伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

水を抱く

2014-05-31 22:21:02 | 小説
 医療機器の営業担当の29才独身伊藤俊也が、人生相談サイトで知り合った黒ずくめの謎の女性ナギの貪欲でアグレッシブな性的行動に惹かれ、自分とつきあいながらも平然と連日手当たり次第に男漁りをし、見知らぬ男に殴られてアザを作ったりヌード写真をネットにアップされたりしても何食わぬ顔で、自分は最低の女なんだからというナギに心をひき裂かれながらものめり込んでいく姿を描く恋愛官能小説。
 過去の事件を契機とした自責の念(というよりは周囲の非難による自己評価の低下:掲載された週刊誌の読者は、この週刊誌の傾向からして、こういうケースで水に落ちた犬を叩くように非難する側になると思うのですが)から自罰的にあるいは自暴自棄に生きるナギの苦しみ・悲しみと、厳しいノルマを課せられ営業マンの悲哀を味わう俊也の苦渋を読むべき作品なのだろうとは思うのですが、後半そこに関心を集中させられるナギの過去と登場したストーカーの正体が終盤に明かされてみると、そういう事件と経過でそうなるかなぁという点にあまり説得力を感じられず、やりきれない思いと気が抜けた感じが相半ばしました。


石田衣良 新潮社 2013年8月20日発行
「週刊新潮」2012年5月3・10日号~2013年1月3・10日号連載
コメント
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