伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

新版 大学生のためのレポート・論文術

2010-01-12 21:01:24 | 実用書・ビジネス書
 大学生向けのレポートと卒業論文の書き方のマニュアル。
 この本では論文の書式や文献の引用表記などの形式面の決まりを重視している。卒業論文もテーマよりまずスケジュールを決める、章立てと各章の枚数を先に決めるといいという。段落は1ページあたり5つか6つがいいと繰り返されている。このように、形から入るのが、この本の特徴である。
 「文章をわかりやすくする原則はただ一つである。それは、/一文を短くする。/たったこれだけである」(ゴシック体原著、小笠原、2009、p. 197)というこの言い切りがすごい。
 「」内の最後に句点をつけたり、算用数字やアルファベットを全角文字にするのは「間違い」だという(同上、p.24)。マニュアル世代に迷いを与えないためには言い切る必要があるのだろうが、やり過ぎの感もある。
 「よい論文かどうかは、題名と最初の三~五行を読めばわかる」(ゴシック体原著、同上、p. 171)は、裁判用の書類にも当てはまりそう。心しておきます。現実にはそういう書き方は難しいのですが。


小笠原喜康 講談社現代新書 2009年11月20日発行 (初版は2002年)
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ボーダー&レス

2010-01-12 00:48:50 | 小説
 飛び抜けて楽な部署ということで労務管理を担当する何ごとにも熱中できないいい加減社員の江口理倫が、同期の韓国籍のスマートな在日青年趙成佑との交遊を通じて、自分と成佑、日本人と在日韓国人、などの溝・一線に直面する様子を描いた小説。
 主人公は、女性との関係も惰性と責任回避だけで過ごしていき、大学時代の恋人とは、自分だけ北海道から東京に出て連絡もせず会うことも避けて当然の結果としてメールで別れを切り出されながらそうしたら不満に思い、フットサル仲間の独身女性には何の感情もないといって泊まりながら結局やりたくなって肉体関係を結び、気持ちよかったからとセックスだけの関係を続けたけど、相手が「しまった。情がわいた」とつぶやくのを聞くや逃げ始め、相手に「セックスだけの関係でいい」とまで言われても会うことすら避け、やはり当然の結果として「やり逃げかよ」とメールで言われ「普通に生きてるだけなのに、なんだかいっつも悪者な気が。」(103ページ)とか言ってます。どこが「普通に生きてるだけ」なんだか、普通、そこまで冷たく無責任にはなれんでしょ。
 そういう何ごとにもいい加減な半端な無責任男江口が、なぜか成佑との関係では、避け続けてきた在日韓国人をめぐる問題を突きつけられると、無知無責任なりにも向き合おうとして行く、そういうわずかながらの成長を見せるところと、在日韓国人の心情と友情を描いたところに読みどころがあるというところでしょうね。


藤代泉 河出書房新社 2009年11月11日発行
「文藝」2009年冬号 文芸賞受賞 芥川賞候補作(芥川賞の方は「候補」で終わりましたね)
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