上海で成功したエステチェーン「Ladies SPA 紅」の経営者早見紅子51歳が、容姿端麗な元新聞記者・現在は翻訳業の石井京39歳に思いつめて貢ぎ、恋の駆け引きを続ける恋愛小説というか官能小説。
通勤電車の中で読み続けるのがはばかられるような性的描写が繰り返されています。日本経済新聞の連載小説となると、こうなるものなのでしょうか。昔はこういうの夕刊紙でないと掲載できなかったんじゃないかと思いますが。
50代の功成り名を遂げた女性経営者が、かつては腕利きの新聞記者で過去を引きずっているという設定ではあるものの現在は自活能力に乏しく容姿端麗を鼻に掛けて女などいくらでも言うなりになると豪語する高ビーなヒモ男に振り回され自尊心を傷つけられながらも貢ぎ未練がましく追いかけ続ける姿は、かなり見苦しい。私が男だからかもしれませんが、この主人公が惚れ狂う相手の石井京というキャラにほとんど人間としての深みや魅力が感じられないため、ただ容姿端麗な年下男というだけでそんなに価値があるのか、逆に50代女はそこまで卑下し自分を貶めなければならないのかと感じてしまい、共感を得にくいだけにますます見苦しく感じます。
恋に落ちた人間はどんなに社会的地位があっても見苦しい愚かなものというテーマは、ありかなとは思います。しかし、このお話が、中高年女性が読む媒体に掲載されていたのなら、反省と共感を込めてそういうテーマとして読まれたのかもしれませんが、日本経済新聞連載となるとそうは感じにくい。女性経営者に反発と妬みを感じる読者層の、成功している女性経営者も女としては愚かな面を持っていると溜飲を下げたいというニーズに媚びているのではと勘ぐってしまいました。
日本経済新聞らしく上海経済の動向に言及する場面がときおり登場しますが、それ以外にはチベット問題と農村の貧困問題をほんの上っ面だけなでている程度で、後はひたすら恋愛の濡れ場と嫉妬と見苦しく未練がましい駆け引きが繰り返されています。4巻あたりは私にはかなり惰性でやってる感じがしました。
成功した経営者が主人公ですので、特に前半はブランドこだわり表現が頻出しています。私には縁のない世界で、出てくるブランドがどの程度の高級品なのかもわかりませんが、1つだけマネができそうな朝に飲む紅茶のブレンドのこだわりが「トワイニング3スプーン+マリアージュのローズ1スプーン+日東紅茶のミルクティー2スプーン+アッサムティー2スプーン」(1巻103ページ)って。「トワイニング」って言ってもプリンス・オブ・ウェールズなのかクィーン・マリーなのかダージリンなのか(はたまた「オレンジ・ペコ」とか「イングリッシュ・ブレークファーストティ」、それともまさかアール・グレイ?)でだいぶ違ってくると思うんですが、こだわりを見せながらそこが落とされています。こういう書き方されると他の描写も私が知らない世界だからわからないだけで実はいい加減なのかもと思ってしまいます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kaeru_shock2.gif)
高樹のぶ子 日本経済新聞出版社
Ⅰ 2009年3月6日発行
Ⅱ 2009年6月1日発行
Ⅲ 2009年9月1日発行
Ⅳ 2009年11月2日発行
日本経済新聞2008年9月30日~2009年10月31日連載
通勤電車の中で読み続けるのがはばかられるような性的描写が繰り返されています。日本経済新聞の連載小説となると、こうなるものなのでしょうか。昔はこういうの夕刊紙でないと掲載できなかったんじゃないかと思いますが。
50代の功成り名を遂げた女性経営者が、かつては腕利きの新聞記者で過去を引きずっているという設定ではあるものの現在は自活能力に乏しく容姿端麗を鼻に掛けて女などいくらでも言うなりになると豪語する高ビーなヒモ男に振り回され自尊心を傷つけられながらも貢ぎ未練がましく追いかけ続ける姿は、かなり見苦しい。私が男だからかもしれませんが、この主人公が惚れ狂う相手の石井京というキャラにほとんど人間としての深みや魅力が感じられないため、ただ容姿端麗な年下男というだけでそんなに価値があるのか、逆に50代女はそこまで卑下し自分を貶めなければならないのかと感じてしまい、共感を得にくいだけにますます見苦しく感じます。
恋に落ちた人間はどんなに社会的地位があっても見苦しい愚かなものというテーマは、ありかなとは思います。しかし、このお話が、中高年女性が読む媒体に掲載されていたのなら、反省と共感を込めてそういうテーマとして読まれたのかもしれませんが、日本経済新聞連載となるとそうは感じにくい。女性経営者に反発と妬みを感じる読者層の、成功している女性経営者も女としては愚かな面を持っていると溜飲を下げたいというニーズに媚びているのではと勘ぐってしまいました。
日本経済新聞らしく上海経済の動向に言及する場面がときおり登場しますが、それ以外にはチベット問題と農村の貧困問題をほんの上っ面だけなでている程度で、後はひたすら恋愛の濡れ場と嫉妬と見苦しく未練がましい駆け引きが繰り返されています。4巻あたりは私にはかなり惰性でやってる感じがしました。
成功した経営者が主人公ですので、特に前半はブランドこだわり表現が頻出しています。私には縁のない世界で、出てくるブランドがどの程度の高級品なのかもわかりませんが、1つだけマネができそうな朝に飲む紅茶のブレンドのこだわりが「トワイニング3スプーン+マリアージュのローズ1スプーン+日東紅茶のミルクティー2スプーン+アッサムティー2スプーン」(1巻103ページ)って。「トワイニング」って言ってもプリンス・オブ・ウェールズなのかクィーン・マリーなのかダージリンなのか(はたまた「オレンジ・ペコ」とか「イングリッシュ・ブレークファーストティ」、それともまさかアール・グレイ?)でだいぶ違ってくると思うんですが、こだわりを見せながらそこが落とされています。こういう書き方されると他の描写も私が知らない世界だからわからないだけで実はいい加減なのかもと思ってしまいます。
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高樹のぶ子 日本経済新聞出版社
Ⅰ 2009年3月6日発行
Ⅱ 2009年6月1日発行
Ⅲ 2009年9月1日発行
Ⅳ 2009年11月2日発行
日本経済新聞2008年9月30日~2009年10月31日連載