伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

家庭の科学

2014-05-14 23:47:45 | 自然科学・工学系
 ある不運な人物が、ある一日に朝目覚まし時計が鳴ったのに止めて寝過ごし、シャワーを浴びたらシャンプーですべって転倒、カミソリで頬を傷つけ、トースターでパンを焦がし、電子レンジに水の入ったカップを入れて加熱したら爆発…と次から次へとアクシデントに見舞われるという設定で、日常生活を支えている製品と自然、人体などの科学的な知識を説明する本。
 一般向けの解説書ですが、よくこれだけ広範囲のことを書けるなと感心します。ただ同時に、興味ある分野を掘り下げる本でもなく、体系的に書かれているわけでもないので、ややこじつけ的なアクシデントの流れを最後まで興味を持って読むというのもけっこうしんどいものがあります。
 私には、「最新のハードディスクは信じられないほどよく衝撃に耐えることができる。スイッチさえ切っておけば、これをボールに見立ててサッカーをしても、もとに戻せば問題なく使うことができる」(270ページ)とか、「虫垂は、以前はなんの役にも立たない痕跡器官だと考えられていたが、近年の研究により免疫細胞が豊富に分布していることがわかっている。虫垂には有用な細菌が少しだけ貯蔵されていて、病気により正常な腸内細菌叢が破壊されてしまったあとに腸内細菌が再び腸内全体に分布しなおすのを助けることもわかっている」(354ページ)とかが、興味深く思えました。
 さまざまな分野で、どんどん知識は更新され、昔の常識は通じないのねと思わせてくれる本です。


原題:THE UNDERCOVER SCIENTIST
ピーター・J・ベントリー 訳:三枝小夜子
新潮文庫 2014年2月1日発行 (単行本は2010年5月、原書は2008年)
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