。



私の背丈ほどに茂ったクマザサが覆い尽くす林道はほぼ自然に帰りつつあります。上画像において進行方向は正面なのですが、画像を見ただけでは見当つきませんよね。でも路盤の跡には木が全く生えておらず、緩やかなカーブを描いていたり、あるいは車一台分の幅がフラットになっていたりしますし、笹以外の植物がほとんど枯れた時期でしたから、初見の私でも比較的容易には廃道跡をトレースできましたが、藪が青々している時期でしたらまず無理だったでしょう。藪を抜けたらクマさんと出会い頭…なんてことも考えられますし。



左手下方の木立の向こうに知内温泉旅館の建物が見えます。



やがて歩きやすくなり…


 
スタートから約10分で、ちょっとした広場に行き当たりました。この道が自動車でも通行可能だった頃には、ここが駐車場だったはずです。いまでも路肩にはガードケーブルが残っており、かつてはれっきとした道路であったことがわかります。しかしながら、ここまでの道同様にこの広場も枯れたばかりの草で覆われていますから、ほんの1~2ヶ月前までは広場の存在が確認できないほどの藪が茂っていたものと想像されます。



広場が尽きる辺りで道の跡は二手に分かれています。ここは左へ進みます。国土地理院の地図を見る限り、この道は温泉旅館の西側を高巻いているだけのようですから、もし右へ進んだとしても、道の跡さえ見失しなければおそらく温泉旅館の南側に出られそうですが、無理に進むのはやめておいた方がいいでしょうね。


 
分岐後は沢へ向かって坂を下るのですが、私の背丈以上に高く伸びている笹藪が行く手を遮り、この藪を漕いでいるときには「本当にこの方角で合っているのか」という不安に襲われました。



笹を踏んでスリップしないように注意しながら慎重に藪こぎしてゆくと、あれ? 笹薮の先に何やら人工物が見えるぞ!


 
おお! 遂に「展望台の湯」発見です! しっかりお湯が溜まっているではありませんか。 
でも周囲は落ち葉で埋め尽くされており、その地面はドロドロの泥濘と化していました。こんなこともあろうかと足元は防水靴を履いてきましたが、場所によっては足首くらいまで潜っちゃいそうなほどぬかるんでいましたので、付近に落ちていた木の枝で地面を突きながら、足を運ぶ場所を選んで周辺を探索しました。



数々のバケツやポリタンクが放置されています。事前の調査によれば、湯船が熱い時はこれで沢の水を組んで加水するようですが、中には腐った雨水や泥が溜まっており、とてもじゃないけど使いたくありません。



お風呂の傍には沢が谷を刻んでいます。この沢を下ってゆけば、おそらく温泉旅館にたどり着くのでしょう。


 
落ち葉に覆われてわかりにくいのですが、一帯は温泉析出により谷に向かってトラバーチンのドームが形成されています。脆いので下手に踏み込むと足元が崩れちゃいそう…。このトラバーチンの表面にはドームを形成する温泉が落ち葉に滲んでおり、裸足でこの上を歩くと、場所によってはかなり熱く感じられました。


 
落ち葉に囲まれて浴槽の原型がわからないお風呂。落ち葉から滲み出ているのか、湯面には脂が浮いていました。


 
パイプから源泉がチョロチョロと注がれています。湯船は43.5℃と入浴に適した温度なのですが、おそらく相当長い間、誰も入っていないまま放置されていたのでしょうから、底に何が沈んでいるかわからず不気味ですし、周囲はドロドロでどんな雑菌が繁殖しているかとっても不安ですから、入浴するかどうか、湯船を目の前にして躊躇してしまいました。でも湯加減は良いし、ここまで来て入らないのは勿体無いし…



というわけで、「えいっ!」と掛け声をかけながら全裸になって入浴しちゃいました。底に堆積している落ち葉によって湯船は浅く見えたのですが、実際に体を沈めてみると湯船はかなり深く、足が底へズブズブ潜っていったので、その刹那は気味悪くてたまりませんでした。でも温度計の数字通りに加水しなくても問題なく入れる湯加減であり、またお湯自体は長い間の放置にもかかわらず生臭さや泥臭さもなく、むしろお湯からは鮮度感すら伝わってきました。お湯だけ捉えればかなり気持ち良いのですが、落ち葉や泥濘の不気味さ不衛生さを加味すれば、プラスマイナスゼロといったところでしょうか。

今回は天気に恵まれ、また道のトレースで迷うこともなかったので、スタート地点からちょうど12分で「展望台の湯」に辿りつけたのですが、大した時間を要さなかったにもかかわらず、慣れない藪こぎのお陰で相当長い距離を歩いてきたような疲労感があり、再び行きたいかと言えば返答には戸惑うところです。
なお、比較的アクセスしやすい「展望台の湯」がこの有り様でしたから、この界隈にあるもう一つの野湯「営林の湯」の探索は諦めました。両者ともこのままひっそりと自然に帰ってゆくかもしれません。


野湯につき温泉分析表なし

北海道上磯郡知内町湯の里
(今回は地図による場所の特定を控えさせていただきます)

野湯につき無料
時間制限等ありませんが訪問の際は自己責任で。


コメント (8)
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石引温泉 亀乃湯

2012年12月20日 | 石川県・福井県

金沢市街に掛け流しのモール系温泉が楽しめる銭湯があると聞き、当地で宿泊した某日、ホテルへ向かう前に立ち寄ってみることにしました。カーナビに導かれて到着したその施設は幹線道路沿いに建つ鉄筋造りの4階建てで、もう少し鄙びた銭湯を想像していた私は軽く虚を突かれてしまいました。1階部分は駐車場となっていますが、スペースが狭くて止められる台数も少ないので、もし車でいらっしゃる場合は、通りの反対側にある第二駐車場を利用した方がいいかもしれません。


 
1階から玄関に入って靴を下足箱に入れ、エレベータで3階へ上がります。



3階にも玄関があるのですが、住宅街に面していて商店街やバス通りにも近いこちらの方がむしろ表玄関なのかもしれません。



3階フロアは番台と浴室があるこの施設の心臓部のようです。券売機で料金を支払い、番台のおばちゃんに券を渡して暖簾をくぐります。番台の前にはちょっとした休憩スペースが確保されていました。



脱衣室は典型的な銭湯であり、温泉風情はゼロ。アルミ板の鍵のロッカーがたくさん並んでいます。昭和後期の街の銭湯そのものであるこの施設で、本当に温泉と出会えるのかな。

※私が訪問した時間は夜7時頃でして、浴室内には一日の汗を流して疲れを癒やしているお客さんがたくさんいらっしゃいましたから、今回浴室内は一切撮影していません。

浴室内もいわゆる銭湯そのもので、室内は全面タイル貼り。男湯の場合、右半分が洗い場で、押しバネ式カラン&固定式シャワーの組み合わせが21基、更には立って使うシャワーが2(あるいは3)基取り付けられています。一方、左半分は3つの浴槽が階段状になって前後一列に並んでおり、湯口のある奥側の浴槽から手前側の浴槽に向かってお湯が流れ、手前側浴槽から排水口へと落ちるような構造になっています。奥側浴槽はごく普通の浴槽、真ん中はジャグジー槽、手前側槽はジェットバスが取り付けられた二人用の座湯(体がフィットするよう背もたれ部分が半円形になっている)です。
いずれの浴槽にも褐色透明のモール系温泉が用いられていますが、循環濾過消毒されており、塩素臭もしっかり湯面から放たれています。でもモール系であることには間違いなく、はっきりとしたツルツルスベスベ浴感が楽しめました。
また、浴室内にはこうした温泉浴槽の他、サウナと小さな水風呂も設置されており、訪問時もサウナでは多くのお客さんが汗を流していました。



こちらの銭湯では露天風呂も利用できちゃうのが嬉しいところなのですが、露天といってもサンルーフでガッチリ周囲を覆われているので、外気が入ってくる程度の「露天っぽいお風呂」に過ぎません。でもこの露天風呂が秀逸なんですね。
猫に額みたいな限られたスペースに歪んだ台形の浴槽(3人サイズ)が据えられており、浴室側の壁には押しバネ式カランが3基取り付けられています。



「亀乃湯」という名前に因んでか、亀の造形が側面にへばりついている飲泉場が浴槽傍に設けられており、チョロチョロながらも源泉そのままのお湯をその場で口にすることができました。典型的なモール泉らしい重曹的な清涼苦味に加え、マイルドだが明確にわかる甘塩味も感じられます。



湯船から上へ立ち上がったパイプから打たせ湯のように源泉が湯船へ落とされています。その口にはタオルが巻かれていました。でも口からほぼ垂直にお湯が落ちちゃっているため、ここで打たせ湯を浴びようとしても難しいかも。
源泉の投入量は多く、浴槽の縁からふんだんにオーバーフローしています。加温非循環濾過消毒は一切ない完全掛け流し。非加温ゆえ夏以外はぬるく感じてしまうため、私が訪れた秋の某日も利用者は少なかったのですが、あえてここのお風呂に浸かろうとする人は皆さんじっくり長湯なさっています。私はぬる湯が大好きなので、内湯よりむしろこちらのぬるい露天でひたすら長湯させてもらいました。琥珀色透明のお湯は典型的なモール泉の特徴を呈しており、お湯から放たれる芳しいモール臭が鼻をくすぐり、入浴中には明瞭なツルツルスベスベ感、湯上りにはさっぱりとした清涼感が私を魅了してくれました。しかも食塩泉としての性格も兼ね備えているため、清涼感とともに食塩泉的な持続的温浴効果も発揮。一挙両得なお湯でした。街中の銭湯でこんな素晴らしいお湯に入浴できるだなんて、ご近所の方が羨ましい限りです。


石引温泉1号泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉 35.2℃ pH8.2 111L/min(動力揚湯) 溶存物質2.406g/kg 成分総計2.441g/kg 
Na+:735.0mg(94.94mval%),
Cl-:580.7mg(51.99mval%), HCO3-:893.0mg(46.46mval%),
H2SiO3:114.6mg, CO2:35.3mg,
内湯:加温している・循環ろ過装置使用・塩素系薬剤使用
露天:非加温・循環ろ過消毒無し

金沢駅から路線バスで小立野下車
石川県金沢市石引2-15-31   地図
076-262-4126

12:30~23:30
420円
ロッカーあり・ドライヤー有料(20円)、各種入浴用具販売あり

私の好み:★★
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白山杉の子温泉

2012年12月19日 | 石川県・福井県
 
金沢市街から鶴来を通って白山スーパー林道方面へ向かう途中、その道中である国道57号沿いに位置している日帰り入浴専門施設「白山杉の子温泉」を利用してまいりました。倉庫のような無骨な2階建ての建物からは温泉らしい印象を受けませんが、それもそのはず、こちらはそもそも木工関係の会社施設であり、社員の福利厚生を目的として水道用の井戸を求めるべく鑿井したら温泉が湧出したんだそうです。


 
玄関を入ると漆器などの木工品の他、地元の農家が作った野菜が直売されていました。木工品はこちらの施設の運営会社によるものでしょうけど、野菜はセルフで代金を缶に投入する無人販売スタイルでした。


 
受付のまわりでも種や食品類などいろんなものが販売されており、田舎のお風呂らしいとってもほのぼのとした雰囲気でした。そこから数段ステップを上がったところにおばちゃんが座ってる受付カウンターがあり、そちらで直接料金を支払いました。



脱衣室はこじんまりとしており、設備関係は洗面台が一台あるほか、カゴが収められてる棚が設置されているだけで、まるでジモ専を思わせるような至って簡素な造りです。


 
化成の壁材が用いられている浴室は(大変失礼ながら)安普請っぽく、仮設浴場のような佇まいすら漂わせています。
室内の右側にはシャワー付き混合水栓が5基一列に並んでおり、お湯のコックを捻ると源泉が出てきました。
建物自体は低コストで普請されたような感が否めませんが、一湯入魂と言うべきか、浴槽には檜の立派なものが据えられています。浴槽は前後に二分されており、手前側は2人サイズで半身浴になる浅い造り。一方奥側は全身浴ができる一般的な深さで3人サイズです。この奥側槽の内部にはステップが取り付けられているのですが、何故か脱衣室側半分のみで窓側には設けられていないので、ステップがあるつもりで窓側から浴槽に入ろうとしたら、思いっきりバランスを崩してしまいました。相変わらずそそっかしい私…。


 
両浴槽に跨るような感じで中央に湯口が据えられており、両方へ無色透明な源泉を注いでいます。嬉しいことに完全掛け流しの湯使いです。なお手前側の浅い浴槽には加水用の水道蛇口がありますが、奥側の全身浴槽には無く、この日は手前側槽にも加水は行われていませんでした。
完全掛け流しの他、飲める温泉であることもこちらの温泉のアピールポイントであり、湯口に置かれたコップで実際に飲んでみますと、ほぼ無味無臭であっさりしていますが、ちょっと甘みが感じられ、微かに石膏味も有しているようでもあり、ほんの僅かに塩味も帯びているようにも思われましたが、塩味に関しては自分の汗だったかもしれません。
入浴していると肌に薄く気泡が付着し、癖のないサラサラとした浴感が気持ちよく、湯上りもさっぱり爽快です。


白山杉の子温泉1号源泉
アルカリ性単純温泉 43.7℃ pH9.2 193L/min(動力揚湯) 成分総計0.963g/kg
Na+:232mg(74.25mval%), Ca++:69.3mg(25.46mval%),
Cl-:195g(36.38mval%), SO4--:389mg(53.56mval%),
H2SiO3:38.6mg,
(昭和62年12月25日分析)

鶴来駅・松任駅・金沢駅より加賀白山バスで女瀬行あるいは白山体験村行(女瀬経由)に乗車し佐良バス停下車
石川県白山市佐良タ121  地図
07619-5-5873

9:30(土日祝9:00)~20:00
420円
ドライヤーあり、他備品類なし

私の好み:★★★
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廃墟になっていた犀末温泉(2012年10月下旬)

2012年12月18日 | 石川県・福井県

金沢の郊外にマニアック受けするB級な温泉があると知り、湯涌温泉方面で湯めぐりをした2012年10月下旬某日、その帰りに立ち寄ってみることにしました。場所はほぼ特定できていたので、プリントアウトした地図を片手に現地へ近づいてゆくと、ネット上の情報から得ていた通り、目の前に「通行禁止」の看板が立ちはだかる農道が現れました。この「通行禁止」バリケードの両側路面に轍が残っていることからもわかるように、軽はもちろん普通車でも通り抜けることができますので、そこを通って農道を更に奥へと進みます。



しばらくは河原に広がる耕地の真ん中を走りますが、やがて耕地は尽きて藪ばかりの荒地となり、道路も非舗装となりました。非舗装だけならともかく、路面はドロドロで深い水溜まりも点在しており、両側からは藪がせり出ていてかなりの悪路です。私の車は普通のFF車ですから「もし駆動輪が泥や水溜まりにハマったらどうしよう」とビクビクしながらハンドルを握っていたのですが、そんな臆病な私をせせら笑うように、車体からは藪が擦れる嫌な音が響いてきます。後で車体をチェックしたら、しっかりと傷がついていました。



悪路を突き進むこと数百メートルで、施設名が手書きされたテントが右手に見えてきましたが、字が消え掛かっているそのテントは雑草のツルで隠れちゃっています。



途中で右折して目的地に到着です。この施設前にあった急な段が一番スタックしやすく、実際に車の底を軽く擦っちゃいました。施設の周囲には生活臭漂う物から粗大物まであらゆるゴミが散乱しており、施設自体も生い茂る雑草に埋もれています。はっきり言っちゃえば、完全に廃墟のゴミ屋敷です。建物にはちゃんと「犀末温泉」と書かれていますが、本当にこんなところで大丈夫なのか? この日、犀川の河原には気持ち良い青空が広がっていましたが、そんな天気とは裏腹に私の心には暗雲が立ちこめはじめました。




建物の前には車内にキーがささったままの白いバンが一台止まっていたので、こんな状態でもどなたかいらっしゃるのだろうと思いながら戸を開けるみると、電灯がひとつ灯っていましたがいくら声を掛けても誰も出てこず、室内には足の踏み場もない程いろんなものが散乱して雑然としており、溜まった多くのゴミ類からは異様な匂いが放出されていました。下手に奥へ踏み込んで事件性があるような光景を目にするのは御免蒙りたいのですし、このままでは埒があかないので、ひとまず外へ出ることに。



でもせっかくここまで来たのですから、お風呂だけは自分の目で見ておきたいという欲求が沸き起こってきたので、不本意ながら無許可のまま裏手の崖上に建つ浴室棟へと行ってみることにしました。そこへ向かう通路は完全に深い雑草に覆われており、藪こぎをしないと前へ進めません。浴場へは相当長い間、人が立ち入っていないことがわかります。
ようやくたどり着いた浴場棟ですが、戸を開けてみると妙にガランとした空間が広がっていました。既にイヤな予感はほぼ確信に変わっていましたが、念の為に奥へ足を踏み入れてみると…


 
脱衣室は案の定、虚しい光景が…。



浴室引き戸のガラスに貼られていた「掛け流し温泉」の文字が虚しい。


 

浴室は完全に廃墟と化しており、浴槽は空っぽ、至る所に落ち葉が吹き込み、ゴミや虫の死骸があちこちに転がっていました。



窓の外には露天風呂があるはずですが、雑草が茂って視界を遮り、何にも見えません。この藪の深さや高さが、温泉の廃業からどのくらいの時間が経過しているかを物語っているようでした。

まだローン返済中の愛車を傷つけながら訪問した犀末温泉ですが、残念ながらこのような惨憺たる有様となっており、入浴なんてできるような状態ではありませんでした。その後改めてよく調べたら、少なくとも昨年(2011年)の時点で既に廃業していたようですね。事前にしっかり調べずに出かけると今回のように骨折り損を被ってしまうわけです。温泉めぐりをしていると、しばしばこのような残念な結果に終わることも少なくないのですが、こちらのようなマニアック受けする温泉に関しては休廃業の情報が少ないため、遅ればせながらその事実をお伝えすると共に、愚かな私の失敗を笑っていただきたく、今回紹介させていただきました。


コメント (2)
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曲水温泉 曲水苑

2012年12月17日 | 石川県・福井県

金沢市街から湯涌温泉へ向かう途中、県道から水田の広がる谷を下って反対側の丘へ上がった先の集落にある一軒宿「曲水苑」は、その佇まいから民家かと勘違いしてしまいそうですが、実は秘湯を守る会の会員宿なんだそうでして、山奥のアクセスしにくい秘湯とは別の意味の、周囲の民家に紛れて存在感を潜めてる隠れキャラ的な意味合いで、確かに秘湯と言えそうなお宿であります。今回はこちらで日帰り入浴させていただきました。



私が訪れたのは日曜の昼下がりでしたが、毎週日曜にはメロンパンの移動販売車がやってくるらしく、この日もフランス国旗のようなトリコロールのテントを張ってメロンパンやアイスを売っていました。お風呂から上がったら一つ買っていこうかと一瞥すると、テントで店番をしていた一人のお兄さんがやってきて、私が日帰り入浴の客だとわかると入浴料金を徴収していきました。この屋台はお宿の方が商っていらっしゃるのかしら。



母屋に隣接している低い屋根の、暖簾が掛かった木造の小屋が浴場です。館内には小さな帳場もあり、通常はこちらで料金を支払うようです。


 
ガラスの向こうに内湯が見える脱衣室にはロッカーとカゴが備え付けられており、客の好みに応じて両方使うことができます。さすがに旅館らしく、手入れがよく行き届いており気持ちよく利用できました。


 
内湯はかなりこじんまりしており、室内には木造の浴槽がひとつ、そしてシャワー付き混合水栓が3基据えられています。シャワーは吐出の水圧がちょっと弱めでした。


 
短い樋の湯口から源泉が落とされていますが、湯温がやや低いため、浴槽内には加温用の循環吸引&吐出口が開けられていました。循環といっても加温するだけでして、濾過や消毒を目的としたものではありません。



露天風呂は集落の下方に広がる水田やその山の緑を一望できる大変見晴らしの良いロケーションです。


 
狭い内湯を補完するためか、こちらにも洗い場が設けられていました。内湯と違って、こちらのシャワーはお湯が勢い良く出てきました。また周囲を囲う塀には編み笠が掛けられており、雨や雪の日にはこれをかぶって湯浴みするわけですね。


 
常時加温の内湯と異なり、露天は冬を除き原則的に加温なしの完全掛け流しのようです。
お風呂の脇には笠掛けされたポンプが据え付けられており、それにつながる塩ビのパイプからお湯が泡を上げながら浴槽の底で吐き出されていました。てっきりこのポンプは揚水ポンプで源泉を汲み上げているのかとおもいきや、吐出口の傍にも塩ビパイプがあって、その口を手で塞いでみたら吐出も止まってしまったため、ポンプは揚水用ではなく循環ポンプであることが判明。冬季は39℃くらいまで加温するそうですが、この循環装置によって冬季にかぎらず温度調整が行われているのかもしれませんね。循環といっても温度調整するだけですから、お湯の質感が損なわれるようなことはほとんどありません。

お湯は無色透明で湯中では焦げ茶色の膜を細切れにしたような湯の華が浮遊しており、、口に含むと塩辛さとニガリの味がはっきり感じられ、お湯を手で掬って鼻に近づけてみると磯のような香りと非鉄系の金気臭がほんのり湯面から放たれていました。ツルスベの中に引っかかりが混ざる浴感で、ぬるめですが食塩パワーによって力強い温浴効果が発揮されるので、湯上りはとても良く温まり、何時まで経っても汗が引きませんでした。
湯涌温泉から比較的近いにも関わらず、それとはかなり異なる塩辛いお湯を楽しめるところが面白いですね。温泉水を煮詰めたらいわゆる山塩ができるかもしれません。温かみのある木造の内湯と景色の良い開放的な露天、それぞれでしょっぱい温泉に湯あみできる素敵なお風呂でした。


1号泉
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 46.7℃ pH8.3 81.3L/min(動力揚湯) 
Na+:3860mg(63.30mval%), Ca++:1903mg(35.79mval%),
Cl-:9255mg(95.70mval%), SO4--:521mg(3.98mval%),

石川県金沢市七曲町ハ132-1  地図
076-235-1717

平日10:00~22:00、土日祝9:00~22:00(日曜は朝7:00~) 火曜定休
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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