ポルトガル装飾タイル専門店のアズレージョピコの深越さんに、
ポルトガルのタイルについていろいろお伺いする機会を頂き、訪れてきた。
日本でもポルトガル装飾タイルを扱っているお店は、こちらが唯一と言っていいほど、知る人ぞ知るお店。
店内には、色鮮やかなポルトガルのタイル、アズレージョが並んでいる。
これらは全て、プリントものではなく、手描きのタイルなのだ。
現地のアーティスト兼職人さんがひとつひとつ丁寧に描き上げたもの。
手描きならではのリアルさや、陰影など、まるでキャンバスに描かれた絵画のようで、額縁に値する縁取りまでもが細かく描き込まれてる。
お店のカウンターもタイル貼りになっているのだけど、
繰り返しのパターン模様ですら手描きで描かれているという贅沢。
深越さんによると、手描きの場合は、濃淡や描き始めや終わりの箇所にわずかに顔料が溜まってるという。
なるほど、プリントだと平面的になるだろうけど、こちらは立体感がある。
現代のポルトガルタイルは15cm角で5mmの厚さにほぼ統一されていて、
昔のものより重さも軽くなり扱いやすくなっているそう。
オランダのデルフトタイルを模したものも17世紀頃にポルトガルで
流行ったもので、手描きのデルフト風のタイルもいろいろとあって、
以前、私の友人はこちらのタイルを使って洗面所の腰壁をリフォームしたことがあり、写真を見せてもらったが、とても素敵に仕上がってた。
コインブラで有名なデルフトタイルの作家さんの作品も。
魚がモチーフの独特な図案が楽しい。
黒い顔料で描かれた絵もブルーの雰囲気とはまた違って渋くていいなあ。
クラシックな衣装を身にまとった人物像の組みタイルは、上部の飾りに沿ってタイルがカットされている。
リスボンでもいくつか見たが、ポルトガル独自のもののようだ。
こちらは現地のポルトガルでのアズレージョを使った壁面装飾の写真。
アズレージョに描かれているのは写真か?と思うようなリアルさ。
本来、石であったり、木であったりする柱などの装飾もポルトガルではタイルで
表されるということが多いという。
こちらは深越さんがリクエストし、現地のタイルアーティストさんに描いてもらったというフレンチブルドッグを描いた組タイル。
犬の毛並みや敷物の質感などまで本当にリアル。
タイルは、好みの絵を描いてもらうことも可能だそう。
半永久的に残るタイルだからこそ、こんなオーダーメイドはうれしい。
ポルトガルでは現在でも、タイルにおいては手描きが主流だということで、
手仕事が大事にされているお国柄っていいなあとしみじみ思った。
いつまでもこういった伝統工芸を守り続けていって欲しいなあ。
この日はさまざまなタイルの話をお聞かせ頂き、お話はなかなか尽きず、
あっという間に時間が経ってしまった。
深越さん、お忙しいところありがとうございました。
アズレージョピコさんのちょうど向かいにあるカフェ、好文舎へも訪れた。
のれんをくぐると、細長い路地が続いていて、
奥まったところに玄関が。
障子を開けると、素敵な空間が目に飛び込んできた。
カフェ&ギャラリーにもなっていて、ちょうどやきものの作家さんの展示も見ることができた。
窓の外に広がる中庭の景色が、ちょうど雨に濡れてしっとりした風情があって
すごくいい雰囲気。
着物の販売をされていた町屋だったそうで、喫茶室にあたるこの部屋は
商談の間として使われていたそう。
苔の緑も鮮やかで雨に濡れた石も艶やか。
中庭に面した廊下
お手洗いの床は玉石タイル。
お手洗いの壁面はシンプルな白いタイルが貼られてたが、縁が全てカーブのついた役物タイルが使われてて、思わず激写してしまった。
自家製のレモネードを頂き、一息つけた。