蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

論文数  (bon)

2017-09-08 | 日々雑感、散策、旅行

 
 ちょっと硬めの記事内容になってしまいましたが、この10年ほどの間、日本の発表
論文数が減少傾向にあり、世界の増加動向とは反対の方向に推移しているというのです。
 論文数が多いことが良いことであるとは 必ずも断定できないかもしれませんが、研究
機関が発表する論文は、やはり各分野の基盤的な“力”すなわち“能力”を表している
とも考えられ、昨今の傾向は、いわばボデーブローとなり いずれ大きな禍根をきたす
恐れがあるのではないか・・そんな風にも思えるのです。

 普段、あまりとり上げられていない、各分野の研究論文について、文科省、その他の
ブログ記事などから抜粋してご紹介したいと思いました。

 先ず文科省データから、論文数の推移などを概観した後、「ある医療系大学長の
つぼやき」(つぶやき+ぼやき=つぼやき)なるブログ(少し古いですが)から、国大
協報告書18の資料に基づく分析などを引用しました。
 以下、文中に引用させていただいた図表は、文部科学省HPおよび国大協報告書からの
抜粋です。(各図表ごとの出展記述は割愛させていただきました。)

 
論文数及び論文数シェアに関する国内外の状況

 世界の主要な論文誌に発表された日本の論文数は、1988年(昭和63年)から2008年
(平成20年)の20年間で 40,990件から69,300件へと 約1.7倍増加しています。しかし、
論文数を国別に見ると、日本は10年前[1998年(平成10年)]の世界第2位から 近年
[2008年(平成20年)]で、世界第5位に転落しています。(下表)

  表3 国・地域別論文発表数(上位25か国・地域)
   

 

 次に、各国の論文数が世界全体の論文数に占める割合(論文数シェア)で見ますと、
日本は、2000年ころから論文数シェアは減少し、2008年では 7.0%となっています。
上の表からも分かりますが、中国の論文数が
1990年代後半から飛躍的に増加し、中国の
論文数シェアは2008年で10.5%と世界第2位となっています。中国の論文数の増加に伴い、
日本や米国、英国及びドイツ等の主要国における論文数シェアは共に減少しました。

  図4 主要国等における論文数シェアの推移
  

 

 次に、論文の被引用回数に関する国内外の状況 では、

 日本で発表された論文の相対被引用度(脚注)は、1998年(平成10年)の0.89から
上昇を続け、2009年(平成21年)では 1.02
と世界平均の1を初めて上回りました。
  (注)相対被引用度(各国の論文数当たりの被引用回数を世界全体の論文数当たりの被引用回数で
     除して基準化した値)

   図5 主要国等における相対被引用度の推移
   

   また、日本の全分野におけるトップ10%論文(論文の被引用回数が各分野で上位10%
に入る論文)の数は、1988年(昭和63年)から2008年(平成20年)までの20年間で3,470
件から5,283件へと増加していますが、トップ10%論文数のシェアについて見ますと、上
述の論文数シェアと同様、中国のトップ10%論文数シェアが1990年代後半以降飛躍的に
増加し、2008年において8.0%になっています。日本の同年におけるそれは 6.4
%です。
中国のトップ10%論文数の増加に伴い、日本や米国のトップ10%論文数シェアは減少して
います。

   図6 主要国等におけるトップ10%論文数シェアの推移
   


 

 論文の分野ごとについて概観してみますと・・ 

  分野ごとに日本の世界における論文数シェア及びトップ10%論文数シェア[2007‐
2009年(平成19‐21年)]では、日本は化学、材料科学及び物理学、宇宙科学の分野に
おいて高くなっていますが、その他の分野ではかなり低いです。
  (注)下図で、米国のスケールとその他の国のスケールが異なっています。
     青線は、論文数シェア、赤線は、トップ10%論文数シェアです。

 図10 主要国等における分野ごとの論文数シェア及びトップ10%論文数シェア
                 
                
米国

    


 また、分野別論文数の世界、および日本の状況を見てみますと、

 
全世界では、各分野とも論文数は増加していますが、日本のそれは、わずかに、臨床
医学分野においてやや増加しているもののその他分野については、微増か減少しています。
とくに、物理化学物質分野は、過去には強みを持っていた分野ですが、2004年以降減少し
ています。
 この2004年というのは、国立大学法人化実施年で、文科省方針では、大学の自由、自主
性を重んじる等の理由とされていますが、基礎運営費の交付額の減少などから、基礎
研究
への圧迫や職員数の削減などその環境は厳しくなって来ているようです。
 国立大学の法人化による影響は、やはり諸外国などに比してその成熟度合がまだ低いの
かもしれませんが、民間企業における研究活動もやはり厳しくなっているのかもしれませ
んね。

     


    

 

 ここで、“ある医療系大学長のつぼやき”「国大協報告書草案18」に基づく分析
ブログ記事(鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康氏)から、部分を抜粋しました。その傾向
などを感じ取っていただければと思います。

 『過去に日本が優位性を保っていた産業競争力が、韓国、台湾、中国などの新興国に
追い抜かれていることについて、日本の技術の流出や、経営戦略の失敗などがその理由と
して挙げられているが、学術分野別の論文数の推移をみると、新興国は一朝一夕に日本を
凌駕したのではなく、大学の研究力を高めるという正攻法によって、日本を抜き去った
ことがわかる。例えば、韓国や台湾という、日本よりもはるかに人口の少ない国における
情報・エンジニアリング分野の学術論文数は、絶対数で日本と同等もしくは多いわけで
あるから、日本のこの分野の関連産業が両国に負けることは当然であると思われる。』

 『「選択と集中」(重点化)よりも、日本の研究力、あるいはイノベーション力の
“底力”を高める抜本的な対策を 今すぐに取らない限り、日本は二度と再起できない
国家になってしまう可能性がある。』

『情報・エンジニアリング分野では、論文絶対数では中国の躍進が目覚ましく、アメリカ
をすでに追い越している。日本の順位は7位であり、人口が5千万人の韓国にすでに追い
抜かれている。なお、情報分野(computer science)に限ると、日本は11位であり、韓国
はもちろん、人口が2300万人の台湾にも追い抜かれている。』

『物理・化学・物質科学分野でも、論文絶対数は中国の躍進が目覚ましく、すでに米国を
上回っている。日本は、この分野では過去に強みをもっていたが、2004年以降明確に論文
数が減少し、現在4位となっている。』

農林水環境分野では、論文絶対数では米国が1位、中国が2位であり、日本は8位となっ
ている。人口当り論文数ではニュージーランドが健闘し、日本は先進国中最下位である。』

地球・宇宙分野では論文絶対数では米国が1位、中国が2位、日本は8位、人口当り論文
数では日本は、最下位ではなく韓国よりも上の順位となっている。』

『数学分野では、論文絶対数では中国が米国に追いつき、追い越している。日本は7位で
ある。人口当り論文数では、日本は他の諸国よりも一線を画して低い値であり、韓国にも
引き離されている。』

社会科学分野では、論文絶対数については、米国、イギリスが多く、中国は8位にとど
まっている。日本は15位であり、人口が2300万人の台湾よりも少ない。人口当り論文数で
は、日本は韓国よりも少なくなっている。』

  

 このまま進むとどうなるのか、かなり気がかりではあります。 過去に、予算審議か
なにかで、“なぜ1番でなければいけないのか?”などの愚質問がありましたが、国の
力というものは、基礎的な研究力と世界をリードしてゆく実行力を育てて行かなければ
衰退して行くしかないのですね。
 防衛力も、社会保障も大事ですが、いずれ“ジリ貧”にならないよう、国のかじ取り
をお願いするしかないわけですが、そのためには、しっかりとした政党、少なくとも
2大政党の軸が成立しないといけないでしょう。折しも、来年度予算も100兆円を超える
規模の概算ですが、英断が必要な部分があるでしょうね。

 それにしても、上の各グラフから、論文数、相対被引用数、トップ10論文シェアなど
を見て、米国は論外としても、英国、ドイツの実力のすごいことを改めて認識しました。



 

 

 

 

コメント
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