このところ賑わしている厚労省の「毎月勤労統計」の不適切調査を始め、さらに、政府
が56ある基幹統計を点検したところ、半数近い22統計で不適切な手続きミスなどが見つ
かったと報告があった問題です。一つの統計で複数の問題があるケースもあり、延べ31件
に上る とあります。
基幹統計にこのような重大な問題があったことは、まさしく国家的信用失墜事件で
“国家の一大事”とも言うべき事案です。
大きく取り上げられている「毎月勤労統計」は、雇用保険失業給付や労災保険給付など
2000万人に影響を与える大きな問題であるばかりでなく、日銀のGDP算出や金融政策への
影響を含め、政府の経済、財政、金融、労働政策等の立案決定の根幹にかかわっているの
ですね。 とても “不適切な調査”で片づけられる問題ではないのですね。 厚労相は、
自らの減給をはじめ、22名の訓告・減給の処分を発表しましたが、何をかいわんやです。
(厚労省資料より部分)
(公表値の給与は再集計より少なくなっています。)
決められた調査方法によらず、統計法違反にあたる “全数の1/3サンプル”の抽出
データとしていたとすれば、もはや、“ミス”ではなく、意図的なものであったと疑われ
ても仕方がないところです。 毎年の春闘前の「賃金統計」も経済界に求めた3%賃上げ
が達成されたというのも、実際は達成されていない現実を偽ったものとなり、そこに
「忖度」が働いていたともとれるのですね。
タイトルの「ゆるんでる」ではなく、「ねじまがっている」が合っているかもしれません。
厚労省は、数年前の年金記録で大きな問題を起こし、多くの国民が煩わされた記憶が
あります。単に、煩わされた・・で済む問題ではなく、多くの時間と労力・費用がそれに
よって失われてしまいました。
巨大官庁「厚労省」の分割再編が浮上したり、信用失墜問題追及に、今日(28日)から
始まる通常国会は波乱含みの展開が必至と予想され、またまた前向きの議論ではなく“浪費”
が繰り返されそうです。
まだ、記憶に新しい森友学園の国有地売却問題もうやむやで、財務省の公文書改ざん事件
もはっきりとせず、霞が関は “ゆるんでる””ネジまがっている”より、ひょっとして
“くさっている” のかもしれません。
今回の統計調査の問題に対して、対応している職員数が10年前の半数に減っている・・
などの言い訳みたいな論調もありましたが、前例に従って無批判に処理していたなど、そも
そも統計調査を軽視していたともとれますし、何より、10省庁合計の担当職員数は確かに
半減していますが、厚労省のその減少は279名→233名(H30)と約16%減ですから大した変
化はなかったですし、国交省でも54→51名(H30)で、約6%弱の減なんですね。
国交省の「建設工事統計」でのミスは、業者のデータ投入ミスと報告されています。
2ケタ大きい数値が入力されたといいます。 入力データのチェックなどは、普通、新人
ソフト設計者でも、そのような異常が生じないようにしておくのは常識であるのに、そん
なことも抜けたまま放置されて来たということなんですね。
国の統計は、平成19年に制定された「統計法」で指定される統計に従っており、そも
そもは、戦後1947年(昭和22年)にその必要性から制定され、それが、2007年(平成19年)
に全面的に改正され、省庁ごとに定められて合計56の基幹統計が定められています。
内閣府は国民経済計算、総務省は国勢調査など14、財務省は法人企業統計、国税庁は民間
給与実態統計、文科省は学校基本統計など4、厚労省は人口動態統計、毎月勤労統計など9、
農水省は農林業構造統計など7、経産省は工業統計など10、国交省は建設工事統計など9の
合計56です。
統計の精度をどう高めるかは、日本経済の将来にも影響する重大な問題をはらんでいる
といわれる折から、今回のような精度以前の問題は、国内の混乱ばかりでなく海外に対する
信頼失墜を招く、極めて由々しき事案なのですね。
総務省は、『点検結果を受け、同省の統計委員会に専門部会を設置し、基幹統計に加えて
一般統計についても再発防止策などを目指して検証を行うように要請する。』と言ってい
ます。 もっと、根幹の問題なんですよね!
繰り言が続きますが、文書の改ざんや事業計画の基本となるデータが “確かなものでない”
などが会社で起これば、早晩、会社は倒産の危機に陥るでしょう。こんなことが、国レベル
で平然となされていたなんて・・。
昨日(1/27)の日曜日朝のテレビ、9党が論じていた「日曜討論」を聞いていて、そんな
ことはないと思いつつ、どこか “池の周りを歩きながら、池の水は冷たいとか、底は深い
とか、魚がいるとか、いないとか・・” 誰も池の中に入らないまま、そのことを論じて
いるような気がしました。
厚労省のプレスリリース(2019.1.11)↓
https://www.mhlw.go.jp/content/10700000/000467631.pdf
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