年末に、古いものをちょっと整理していましたら、お香のセットらしいものが出てきま
したので、懐かしい思いで炊いてみました。香炉は、30年くらい前に買い求めたもので、
お香たどんや白檀などは、その後に買ったものがそのまま残っていました。
なので、さっそく炊いてみました。 銀葉を乗せた上に白檀を置く、「聞香(もんこう)」
タイプにしましたが、なんとなくほのかな香りがあたりに漂っている感じで、普段とは少し
違った雰囲気になりました。
遊びでやってみただけのことですから、優雅とか風流とかとはあまり関係なく、ただ、
ほのかな良い香りは、これはいただき・・ですね。でも、これが毎日だと、匂いのことなの
で、“鼻につく”感じかもしれませんが、まぁ、たまに炊くくらいなら安らぎみたいな感じ
がします。
30年ほど前に買い求めた香炉です。
道具類など
時々、線香をたくくらいで、お香の流儀などは、からきし気にしなかったので、改めて
ネットでその何たるかを見てみました。
創業300年ほどにもなる京都の老舗、松栄堂のHPに、歴史や炊き方などが丁寧にまとめられ
ていましたので抜粋して以下に記しておきたいと思いました。
歴史的には、飛鳥時代にさかのぼるそうで、やはり仏教伝来(538年)を期して仏教儀礼と
ともに香が大陸から伝えられたとあります。 そのまま、奈良時代には、主に仏前を浄め、
邪気を払う「供香(くこう・そなえこう)」として用いられ、宗教的な意味合いが強いもの
であったようです。
平安時代に入ると、香料を練り合わせて、香気を楽しむ「薫物」が貴族の生活の中で流行し、
自ら調合した薫物を炭火でくゆらせたり、部屋や衣服への「移香」を楽しんだそうです。
平安時代の王朝文学には、香の記述が多くあり『枕草子』や『源氏物語』にも散見されるよう
です。
さらに、鎌倉・室町時代になると、武士が台頭し、禅宗が広まり、香木そのものと向き合
い、一木の香りをきわめようとする精神性が尊ばれるようになったといいます。この頃に、
香木の香りを繊細に鑑賞する「聞香」の方法が確立したとされます。 そして、室町時代
に東山文化が花開く中、茶の湯や立花と同じく香も、寄合の文化の一翼を担ってくるのです。
江戸時代には、貴族、武士階級だけではなく、経済力をもった町人にも香文化が広まり、
「組香」の創作や、それを楽しむために多くの優れた香道具が作られ、また、香を鑑賞する
ための種々の作法も整えられ、いわゆる「香道」として確立されて来たとあります。
一方、中国からお線香の製造技術が伝わり、庶民のあいだにもお線香の使用が浸透して
きますが、さらに時代の変遷に合わせた種々の新しい香が開発され現代では香りのみならず
色、形など様々なものが出回っています。
私のところにも、上の写真のような香炉のほかに、かまどを うんと小さくしたような陶器
製で 上皿に、好きな練香などを置いて、下から固形燃料で炙る式のものとか、カラフルな
三角錐の先端に火をつける式のものなどがあります。 しかし、白檀の香りに勝るものは
なかったです。
折角ですから、松栄堂 HPから、もう少し抜粋してみました。
<お香の種類>
〇直接火をつけるタイプのお香
お線香・スティックタイプ 一番ポピュラーなお香で、室内線香、仏事線香など、目的に
よって様々な種類や長さがあります。 長いものは折るなどして時間の調整ができる。
このほか、円錐型や渦巻型があります。渦巻き型は、“蚊取り線香”でお馴染み。
〇常温で香るタイプのお香
火を使わず室温で香るように調合されたお香なので、最も手軽に楽しめ、お部屋飾りや
衣裳のアクセントとして“匂い袋”があります。
〇間接的に熱を加えるタイプのお香
おこした炭をうずめた香炉で、ひと手間かけてお香をたく。 ゆったりとした時間の流れの
中に溶け込みながら楽しむ。 いわゆる香木を炊くのですが、香木のたき方には、繊細な
香りの味わいを鑑賞する「聞香(もんこう)」と、お部屋の空気を彩る「空薫(そらだき)」
があります。聞香は、“香を聞く”というやりかたで、香炉を水平に持ち上げて手のひらで
かざして香りを嗅ぐやり方で、香たどんを灰で包み、火の上に「銀葉(ぎんよう)」を載せて、その上に香木片を置くやり方です。私は、このやり方でやるのですが、手のひらをかざすの
ではなく、そのまま部屋に流れるほのかな香りを味わっている・・という感じなんです。
空薫は、銀葉を使わず、火(たどん)の上に直に香木片などをくべるやり方のようです。
香木以外に目的に合わせて、練香(ねりこう)、印香(いんこう)などがあるようです。
〇専門的なお香
主にお寺などで使われるお香です。 お経のときに出てきます、長尺線香や塗香
(ずこう)、抹香(まっこう)それに焼香があります。焼香はお馴染みですね。
<お香の材料>
香木
沈水香木(ぢんすいこうぼく)
(松栄堂HPより)
様々な外的要因によって木質部分に樹脂が凝結し、樹木自体が枯れていく過程で熟成され
てできたもので、 「水に沈む、香りのする木」ということから「沈水香木」(略して沈香)
と呼ばれます。
その中でも伽羅と呼ばれるものは最高で、香気や油質の違いにより分類され、インドシナ
半島・インドネシアなどの熱帯雨林で産出され、薫香料のほか、薬用としても古くから知ら
れています。
白檀(びゃくだん)
(松栄堂HPより)
インド・インドネシア・マレーシアなどで栽培されています。その中でも、インドマイ
ソール地方のものは最高品質で「老山白檀」と称されます。 薬用・薫香用・彫刻工芸品・
扇などにも使用される最もポピュラーな香木です。
しかし、この世界にも 地球規模での自然環境や社会情勢の変化にともない、品質の良い
沈香や白檀を安定供給することは次第に困難になりつつあるといいます。 ことに沈香は
絶滅危惧種として、世界的な視野での保全管理が必要とされているそうです。
最後に<お香の原料たち>
お香の原料として使用される天然香料には数十種類あり、天然のものだけに入手困難な
ものも少なくないそうです。 これらは、中国やインド、東南アジアを中心に産出されて
います。 中には、香辛料や漢方薬として親しまれているものも多くあるという。
以下に列記します。
桂皮(けいひ)、大茴香(だいういきょう)、丁子(ちょうじ)、安息香 (あんそく
こう)、乳香 (にゅうこう)、竜脳(りゅうのう)、山奈(さんな)、貝香(かいこう)、
藿香(かっこう)
ネットなど、デジタルでは「香り」を伝えることは今のところ出来ないのですね。