しまなみ帰りの昨日は、早朝にフェリーで南港に着いてから、大津へ直行。
インスタのフォロワーさんに教えて頂いた大津、柴屋町遊郭にあるえびすやの「さよなら見学会」に参加してきた。
数日前に予約を取った後、すぐ定員いっぱいになってた模様。
建物は現在、香港の大学の先生が設立したというセンスアートスタジオという会社が買い取り、調査をしながら、使える部材はできるだけ残し、
新たな場所で活用を検討中とのこと。
今回は解体前の最後の見学会だった。
最初に大津市歴史博物館館長さんから建物やこの地域についての歴史的な説明があった。
江戸時代から花街として賑わってきた柴屋町遊郭は、東海道の宿場町であったことはもちろん、琵琶湖の水運により年貢米などの物資の取引で栄えた地域だったそうで、三大遊郭に次ぐ規模の大きな遊郭だったという。
建物は昭和初年の建築だそうで、木材には旅館や料亭などでも用いられる銘木が使用され、格の高い妓楼建築だったのこと。
内部にカレンダーやポスターが残されていたことから、少なくとも1980年代までは、人が住まわれていたようで、後年は、アパートとして使用されていたとか。
これまでに外観は何度か拝見したことがあったが、内部の見学は初めて。
建物の象徴的なこちらの丸窓には、亀甲竹の縦の断面を見せた面白い細工が入る。
残念ながらベニヤが貼られてるので、内側からこの窓を見ることはできなかったが、、
1階の格子戸の上の火灯窓。
内側には繊細な組子細工が見られる。
そして、いよいよ内部へ。
玄関を入ったところ。
ベニヤが貼られてる左手には張見世があったといわれる。
間口はそれほど広い玄関ではないが、折り上げ天井がゆったりとした空間をみせていて、
たたきには、大小の小石がバランスよく配置されている。
玄関ホールには庇のついた和の風情の雁行する壁、
その天井が複雑に分割され、デザインされていてとても素敵だった。
その先には、ダイヤ型の鏡の入った扉。
この部屋はダンスホールとして使用されていたそう。
芸者さんなどが呼ばれ、踊りや三味線などを楽しんでいたのではないかとのこと。
天井は折り上げ格天井で、市松状にガラスが貼られ、華やかでモダンな雰囲気に。
腰壁はモールディングのついた木で装飾され、
上部には、モダンな雰囲気の布製の壁紙。レトロなスイッチプレートも。
1階の奥へと続く廊下。
奥には台所やトイレなどがあるが改修され、タイルなどは新しいものになっていた。床面には玉石タイルが貼られてるようだったけど、近くには行けず。
こちらの建具も型板ガラスや、四隅の組子細工など、とても凝ったものだった。
そして2階へ。
階段の壁の上部は塗り壁になっていて、竹を使った装飾がユニーク。
階段の手すりは親柱に擬宝珠がつき、橋を表しているよう。
階段は水の流れ、竹の装飾は波かな?
そして組子細工の干し網が階段に彩を添えている。
末広がりの干し網は縁起のよい意匠。
ゆるやかに弧を描く橋の欄干は、古い水車を利用したもののようだ。
更に階段の天井は舟底天井に。
お部屋の踏込部分のデザインもしゃれてる~
小さなスペースなのにデザイン性があるのだ。
踏込の両サイドの立ち上がりにはこんな亀甲型に彫刻された木材も使われてる。
更に部屋に入って驚いたのはこの傘天井。
桜、南天、杉、、、、と多種類の木材を使用し作られたものだそうで、
さまざまな木材の質感が絶妙な調和を生み出していた。
階段から見えた干し網の組子を部屋から。
当初は上部にも組子が入っていたようで、そのパーツが横に置かれてた。
落とし掛けにもくるんと丸まったユニークな珍木が使用されている。
そして表に面する窓の上部にはこれまた繊細な組子が入れられていた。
全く破損していないのもすごいなあ。
もう一方の表に面した部屋の入口手前壁面下部にも、
土壁に木材で自由な装飾が付けられてる。
部屋に入ると、あっと驚くベッドルーム。
天井の装飾もまた違ったパターン。
引き出し収納付きの造り付けのベッドがぴったり収まる。
部屋の落書きはアパート時代に住んでいた人のものと思われる。
窓辺は、やはりきれいに残っている組子細工が圧巻。
壁面も下部は板貼りで、上部は壁紙。
洋室はこのパターンで統一されてるようだが、全てデザインが違ってる。
2階座敷の入口には、竹を用いた庇が。
これが、単に輪切りにした竹を並べただけではなく、
横から見るとわかるように、断面を薄くスライスした部分と、竹の本体とは
別々で組み合わされたという手の凝りよう。
座敷の天井もまた中心部が網代で、堀こたつの脚を切り落としたような意匠が貼り付いている。
そしてもう一室あるベッドルーム。
こちらも造り付けで、ベッドヘッド部分の小引き出し収納も充実。
ベッドヘッドの上あたりにつく丸窓からは明るい光が入る。
ベッドの足元部分には目隠しの仕切りもついている。
更に驚くことに、この部屋の一面は鏡貼りになっていた。
鏡の上にはアールデコのデザインが素敵な照明。
そして天井は凹凸で表された市松模様と、どこまでもモダンな部屋だった。
2階の奥は床の状態により立ち入り禁止。
最後に1階のホール横の小部屋。
この小部屋の天井もダイヤ型の市松模様になっていた。
とにかくもう度肝を抜かれるような多彩な技術が光る装飾のオンパレードに興奮!
細かい部分にもセンスが行き届いていて、和洋折衷具合が絶妙な見応えある建築だった。最後に見ることができてよかった~
今後は少しでも美しい手仕事の跡が残る部材を、新たな場所で活かせてもらうことができればうれしいな。
今後の建物の様子はこちらのInstagramにてお知らせされるそうです。
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