伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

追憶の雨の日々

2010-01-25 21:40:15 | 小説
 29歳司法書士の川村祐司が、上司から紹介されたコールガールクラブを利用した際に派遣されてきた中学の同窓生平野佳織と再会し、それを機に佳織は祐司のマンションに転がり込み、中学生の頃の延長のように同棲生活が始まるが・・・という設定の青春小説。
 仕事に停滞感・倦怠感を覚える祐司と、その中身は語られないものの当然に辛い過去を背負ってきたはずの佳織が、楽しかった中学生時代の続きのようにままごとのような同棲生活を続けるその喜び微笑ましい日々の描写が続きます。作者は私より6つ年下で40代半ばにさしかかったところ。中年になると幼い頃や青春時代をともに過ごした人とまったりと過ごす時間に安らぎを感じ、またそれに憧れを感じます。そういうニーズに乗っかった作品かなと思いますが、中年おじさんとしてはそれでも注文通りにスムーズに入り込んでしまいます。登場人物の設定には29歳でノスタルジーに浸らせるかなという思いもありますが。
 小説としては、最初から結末をほのめかし続け、その結果として結末がどうなるかではなく、佳織の過去がいつ明らかになりいつ2人の甘い同棲に破局が訪れるかに関心が向いてしまいます。それを終わり間際まで先送りし続けるのは、ノスタルジーに浸る中年読者層へのサービスかなとまで感じてしまいましたが、結局佳織の過去は明らかにされないままに結末を迎えます。う~ん、これだけ引っ張った挙げ句にこうなると、結局巧い設定を考えつかなかったのかなと感じてしまいます。
 ただ、最初から破滅の匂いを漂わせ、予定された破局を迎えるのは、幸せだった青春時代に帰り着けるなんて思うのはしょせん夢だよ、幻想だよというメッセージなのでしょう。小説を読み終えたら、待っているのは、変わらぬ現実。でも、祐司にとっては、実は都合のいい結末だったんじゃないの、だからこそ今ノスタルジーとともに振り返ってられるんじゃ・・・とも読めますけどね。


浅倉卓弥 宝島社 2009年8月21日発行
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外務省ハレンチ物語

2010-01-25 20:47:41 | 小説
 元外務省主任分析官が小説形式で、外遊でハメを外した国会議員の事件もみ消しや外務省職員の下半身スキャンダルや「報償費」を使っての私的な飲み食いや不正蓄財、重要人物の弱みを握るためのソ連・ロシアの情報部や外務省の活動などを解説した本。
 ノンフィクションではないと断ってはあるものの、いかにも見え見えの仮名の上に、念を押すように誰がモデルかくどいくらいほのめかしています。さすが「アサ芸」連載といったところでしょうか。
 「アサ芸」連載のためでしょうけど、内容的には、下半身ネタが中心で、外交官が研修生や家事補充員の女性を職権濫用したり飲酒酩酊させてお手つきにする描写はかなりえぐい。そのあたりと不正蓄財の手口が、力を入れて書いてある感じで興味深いですが、私はどちらかというと外務省も含めた情報機関が政治家や新聞記者の弱みを握り意のままに動かすための陰謀の方に関心を持ちました。
 書き下ろしの3本目がエピソードがダブってちょっとネタ詰まりかなとも感じますが、読み物としては大変楽しく読めました。仕事がら、訴訟対策は大丈夫かいと思ってしまいますが。


佐藤優 徳間書店 2009年3月31日発行
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