伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

女の子って、ちょっとむずかしい?

2014-05-29 21:21:20 | 人文・社会科学系
 女の子が有能で強い大人の女性に育つために必要な環境と周囲の大人たちの接し方について論じる本。
 「5つの成長ステップ」として、誕生から2才までは親が愛情を持って接し赤ちゃんが安心できるようにし続ける、2才から5才までは親が近くで見守る安心な環境でさまざまな好奇心を満たす冒険をさせる、5才から10才までは友だちを作り社交スキルを身につける(親はその役割モデルを見せる)、10才から14才までは興味と情熱を持てる「本当にやりたいこと」を発見する、14才から18才までは大人になる準備をする(親は放任主義ではなくむしろ頑固に)とされ、「4つのリスク」として早くセクシーになることを煽るメディアと商業主義、いじめ、ダイエット産業、ポルノ化されたオンライン世界を挙げ、最後に娘に対する母親の接し方、父親の接し方を論じています。
 娘を持つ父親の一人として、自立心を持った強くて心優しい娘に育てたいという思い、そのために惜しみなく労力と愛情を注ぐべきということはわかります。しかし、その手の論の行き着くところは、多くの場合、母親が仕事をせずに家にいて娘と長時間過ごすということで、女性の経済的自立・女性労働への批判・抑圧です。この本では、父親のワーカホリックを諫め娘と一緒に過ごすことを勧めていますが、女の子を育てるとき「母親が中心にいる」と説き、父親は一緒に遊んでやれという位置づけで、傷ついた娘のためにブティックを経営していた母親が仕事を辞めて子どもと一緒にいることを選択したことを紹介し(「それは母親が決めたことだとしか言いようがない」と逃げていますが)、やはり母親の家庭責任を示唆しているように思えます。
 オーストラリアの児童心理学者であり、娘の父親としてこの本を書いた著者は、女の子を成長を追って周囲の大人、特に親の重要性と役割を説いていますが、そこでは親は愛情を注ぎ長時間一緒に過ごすことを一貫して求められています。自分の経験でも周囲に聞いても、多くの女の子は小学校高学年から高校生あたりのうち数年間父親を嫌い回避する時期があるものだと思いますが、この本ではそういうことにはまったく触れられていません。オーストラリアではそういう傾向はないのでしょうか。


原題:Raising Girls
スティーヴ・ビダルフ 訳:菅靖彦
草思社 2014年3月19日発行 (原書は2013年)
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