冤罪事件の当事者(被害者)による対談本。
事件の当事者が当時自分が体験した事実や当時の心境を語る部分、とりわけ警察の取調に関する点と家族に辛い思いをさせたことを振り返る部分は切実なものがあり、貴重な語りです。
しかし、対談部分は160ページ足らずの上、編集者による補足がその4割程度を占めています。もちろん、補足があった方が読みやすい(なかったら業界関係者以外はわからない)のですが、正味の対談がすごく少ない。その上、自らも事件の被害者であり逮捕されることなく真犯人が判明して警察の謝罪も受け公安委員なども務める人と、一旦は自白し無期懲役の判決を受けて17年間も身柄を拘束され再審中の人の体験は、重ならない部分も多く、その短い対談の多くの部分が事件の当事者としての発言よりも他の冤罪事件の紹介や制度や体制の問題点についての運動家・評論家的な発言に費やされています。そういう解説本なら、本当の運動家に書かせるか弁護士に書かせた方が内容的には深まると思います。内容を掘り下げるよりは、それを冤罪事件の当事者に言わせることで、一種の「権威付け」をして読者の読む気を起こさせようというのが企画の狙いなんでしょうけど、有名な冤罪事件の当事者を組み合わせれば本になるという企画の安易さを感じてしまいます。事件の当事者としての体験を読ませるのならば、きちんと準備したインタビュアーかその事件の弁護人にインタビューさせた方が、踏み込んだものが出てくるでしょう。せっかく事件の当事者に話させるのだからその部分を充実させて欲しかったと私は思います。
菅家利和、河野義行 TOブックス 2009年9月30日発行
事件の当事者が当時自分が体験した事実や当時の心境を語る部分、とりわけ警察の取調に関する点と家族に辛い思いをさせたことを振り返る部分は切実なものがあり、貴重な語りです。
しかし、対談部分は160ページ足らずの上、編集者による補足がその4割程度を占めています。もちろん、補足があった方が読みやすい(なかったら業界関係者以外はわからない)のですが、正味の対談がすごく少ない。その上、自らも事件の被害者であり逮捕されることなく真犯人が判明して警察の謝罪も受け公安委員なども務める人と、一旦は自白し無期懲役の判決を受けて17年間も身柄を拘束され再審中の人の体験は、重ならない部分も多く、その短い対談の多くの部分が事件の当事者としての発言よりも他の冤罪事件の紹介や制度や体制の問題点についての運動家・評論家的な発言に費やされています。そういう解説本なら、本当の運動家に書かせるか弁護士に書かせた方が内容的には深まると思います。内容を掘り下げるよりは、それを冤罪事件の当事者に言わせることで、一種の「権威付け」をして読者の読む気を起こさせようというのが企画の狙いなんでしょうけど、有名な冤罪事件の当事者を組み合わせれば本になるという企画の安易さを感じてしまいます。事件の当事者としての体験を読ませるのならば、きちんと準備したインタビュアーかその事件の弁護人にインタビューさせた方が、踏み込んだものが出てくるでしょう。せっかく事件の当事者に話させるのだからその部分を充実させて欲しかったと私は思います。
菅家利和、河野義行 TOブックス 2009年9月30日発行