動物は、温度の変化や昼夜などの環境の変化に対応して、自ら環境のよい所に
移動して対応していますが、植物は自ら動き回ることが出来ないため、常に同じ
ところにいてこれらの環境に対応しなくてはなりません。そのため、「環境応答」
という仕組みを持っているのですね。
先週7月19日の サイバーサロン(18)に取り上げました「植物とは何か?」
(拙ブログ7/20に記事アップ)にこのことに触れていますが、この環境応答につい
て、もう少し違った面も含めて再度取り上げてみました。
ま、どうでも良いことではありますが、考えてみれば、あらゆる動物たちは
皆、この植物を食してエネルギーや栄養を摂っているのですね。動物の中には、
肉食動物もいますが、これら食べられる動物ももとは植物を食べて生きているわけ
ですから、すべての動物は「消費系」で、植物は「生産系」なんですね。
ついでに、生物界全体には、動物界、植物界のほかに、原生生物界(コンブ類、
アメーバ、ゾウリムシなど)、原核生物界(細胞核を持たない単細胞。細菌類
つまり乳酸菌、大腸菌など)、菌類(キノコ類、カビなど)5つの界に分けられて
いますが、ここで注目しているのは動物と植物、そしてこの植物について、どの
ようにして生命を維持しているのか‥つまり環境応答の仕組みを司っているホル
モンについて、その概要を明らかにしようとしているのです。(一部ですが・・)
以下に、種子、発芽、成長、屈性、果実の成長、落葉についてまとめてみました。
やや、専門的なので、面倒だ‥と思うところもありますが、動かない植物がこの
ようにして、成長している‥と思えば、少し我慢して勉強してみました。
種子。いわゆるタネですが、これが種である、あり続ける条件があります。
つまり、乾燥していたり温度が低い場合には、アブシシン酸という植物ホルモン
によって、胚の中にLEA遺伝子というたんぱく質が存在し、いわゆる「休眠」状態
にあるのがタネですね。
発芽。このタネに、水、酸素、温度の条件が整ってくると発芽します。胚から
ジベレリンホルモンが分泌され、これが湖粉層からアミラーゼを分泌させて、胚乳
(タネの中身)のでんぷんを糖に分解して胚に吸収されて、胚が成長する。と同時
に、糖が吸収されることによって、内部の浸透圧が高くなり周りから水分を吸収
してタネが破れる‥つまり発芽するというメカニズムなんですね。ジベレリンは、
「休眠打破」のホルモンなんですね。
発芽のメカニズム
(Amebaブログより)
芽の成長。芽には、頂芽と側芽があります。頂芽は先端の芽で、側芽はいわゆる
わき芽です。一般には頂芽の成長が優先される「頂芽優先」で、先端に植物ホル
モンオーキシンが合成され、基部(下の方)に向かってオーキシン濃度が薄くなる
ような逆三角錐の形になっているのです。 一方、側芽にはサイトカイニンという
細胞分裂を促進するホルモンがありますが、オーキシン濃度によって、サイトカイ
ニンは抑制されています。
植物は一般に上に伸びて、下の葉が大きく全体を三角形に形作りますが、上部は
オーキシン濃度が高く、サイトカイニンの効果は抑制され、下部は抑制が次第に
弱まって行くのですね。これによって、太陽(の光)が下部まで届きやすくなって
いるのですね。
成長。オーキシンホルモンによって、成長促進が行われるのですが、そのメカ
ニズムは少し細部になりますが、次のようなプロセスによって行われているのです。
オーキシンによってプロトンポンプが活性化せれ、水素イオンを細胞に充満させ
酸性化すると、エクスパンシンという酵素によりセルロースの結びつきを分解し、
吸水によってセルロースの間隔が膨張して体積が大きくなる。さらに、オーキシン
と協調するホルモン、ジベレリンとブラシノステロイドにより、セルロース繊維を
一様に横方向に並べ、水分によって伸長成長するというのです。
屈性。光の屈性と重力屈性があります。光の屈性は、光が当たる方向に植物が
曲がって行く(成長する)ことで、これには頂芽で合成されるオーキシン(植物の
成長ホルモン)が作用しているのです。先端のオーキシンは、光の当たる逆方向に
移動し、光と反対側のオーキシン濃度が高くなり、その側の成長が促進されるから、
光の方向に向く形になるのです。(正の光屈性) このことも、光合成をよりよく
行える工夫なんですね。
重力屈性というのは、植物を仮に地面に横に倒した状態で考えてみると、植物に
充満している成長ホルモンオーキシンは、倒れた植物の下部に溜まるようになり、
オーキシン濃度は茎の上部は薄く下部では濃くなっています。一方、先端と根では、
オーキシンの働きは真逆の特性なので、先端では、下部分が成長し、先端が上に
向き(負の重力屈性)、根は正の重力屈性となるのです、先端は、あくまで上部に
伸び、根は下部(土中)に伸びようとするのです。
オーキシン濃度と成長 実験的に・・
(Try ITより)) (リケラボより)
果実の成長。メシベが受粉すると、植物ホルモンジベレリンにより子房が成長
(果実)し、更にエチレンによって、熟成され食べられる果実となるのです。
よく知られる「種なしブドウ」は、このジベレリンを、ブドウの房のまだ若い頃
に2回浸けることで栽培するのです。1回目のジベレリン処理によりタネが出来ない
受精障害を起こし、2回目の処理で受精しない(タネが出来ない)まま、子房を果実
へと変化させているのです。
落葉。夏緑樹林(ブナ)や雨緑樹林(チーク)などに見られる、落葉のメカニ
ズムには、例えば、ブナは、冬に対応して落葉しますが、アブシシン酸ホルモン
が作用しているのです。
アブシシン酸は、寒冷刺激によって分泌され、エチレンを合成します。エチレン
は離層を形成する植物ホルモンで、葉の付け根のところに離層を形成し、葉の中に
アントシアニンが溜まり紅葉します。そのうちに葉だけが分離して自重によって
落下するのです。
この他にも、気孔に関するホルモンなどいろいろありますが、一部上述しました
ように、植物に備わった種々のホルモンの作用によって、外界の環境変化に対応
していることが理解できました。
先の拙ブログにも書きましたが、それぞれの植物ホルモンの働きを詳細に見ると、
植物の生長等に係る作用が実にうまくできているこの自然界におどろかされるの
です。地球誕生から、何十億年という時間をかけて、変化(進化)を繰り返して
きた細胞などの営みが、進化し、あるいは後退しながら現在の姿として存在して
いるのですね。したがってこれらの過程で生まれたものもあるでしょうが、環境に
適合しないものは淘汰され、変化あるいは多様化しながら進んで来たのですね。
そのように思えば、現在の形がすなわち永遠であるという保証はどこにもないと
いうことなんですね。
お疲れさまでした。
「小さな花」ピーナッツ・ハッコー [Petite Fleur] Peanuts Hucko