蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

認知心理学  (bon)

2014-02-12 | 日々雑感、散策、旅行

いかめしいタイトルですが、身近で面白い内容ですのでお付き合いください。

 出だしは固いところで、ウイキペディアでは、
“認知心理学は、情報処理の観点から生体の認知活動を研究する学問である。
認知心理学は、知覚・理解・記憶・思考・学習・推論・問題解決など人間の高次認知機能を研究対象とし、
脳科学、神経科学、神経心理学、情報科学、言語学、人工知能、計算機科学などとの関わりあいの中で
認知科学と呼ばれる事もある。  この場合は心理学の手法に留まらず、認知心理学による研究成果に広く基づき、
コンピュータの処理モデルを構築する事やそれを用いて人の認知モデルを再検証する事等も含む。
最近では、意識や感情、感性といった問題にも取り組むようになってきている。”

“コンピュータの発展に伴い情報科学が盛んになり、その情報科学の考え方が心理学に取り入れられ、
認知心理学という分野が成立した。”  といわれ、 “そのキーワードは、情報処理・コンピュータ・認知主義・人工知能・
状況論・モデル・システムなどがある。”   と述べられています。

 とまあ、こういう新しい学問分野でありますが、先日届いた会報には、先の東日本大震災(2011.3.11)から学ぶこと
~東北大学の取り組み~ という論文集がありました。 
興味深く読んだ中に、この認知心理学を視点とした、“災害と人間”  というテーマで述べられた記事がありました
(著者:東北大学災害科学国際研究所教授、邑本俊亮氏)。

 それで、冒頭に記しました認知心理学の視点から、災害時に人がどのような意識に基づいて判断、行動しているかを、
面白く分かり易く分析されていましたので、抜き読みの形で、その要点をここにご紹介します。


先ず、認知バイアスという事象を取り上げられていて、 “人がリスク情報を認知する際、何らかのバイアスが
かかるようですが、災害時に怒り易い認知バイアスにはどのようなものがあるか?”

①    これくらいは普通  例えば突然火災報知機が鳴った時、“これは検査だろう。大したことはない” などと思ってしまう。
 “正常性バイアス”といって、物事を正常の範囲内で捉えたいいう心理なのだそうです。

②   自分だけは大丈夫  他の人は運が悪いが、自分は運が良いと考えたい生きもの。 災害時でも、まさか
自分のところが・・と考えてしまう。比較楽観主義バイアスというのだそうです。

③   前回は大丈夫だった  判断の際に、思い出す好情報の影響を受けやすい。利用可能性ヒューリスティック(経験則)という。

④   皆と一緒なら安心  他の人に同調していれば安心という集団同調性バイアスがある。

⑤   防潮堤があるから安心  防潮堤やハザードマップ情報に頼り切っている。


どれも、思い当たる部分が多いですね。
 このように、人の認知と判断にはバイアスがつきものであり、災害などの時にはこのバイアスを振り切らなければ
ならないといっています。


次に、人の判断は主観的という視点です。

 人は、日常生活の中で、極めて主観的な判断をしているというのです。

①    人の判断は客観的な期待値と必ずしも一致しない  例として、次のどちらを選ぶか?

A: 80万円をもらえる   B: 100万円もらえるが、15%の確率で1円ももらえない

 殆どの人はAを選ぶ。  今度は質問を変えて、

A:必ず80万円を支払う  B:100万円支払うが、15%の確率で1円も支払わなくてよい

 この場合は、Aを選ぶ人は少数で、大半はBを選ぶ。
 

 期待値の計算では、前者では、Aは80万円、Bは85万円もらえるので、Bが望ましいが、多くの人はAを選んだ。
後者では、Aは80万円、Bは85万円の支払いとなるので、Aの方が望ましいが、多くの人は、Aを選んだ。 
合理的な判断とは 違う 判断を人はするのですね。
つまり、もらえる額は確実にもらおう、少しでも支払いが0になるなら、それに掛けようとする心理。

②    人は数学的な確率で判断しない  この例として、2つの例が引用されています。 その一つは、

コインを5回投げた時、次のどちらが出やすいか?

A: ○○○○○   B:○●●○●  多くの人はBと答えるのですが、確率は同じです。 そして、Aの人が、続いて6回目に投げた時、次はか?と問えば、多くはと答えるようですが確率は50%ですね。 
これは、“ギャンブラーの誤謬” と呼ばれる心理だそうです。 
もう一つの例は、2枚の宝くじがあってどちらかをあげると言われたら、どちらをもらうか?

A:111111    B: 168372     ほとんどの人は、Bを選ぶが 当たる確率は同じです。 
しかし、心理としては、Aはめったに出ない、Bの方が当たりそうと思うのです。

③    人の判断は表現に左右される   どちらの先生に手術をしてもらいたいですか? という例題で、

医師A:これまで千人の手術をして950人が5年以上生存している

医師B:これまで千人の手術をして50人が5年未満で死亡している

この例では、表現に左右されて、医師Aを選ぶ人が多いが、両社は同じことを言っているのです。

④    自分の期待が判断に影響する  ここで、Gerald H. Fisher(英)の “man and girl” の絵が出てきます。   
 G.H.Fisherの論文を調べてみましたら、図のよな部分がありました。

        (Fisher の論文から―部分)

 それで、これらの絵をネットから検索して、拡大してここに引用します。

      man and girl
              (ネットより)
 

元の一つの絵が、上段のように男性の顔のようにも見え、下段では女性が座って手で顔を覆っている姿に見える 
いわゆる“だまし絵” と呼ばれているものですね。 自分の期待するように物を見ているというのです。
 この論文から離れて、もう一つよくご存知のだまし絵を見てみましょう。

       my wife and mother-in-law
               (ネットより) 


 1800年代にドイツの絵ハガキにかかれていた絵を、W.EHill(英)によって1930年に公開された
“妻と義母”というモノです。  この絵も潜在意識によって判断され、若い娘にも、老婆にも見えます。
一方が見えている時はその意識があり、その時他方は無意識にあるという。 
よく “気づき” という人の重要な能力がありますが、これは通常の意識では、発見できなかった(しなかった)状況、
つまり無意識にあった状況から気づきによって意識することなんですね。
 

ついでに、もう一つ、だまし絵を紹介しておきましょう。

          婦人と老婆
                (ネットより)

 

これも有名なだまし絵として紹介されている。  
どちらが先に見えましたでしょうか? 若い婦人ですか? 老婆ですか? 
そして、もう一つの絵も気づかれましたでしょうか? さらに、帽子の中にも、絵が隠されていましたね。


⑤    参照情報に引きずられた判断をする   例えば、

A:フランスの失業率は9.9%だが、ドイツではどのくらいか?

B:イギリスの失業率は2.8%だが、ドイツではどのくらいか?

 この2つの質問は、共にドイツの失業率を問われていますが、Aでは、9.9%に近い値を、 Bと言われた人は
2.8%に近い値を応える傾向がある。  “津波の高さは何m” という情報に、引きずられるのです。
アンカーによって判断が引きずられるのでこれを “アンカーリング効果” といわれるのだそうです。


以上に、興味深い人の心理が分析されてきましたが、これらを踏まえて、

今後の災害に備えて出来る事 がまとめられています。

①    災害を知る  日頃から災害について多くの知識を売ることが大事です。 
②人の心理を知る  人は勝手な判断をし易い“認知バイアスがある”ことをよく理解し、適切な判断と行動をする。 
③何度も防災訓練をしておく  何度も繰り返すことが重要だとしています。 実地訓練の記憶は覚えている、
言葉ではなく身体で覚える ことが大事なんですね。  
④震災を忘れない 風化させない ことも重要だとしています。

 

 以上のように、状況や情報から人の認識・判断がいかに心もとないものであるかの側面が理解できました。
私のような世代になると、これまでの多くの経験や失敗のお蔭で、物事を多面的に見て、ある程度正しい判断を
していると思いたいですが、 災害などのように、これまでの自身の経験が無かったり、遭遇の機会が少なかった
ような事象で、果たして適切な判断をして行動できるか疑わしい限りです。
せめて、知識を増やすか、訓練の機会などに積極的に参加して意識を高めておきたいものです。

 

 

  

 

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする