相手にいくら一生懸命に説明しても理解してもらえないということについて、なぜ理解してもらえないのかとストレスを感じるのではなく、他人同士では話がかみ合わないのが当たり前というスタンスでものごとを見て、一歩引いた立場から冷静にできることを考えようと提案する本。
コミュニケーションギャップの原因を、①人間は悲しいまでに自分中心にしか考えられないこと、②コミュニケーションが(実際にはほとんど伝わっていないのに)「伝わっている」ことを前提に成り立っていること、③相手は自分と同じ前提や認識でいるつもりが、実はまったく別の部分を見ていて、お互いがそれに気づいていないことの3点にあるとしています(5ページ)。
最初の「人間は例外なく自分中心」では、みんな自分が一番大変だと思っている、どんなに客観的に判断しているつもりでも自己評価が高くなってしまうから他人の長所は10倍に自分の長所は10分の1と考えることでちょうどいいと説明しています。なるほどと思います。
「伝わっている」幻想については、まず自分の言っていることに相手が十分関心を持っているというのが誤解であり、自分が「伝えた」と思うことと相手に「伝わった」ことはまったく別物、「自分はちゃんと理解した」というのも幻想で相手が伝えたかったことはその何倍もあるかも知れないと思えなどとされています。
3点目は「象の鼻と尻尾」を別々に見ていると説明され、この本ではその大部分をこの議論に費やしています。もともとは「象の鼻と尻尾」というタイトルで出版した本を加筆修正して文庫化したものだそうですから、前の2点は付け足しなのかも知れません。立場や視点や価値観や能力などが違う人が考えイメージしていることのギャップを確認しないまま(違うことを考えていると想像もしないため確認しないしできない)話を進めることで誤解すれ違いが生じていくことをあれこれの例を挙げて説明しています。
「人間はとかく、成功したことの原因は、『自分が努力したからだ』とか『自分のやり方が正しかったからだ』というふうに考えてしまう傾向にあります。逆に失敗したことに対しては、『相手が悪かったからだ』とか『○○さんが入らなければうまくいっていたのに』とか『ベストを尽くしたのに運が悪かっただけだ』などと思ってしまいがちです。反面、面白いことに、『他人の』成功を見るときにはこれを『運』だと思い、失敗を見るときには『運以外』つまり本人が悪いのだと見てしまう傾向もあるのではないでしょうか」(92~93ページ)とか、「本当に忙しい人は『忙しい』とは言わないし、本当に『大変な』仕事をしている人は『大変だ』とは言わないものです」(100ページ)とか、至言だと思います。

細谷功 PHP文庫 2013年11月20日発行
コミュニケーションギャップの原因を、①人間は悲しいまでに自分中心にしか考えられないこと、②コミュニケーションが(実際にはほとんど伝わっていないのに)「伝わっている」ことを前提に成り立っていること、③相手は自分と同じ前提や認識でいるつもりが、実はまったく別の部分を見ていて、お互いがそれに気づいていないことの3点にあるとしています(5ページ)。
最初の「人間は例外なく自分中心」では、みんな自分が一番大変だと思っている、どんなに客観的に判断しているつもりでも自己評価が高くなってしまうから他人の長所は10倍に自分の長所は10分の1と考えることでちょうどいいと説明しています。なるほどと思います。
「伝わっている」幻想については、まず自分の言っていることに相手が十分関心を持っているというのが誤解であり、自分が「伝えた」と思うことと相手に「伝わった」ことはまったく別物、「自分はちゃんと理解した」というのも幻想で相手が伝えたかったことはその何倍もあるかも知れないと思えなどとされています。
3点目は「象の鼻と尻尾」を別々に見ていると説明され、この本ではその大部分をこの議論に費やしています。もともとは「象の鼻と尻尾」というタイトルで出版した本を加筆修正して文庫化したものだそうですから、前の2点は付け足しなのかも知れません。立場や視点や価値観や能力などが違う人が考えイメージしていることのギャップを確認しないまま(違うことを考えていると想像もしないため確認しないしできない)話を進めることで誤解すれ違いが生じていくことをあれこれの例を挙げて説明しています。
「人間はとかく、成功したことの原因は、『自分が努力したからだ』とか『自分のやり方が正しかったからだ』というふうに考えてしまう傾向にあります。逆に失敗したことに対しては、『相手が悪かったからだ』とか『○○さんが入らなければうまくいっていたのに』とか『ベストを尽くしたのに運が悪かっただけだ』などと思ってしまいがちです。反面、面白いことに、『他人の』成功を見るときにはこれを『運』だと思い、失敗を見るときには『運以外』つまり本人が悪いのだと見てしまう傾向もあるのではないでしょうか」(92~93ページ)とか、「本当に忙しい人は『忙しい』とは言わないし、本当に『大変な』仕事をしている人は『大変だ』とは言わないものです」(100ページ)とか、至言だと思います。

細谷功 PHP文庫 2013年11月20日発行